• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

「うつ」よりマシ、どころか~『問題は、躁なんです』
春日武彦著(評:澁川祐子)

光文社新書、700円(税別)

  • 澁川 祐子

バックナンバー

2008年3月24日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

評者の読了時間2時間45分

問題は、躁なんです 正常と異常のあいだ

問題は、躁なんです 正常と異常のあいだ』春日武彦著、光文社新書、700円(税別)

 この本を読みはじめて、少し前に見たワイドショーの一場面を思い出した。

 有名な噺家と元歌手というカップルの離婚会見の模様だ。金屏風の前で笑顔をふりまき、ギャグを飛ばす元妻。「離婚」という人生の重大な局面におよそ似つかわしくない、浮ついたテンション。そのはしゃぎっぷりに異様なものを感じたのは、きっと私だけではなかっただろう。見てはいけないものを見てしまったような後味の悪さが残った。

 読み終わって、なるほどと思った。不快を引き起こした正体、あれはそう(躁)だったんですね、と。

 『問題は、躁なんです』は、精神科医・春日武彦氏の最新刊である。『病んだ家族、散乱した室内』『不幸になりたがる人たち』など、現代人が抱える数々の精神病理に切り込んできた著者が、なぜいま「躁」をとりあげるのか。前書きには、

〈うつがあれば、躁もある。ただし躁が取り沙汰されることは少ない。躁病のみを取り上げた一般書もない。これには理由があって、躁はうつよりも頻度が低い。しかもことに軽躁状態は、見過ごされやすい。明るく元気があってよろしい、というわけである〉

 と、これまで躁について語られてこなかった現状を踏まえたうえで、「しかし本当にそうなのか?」と疑問を投げかける。著者からみれば、

〈常識では理解し難い奇妙な言動や、不可解な事件。そういったものが、躁という視点を取り入れることでやっと全体の構図が見えてくる場合がある〉

 というのだ。そこで、過去の事件やお騒がせ人物、小説、キレる老人などを題材に、社会と躁との接点を明らかにしようと試みる。

 大正時代、足かけ3年にわたって犯行を重ねた連続放火魔。「笑っていいとも」のテレホンショッキングで40分間延々と一人でしゃべり続けた有吉佐和子。「レインボーブリッジの下をくぐってみたかった」と語ったハイジャック犯。コンビニで立ち読みを注意されてチェーンソーを持ち出した老人……。突飛で無謀な行動の裏側には躁が大なり小なり絡んでいる、というのが著者の言い分だ。

 では、いったい躁とはなんなのか。

「徹夜ハイ」のご経験、ありませんか?

 著者いわく、躁の構成要素は〈全能感〉〈衝動性〉〈自滅思考〉の3つ。具体的に躁病の人は、

男性:尊大となる。やたらと威張り、声も態度も大きくなる。せっかちで豪胆になり、自分は度胸も才能も傑出していると思い込む/金遣いが荒くなる/常識や良識などわきまえない/ひたすら強気になり、喧嘩っ早くなる、等々。

女性:化粧がどぎつくなる/香水の匂いが強烈になり、服装はけばけばしくなる/口数が多くなり、あからさまに性的なことを言ったり、媚を売ったかと思うとたちまち怒り出したりと不安定きわまりない。ブランド物を買い漁る、等々。

 の傾向があるという。さらに著者は、躁病を〈心の脱臼〉と表現する。うつ病が誰でもかかり得る〈心の風邪〉ならば、躁病は〈「うつ」の底が抜けた状態〉であり、潜在的な欲望が噴き出し、関節が不自然なまでに曲がってしまったかのような印象を与えるというのだ。

 いってしまえば、見るからに「危なっかしい人」である。傍でみている分には常識外れでおもしろくても、現実には「近寄りたくないタイプ」だ。だが本書は、決して「危なっかしい人」の見本帳ではない。躁病など無縁だと思っている読者に対しても、「こうした人々のことを対岸の火事と片付けられるのか?」と問いかけてくる意地悪な本なのだ。

 たとえばあなたは、睡眠時間を削って仕事に没頭しているうちに妙に興奮した気分になったことはないだろうか。

コメント2

「NBO新書レビュー」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

環境の変化にきちんと対応して、本来提供すべき信頼されるサービスを持続できる環境を作り出さなければならない。

ヤマトホールディングス社長 山内 雅喜氏