「「ナショナル ジオグラフィック日本版」編集長の「地球からの報告」」

技術革新の奥の手「バイオミメティクス(生体模倣)」

トカゲ、ハエ、サメ、ヤモリ……自然はアイデアの宝庫

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2008年4月4日(金)

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 蚊の口吻の形に着想を得て、表面をギザギザに加工し、刺すときの痛みを軽減した採血針が開発され、話題になったことをご記憶だろうか?

 いま、バイオミメティクス(生体模倣)と呼ばれる研究分野が世界中の科学者から注目を集めている。地球上の生き物がもっている機能やデザインから着想を得て、工学や材料科学、医学などに生かそう、という学問だ。



電子顕微鏡でとらえたサメの肌。この鋭い歯のようなウロコに、スピードを生む秘密がある。微細な溝を水が勢いよく通り抜けるため、乱流が発生しない。またフジツボや藻が付着しにくい特製もあり、米海軍が船体のコーティングに応用することを検討しているという。
電子顕微鏡でとらえたサメの肌。この鋭い歯のようなウロコに、スピードを生む秘密がある。微細な溝を水が勢いよく通り抜けるため、乱流が発生しない。またフジツボや藻が付着しにくい特製もあり、米海軍が船体のコーティングに応用することを検討しているという。

 その成果はさまざまな分野で生かされつつある。例えば、オリンピックなどで競泳選手が着用している水着にサメの肌が応用されているというのは有名な話だ。無数の鋭い歯のようなウロコにスピードを生む秘密があるという。

 また、壁や天上にくっついて歩けるヤモリの足の構造にも関心が集まっている。試しに、トッケイヤモリの足指を調べると、表面には極細の毛がびっしり生えている。1本の指にザッと650万本もあり、分子間の力が作用して壁にくっついたり、すぐにはがれたりできる仕掛けだという。

 こうした“吸盤足”の研究をしているスタンフォード大学のチームは、ヤモリを模したロボットを開発した。足裏パッドは毛の向き次第で簡単にはがれる。

 現状ではスピードが遅いのが難点だが、将来は人命救助用などに応用したいと研究チームは期待する。



スタンフォード大学の研究チームが作ったヤモリ型ロボット。足裏パッドは毛の向き次第で簡単にはがれる。スピードが遅いのが難点だが、将来は人命救助用などに応用したいと研究チームは期待する。
スタンフォード大学の研究チームが作ったヤモリ型ロボット。足裏パッドは毛の向き次第で簡単にはがれる。スピードが遅いのが難点だが、将来は人命救助用などに応用したいと研究チームは期待する。

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藤田 宏之(ふじた・ひろゆき)

『ナショナル ジオグラフィック日本版』編集長。1987年に日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社。『日経ベンチャー』『日経ビジネス』の編集などを経て、2007年4月から現職。『ナショナル ジオグラフィック』は米国ワシントンD.C.に本部を置く1888年設立のナショナル ジオグラフィック協会が発行し、世界約180カ国で850万人が購読する月刊誌。自然・野生動物・社会・文化・探検・科学など、地球とそこに生きるすべての生き物の営みを、世界の一流写真家が撮りおろす美しく迫力に富んだオリジナル写真と、正確で臨場感あふれる記事で紹介している。このコラムは『ナショナル ジオグラフィック日本版』の最新号の特集から、その内容を要約して紹介する。

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