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『普通の家族がいちばん怖い』のは「私」のせい?
~食卓崩壊が告げる現代家族のカタチ

2008年4月2日(水)

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普通の家族がいちばん怖い

普通の家族がいちばん怖い』岩村暢子著、新潮社、1500円(税抜き)

 姪のプレゼントを買うという友人と雑貨の店に行ったときのこと。同じ子供用の玩具を二つレジに持っていこうとするので「別々のものにしないの?」と訊ねると、「喧嘩するからね」という答えが返ってきた。姪は二人。妹はなんでも姉のマネをして欲しがるのだという。ふーん。うなずいたものの、取り替え、喧嘩したりしながら遊ぶのがきょうだいなんじゃないか。ささいな違和感、どうもそれは古い考えらしいと『普通の家族がいちばん怖い』で悟った。

 本書は、食卓から「家族」を考えようという試み。総計223世帯の母親へのアンケート調査とグループインタビュー(1999~2000年、2004より2005年)をもとにした報告書だ。同様の調査をまとめた本としては、3冊目にあたる。今回のテーマは、クリスマスと正月の過ごし方である。

 いまは、子どもが二人だと、クリスマスツリーも二つという家が増えているという。それぞれ「好きなように飾り付けさせたい」からで、子供が二人なら「お手伝い」を楽しんでもらうために、手作りのクリスマスケーキも二個作るという家がめずらしくない。一つを共同で作ればよさそうなものだが、それぞれのセンスを生かしたい。主婦たちが語る理由だそうだ。

〈家庭の中で場は共有しても、子供たち同士が関わり合う「一緒」も「協力」もこうして消え始めている。そして同じ家の中に、子供の数だけクリスマスケーキがあふれるようにもなってきている〉

 びっくりしたのは、サンタクロースはいる。中高生にもなる子にそう信じ込ませようと涙ぐましい努力をしている親の数が、調査の「5割」に上るという。もちろん、信じている子供がいるということではない。

 母親たちは、サンタがいると思い込んでいる子供には「夢」がある。いつまでも「夢」のある子供でいてほしい。子供の「夢」を壊したくない。一様に夢を口にする。

 報告書の母親(30後半から40歳前後)たちよりワタシはひとまわり上の世代にあたる。サンタが父親だとワタシが悟ったのは、小学校の低学年だったと思う。

 枕元にサンタの靴が置かれるときに、父と母の話し声がして目が覚めた。ドキドキもやもやして、しばらく眠れなかった。

 プレゼントを届けに遠くの星からやってくる神様みたいな存在だと思っていた。ほんとうのところ、サンタが何者だかよく知らなかった。

 「サンタは父ちゃんだったんだね」と翌朝、ボクが欲しかったのはこんな子供だましの靴じゃないと母を困らせていた。九九を覚える前に、夢の世界から滑り落ちたことになる。思い出すたびチクチクする。

サンタクロースは誰がために

 話を本に戻す。調査を見ると、「ファンタジーの世界からいきなり『あっ、現実は違うんだ』って知って子供〈14歳〉が変わってしまったら、私、どうしらいいか困るんです」〈40歳〉と語る母親が決して特別でない。

 子供に、サンタはいる。信じ込ませるために、隣人にまで協力をもとめるなど、語られる努力は涙ぐましい。そして、ちょっと寒い。熱意が過剰なのだ。

 母親たちは、サンタが存在しないことを承知している。大人なんだから。だけど、いつまでもわが子には存在を信じていてほしい。そこには自分の庇護下にいてほしい、おいておきたいとの願いが込められる。

 たかだかサンタのことではあるが、いまの家族を映し出すリアルな小景のひとつだろう。

 クリスマスは「気分を味わいたいから」と飾り付けに精をだす母親たちだが、お正月の過ごし方になると、「一応」と答え、御節は手間だし作り方も「知らない」「わからない」と市販品を買い揃える。食べるなら、実家か夫の家でという回答が多い。

 子供たちが手をつけないからと御節のない食卓や、元旦の朝から菓子パンやラーメンなど、それぞれ「好きなもの」を食べて過ごすバラバラな食卓風景にも、まあ、そうか。驚きはしなかった。

 お正月といえば、家族揃って御節という季節感が年々に薄れていく結果にちょっぴり感傷気分になってはみたものの、待てよ。ワタシが子供のころ(昭和40年代)すでにワタシひとり寝坊して雑煮を温めなおして食べていたし、嫌いな御節には手をつけなかった。わがまま坊主だったぶん父親から鉄拳を振るわれた。いまなら撲られた理由が理解できる。まだ明治生まれの祖父が元気だったころのことだ。

 変化といえば当時から。家族揃っての正月という風景もすこしずつ壊れつつあったといえるだろう。ここに登場する母親たちも、価値観が揺らいだ昭和40年代以降に生まれている。

 調査を機会に、御節に挑戦、とでも奮起したのか。似て非なるものができあがってしまったという報告の多いこと。テレビで、ビーチで水着姿の娘たちに簡単な料理をこしらえさせ、不正解ぶりを笑う、そんな番組の一場面が浮かぶほど、珍妙な実例続出だ。

 しかし、ここでの問題は正しく御節料理が作れるかどうかではない。母親の傍で御節づくりを手伝うという経験の有無にある。裏返せば、親世代は子供に積極的に伝承しようとはしてこなかったということでもある。なぜか。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師