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「考えるな、『心』で読め!」~『ケータイ小説がウケる理由』
吉田悟美一著(評:三浦天紗子)

マイコミ新書、780円(税別)

  • 三浦 天紗子

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2008年3月31日(月)

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ケータイ小説がウケる理由

ケータイ小説がウケる理由』吉田悟美一著、マイコミ新書、780円(税別)

 出版不況といわれる時代に、書籍化すれば100万部、200万部という破格のヒットを生んでいるケータイ小説。その代表格と言えるのが、『恋空』『赤い糸』だ。

 両者は、2007年の文芸書年間ベストセラーランキング(トーハン調べ)で、ワン・ツー・フィニッシュを飾り、出版関係者を驚かせた。その年の本屋大賞を取った佐藤多佳子の『一瞬の風になれ』すら抑えての出来事だったからである。

 「表現が稚拙」「空白が多い」「低俗」と、大人たちにはめっぽう評判が悪いが、ケータイ小説をもとにした本もマンガも映画も、出せば売れる。最近では、イギリスやアメリカなど海外のメディアでも取り上げられている。

 もはや、「ケータイ小説なんて興味ない、理解できない」とは言っていられない。というか、あなたも大いにこのブームが気になっていないだろうか。

 なぜ、若者(とりわけ女子中高生)はケータイ小説にハマるのか。彼女らが支持するケータイ小説の魅力は、どこにあるのか。多くの大人たちが感じているナゾに、一定の答えをくれるのが本書である。

 著者は、モバイル・インターネットの創世記から公式・一般サイトの運営などを始め、実際にモバイル・ビジネスに参入している人物で、自作のストーリーを配信していたこともあるという。また、自らもケータイ小説愛好家だと語る、いわばこの世界の当事者だ。

 ケータイ小説論議では、とかく「こんなつたない文章が小説と言えるのか」という問題に力点が置かれがちだが、著者はあっさり、〈ケータイ小説は「小説」ではない〉と言い放つ。本書では、具体的なデータに、著者自らの実感と経験則も交え、“ビジネスとしての〈ケータイ小説の現状と可能性〉”に焦点を当てて話は進む。

 まずは、著者がモバイル・サイトを立ち上げたときの強烈な印象について書き綴っている。同じ双方向コミュニケーションのツールであっても、PCインターネットでは、よそ行きな言葉使いや儀礼などビジネスライクな感覚がついて回ったのに、モバイルでは、〈いきなり相手の懐に飛び込んでいく、飛び込んでくる。発信者と受信者が、ものすごく近いところにいる感覚〉があったらしい。

「リアル」という言葉の意味するもの

 PCユーザーと比べてモバイル・ユーザーは距離が近く、本音や要望がダイレクトに伝わってくる。そのことに感動すら覚えたと、著者は振り返っている。

 そこから著者は、モバイル・インターネットの世界では、従来のマーケティング手法はむしろ通用しないこと、大掛かりなプロモーションがなくとも、「モバイル」と「中高生」をキーワードにすれば、短期間で、モバイル会員登録数などを急成長させる機動力が生まれることを見出す。

 それをひとことで言えば、この世代のケータイメールによる口コミである。中高生たちによる「面白いよ」「泣けるよ」のメールの輪が、ケータイ小説というジャンルにこれほど大きな成果をもたらしたと著者は語る。

 そもそもケータイ小説について、大人たちが誤解している部分はすいぶんあるなと、本書を読んで私は思った。

 たとえば、ケータイ小説ユーザーである女子高生や女子大生たちが「面白い、共感する」と口にする“リアル”感。本書で著者は、そうした読者に直接インタビューし、リアルさとはあくまで設定や言葉遣いの次元であることを掬い上げる。

 彼女たちは、ヒロインが自分と同世代であるとか、自分も普段使っているような身近な言葉で語っているなど、自分と同化できる要素に惹きつけられているだけ。

 〈思春期のころに、友だちや好きな相手の、ちょっとした言動や行動で理解に苦しんだり、気持ちを推し量れなくて悩んだりしていた〉ことが書かれた物語に、「そういうときは、そうなるよね」「そんなの、ひどい」と感情移入するものの、大人たちが騒ぐ過激な体験については、むしろクールに距離を置いていることがわかる。

 また、先に、〈ケータイ小説は「小説」ではない〉と述べたが、実際、ケータイ小説を読むことは読書体験ではなく、メール・コミュニケーションの延長なのだと考える方が理にかなう。

 著者によれば、若い世代には、ケータイメールの短い文章の中に、〈いろいろな意味やニュアンスや感情を含める、テクニックやスキルが育ってきている〉。そのため言葉は徹底的に削ぎ落とされ、記号化される。ゆえにケータイ小説は、〈ある意味、記号化された「テキスト」によって「心」を伝える、新しいコンテンツ〉だと言うのだ。

〈既存の文字文化に親しんでいる大人たちが、新しい文字文化の、高度なテクニックで書かれたケータイ小説を読み取れずに、単に「稚拙」と評価してしまってはいないでしょうか〉

 実際、私が本書を読んでいちばん隔世の感を覚えたのは、女子大生のこのセリフ。

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