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BSE事件が日本社会の「モード」を変えた

2008年4月10日(木)

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 運用面で「独特のグレーゾーン」を備えた法のシステムと、潜在的に誰もが有罪になっているような(例:高速道路のスピード違反)逸脱行為についてはスルーして報じないマスメディア。それらが日本社会という社会システムの特徴だ。

 ところが――、そうした社会システムの「感度」のチューニングが変えられた。それが食品偽装を巡る最近の傾向だったのではないか。

 具体的に見ていこう。

 たとえば賞味期限、消費期限について。食品の安全度を示す尺度として、以前は製造年月日を表示するように農水省、厚労省は指導していたのだという。

 しかし製造時からの経過日数がどの程度なら安全なのか、食べて良いのかが消費者には分かりづらい。そこで表示方法を「消費期限」「賞味期限」に変更した。

 「消費期限」は未開封の状態で、保存方法に記載されている方法に従って保存されて、品質が保持されている日のこと。主に弁当や惣菜など、品質劣化が速い食品に記載される。一方で「賞味期限」は缶詰やスナック菓子など品質が比較的長く保持される食品に記載するものだ。

 しかしこうして表示法が変わった結果、その内容には相当の恣意性が含まれてしまった。

取り締まられなかった違法

 たとえば消費期限、賞味期限を定める際に、微生物の量を量ったり、実際に食べて味を確認する試験のどれかを行うかは、業者自身が決めるのだそうだ。試験方法は法律的に定められていない。

 そして企業ごとの基準で決定された消費期限や賞味期限の日数に、いずれも多少の余裕を持たせるために安全係数をかけたものが、実際に表示される消費期限や賞味期限になる。この「安全係数」も業者の一存で決まるらしい。

 こうして全体を統一する確かな決まりがないために、賞味期限、消費期限の設定には企業によって大きな差が生じている。

 そこが一種の運命の分かれ道となった。

 厳しくしている業者は、いったん決めてしまうと基準を勝手に変更することができないので、時として自ら首を絞めがちだ。そこで「賞味期限」や「消費期限」を設定した後で社内規定を別に作って実質的に緩和する業者もあった。そして内規に従う範囲であれば、返品を再びラベルを張り替えてもう一度出荷したりもしていた。

 これは法律を厳密に適用すれば、もちろん違法行為だ。しかし今までは殆どが取り締まられなかった。それはスピード違反と同じく、法的には違法なのだが、摘発されないグレーゾーンに位置してきた。いや、生産業者を常に手厚く守ってきた農水行政のおかげで、抜き打ち摘発もなく、まったく問題にならずに来たという点ではスピード違反以上のユニークな対応だったといえよう。

 ちなみに食中毒が起きなかったわけではない。昭和30年代には年平均25人の死者も出ている(今は年10人を超えることは稀になっている。飯田泰之「餃子問題よりも重大なこと」『論座』2008年4月号より)。しかしそれで賞味期限や、消費期限のあり方が原因とされたことはなく、その制度が見直されようとはして来なかった。

 そして、こうした見逃しの問題点をマスメディアが報じることもなく、食品を巡る不安が社会を覆うこともなかった。

 ところが、それが変化した。きっかけになったのはBSE事件だった。

BSE事件をきっかけに

 1990年、英国獣医局長から農水省衛生課長に文書が届く。内容は英国におけるBSEの発症状況の報告と、その原因と思われている肉骨粉資料の利用を止めて欲しいという訴えるものだった。

 その後、農水省は英国に調査官を派遣し、生きた牛の英国からの輸入を禁じた(英国産牛肉については1951年に口蹄疫の流行があった時点で禁止され、それ以後、輸入はされていない)。

 そして肉骨粉に関しても加熱条件を徹底するよう輸入条件を強化した。

 しかし、この肉骨粉への扱いは他の先進国、たとえばアメリカ、ドイツ、フランスに比べて甘かった。それらの国はその時点で英国製の肉骨粉を完全な輸入禁止していたのだ。

 2000年にEUのBSE問題委員会が、世界の地域別のBSEリスクを評価、発表しようとする。日本政府も当初はこの評価活動に協力すべく、必要資料を送付していた。

 ところが作業が進行するにつれて日本が「カテゴリーIII 低レベル汚染国」になることが明らかになる。肉骨粉の輸入を続けていたことが判断材料になった。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長