• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

「旧ソ連」レポートは命がけ~『強権と不安の超大国・ロシア』
廣瀬陽子著(評:荻野進介)

光文社新書、780円(税別)

  • 荻野 進介

バックナンバー

2008年3月21日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

評者の読了時間2時間00分

強権と不安の超大国・ロシア 旧ソ連諸国から見た「光と影」

強権と不安の超大国・ロシア 旧ソ連諸国から見た「光と影」』廣瀬陽子著、光文社新書、780円(税別)

 ソ連崩壊と踵を接した新生ロシア連邦の誕生から17年。一時はGDPのマイナス成長に泣き、世界史の表舞台から姿を消すのではないかと思われていたこの国が、ここ数年で資源大国として復活、世界経済の台風の目となろうとは誰が予想しただろうか。

 ただ、プーチンは石油価格の高騰に助けられただけで、エリツィン時代と経済は何も変わっていない、という論もあり、そういう意味では最近の世界的な原油価格の高止まりは不可解である。背後で何か国際的な策謀が働いているのかもしれない。

 つい最近行われた大統領選挙の結果、42歳の若きメドヴェージェフがプーチンの後継者として次期大統領の座を射止めたのは、大きなニュースとして世界に伝えられた。

 メドヴェージェフとはこんな来歴の人物で、その背後にはこういう人脈があって……といった風に、この時期の通常のロシア本なら筆を進めるだろう。ところがこの本は違う。ロシアという国を外から見るのである。かつては同じソ連邦の一員だったが、現在は独立を果たした諸国のほうから、“親玉”の行状を見ていくのである。

 そうした地域には、いま3つの感情が渦巻いている。「親ソ感情」「親ロ感情」「嫌ロ感情」である。

 親ソ感情とは旧ソ連へのノスタルジーであり、現在の経済格差が激しい社会への恨み節から来ている。当時は働かなくても生活が保障され、一部の特権階級を除き身分は平等だったが、独立後は市場経済化が進み貧富の差が拡大、というよくある図式である。

 そんな旧ソ連地域のひとつで、著者が2000年から2001年まで暮らしていたアゼルバイジャンでは大学教授の月給がわずか25米ドル、小・中学校の教師は12米ドルだった(当時、ひと月の生活費は最低でも100米ドルは必要)。当然、公立図書館の職員はそれに輪をかけて薄給で、著者が閲覧希望を出すと賄賂を要求し、挙句の果てに「この本が必要なら買わないか」と提案してきたというのだ。

 賄賂が経済システムにしっかり組み込まれており、少なくない人々にとって、賄賂でせしめた現金がないと今日のパンにさえこと欠く有様なのである。

 親ロ感情は、当然のことながら、ロシアと政治経済や安全保障の分野で共同歩調を取る国で強い。一方の嫌ロ感情は、民族意識が強い地域や、民族紛争にロシアが要らざるくちばしを突っ込んでいる地域で高まっている。そういう国や地域に対して、さまざまな外交カードを取っ換え引っ換えして、何とか自分たちの利益を引き出そうとしているのが現在のロシアの姿なのだという。

 著者によれば、そのロシアは4枚のカードをもっている。

どれを使われてもイヤなカードばかり

 1枚目は「紛争カード」である。まず、一国内の分離・独立運動をロシアが支援する。それによって本国が困窮すると、「紛争は収めるから、任せなさい」と、軍事基地の設置や安全保障条約への加盟を突きつけるのだ。いわば、“人の弱みにつけ込む”作戦である。

 2枚目は「エネルギーカード」である。石油や天然ガスなどのエネルギーをロシアからの供給に頼っている国々に対して、「いうことを聞かないと止めるぞ」と脅かす。つまり“人の足元を見る”作戦である。

 3枚目は「政治カード」である。ロシアが率いるCIS(独立国家共同体)に加盟している限り、加盟国間の査証は不要なはずなのに、チェチェン人を支援しているかどで、ロシアはグルジアには査証制度を強制、グルジア人のロシアへの出稼ぎに打撃を与えている。一方、親ロシアの国には査証の免除どころか、ロシアのパスポートまで付与しているという。“えこひいき”作戦である。

 4枚目は「経済カード」である。二枚舌で査証制度を使い分ける先のグルジアへの例は、同国の経済に大きな打撃を与えている。“兵糧攻め”作戦である。

 著者はこう書く。

〈ロシアがこのような外交カードを握り続けている以上、旧ソ連国家はつねに親欧米路線と親ロ路線のジレンマで揺れ続けるだろう。生き抜くためには、両者の間で微妙なバランス外交を進めていくしか道はないのだ〉

 したたかだなあと、舌を巻かざるを得ない。同じように長大な国境線をもつ大国であるアメリカ(米国)も中国も、似たようなことをやっているのだろうが。四方を海に囲まれ、こうした国レベルの権謀術数が発達しなかった日本に生まれたわれわれは幸せなのか、不幸せなのか。

 でも、ここで納得してはいけない。事実は小説よりも奇なり、である。

コメント2

「NBO新書レビュー」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

本音と建前が違うことが問題の温床になっている。

川野 幸夫 ヤオコー会長