• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

「うずうず」させて、育てましょう~『宮大工の人育て』
菊池恭二著(評:朝山実)

祥伝社新書、760円(税別)

2008年4月8日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

評者の読了時間3時間00分

宮大工の人育て 木も人も「癖」があるから面白い

宮大工の人育て 木も人も「癖」があるから面白い』菊池恭二著、祥伝社新書、760円(税別)

 1995年の震災で半壊した実家は、ワタシが生まれたときで築50年は経っていたように思う。屋根を支える太く曲がった梁を、祖父は自慢にしていた。子供の頃は見てくれのわるい大木にしか見えていなかった。大人になっても愛着を抱くことはなかった。いまは妙に懐かしい、というか、しっかり見ておけばよかったという思いが募っている。

 部屋の真ん中に立つと、抜け落ちた天井から空を見上げることができた。それでも梁はびくともしていなかった。忘れていたこのときの景色が、本書の中の「木の癖、人の癖を読む」の章を読んでいて浮かんできた。

 育った場所によって、木には癖が生じる。斜面の木は、風を受け、幹は捩れてしまう。木は必死に元に戻ろうともするわけで、ひねくれた木ほど目がつまっていて、強度に優れている。だから梁や桁にするのに適していて、田舎作りの家では曲がった部分を梁に使っていたという。うちのジイサンの自慢もホラではなかった。

 本書は、宮大工とは、どんな仕事かを綴ったものだ。著者は岩手県遠野市に生まれ育ち、中学を卒業後、家大工の修行をし、21歳のときに故郷を出て、「法隆寺の鬼」の異名をもった宮大工の名人、故・西岡常一棟梁のもとで6年間、経験を積んでいる。

 職人仕事の基本は、教わるのではなく技を盗むことだ、とはよく言われることだが、なぜ師匠はなかなか弟子に仕事を教えようとはしないのか。常々の疑問に対する答えは、本書を読むとわかりよい。

〈私どものような職人の世界は、学校とは違いますから、手取り足取り教えることはありません。棟梁や先輩大工は手本になるだけで、そこからどれだけのものを学び取れるかは、弟子の心構え一つです〉

 一言でいうと、受け身ではダメ。知りたいと思う本人の貪欲さがないと、教え込もうとしても身につかないということ。

 呑み込みの早いのがいいわけというわけでもない。職人仕事というものは一回、手本を見せても、すぐにそのとおりにできるものでもない。

「教えない」のは、「うずうず」するのを待つため

 手本通りにできなくて当たり前。できないのは、どうしてなのか。考え、真似てみる。真似るために、盗み見る。じっと見ている。技が身につくまでには時間がかかる。

 現場でいちいち説明している時間は先輩や師匠にはないし、これが大工の仕事ですというふうに解説することは手間だし難しい。小さな技の集積によって成り立っているのが職人の世界。ノミやカンナの刃の研ぎひとつをとっても、コツを掴むまでに長い時間を要するからだ。

〈研いだカンナの切れ味を試してみたくなるのは当然で、「早くあんなふうに削ってみたいなあ」とうずうずします〉

 師匠が弟子に仕事を教えるのに重要なのは、タイミング。先輩がかっこよく立ち働く姿を目にし、雑用ばかりを任されてた弟子が、うずうずしだす。このとき、うずうずしている=やる気が高まっているのを見計らい、「お前、天井の板を削ってみろ」と師匠は声をかける。「うずうず」していないときに何を教えても、吸収しようとしないということでもある。

 職人を育てるのは「教えない」のが基本、というのは、ここから導き出されたもの。

 著者が西岡常一のところで働くにいたった経緯はこうだ。

 大工としてひとり立ちした後、社寺の仕事がしたいと岩手から奈良へ。薬師寺金堂の再建現場を目の当たりにして、いっそう思いを募らせ、「ここで働きたい」と西岡を訪ねている。

 このとき、「あんな大きなお堂の建立を手がける棟梁となれば、さぞかし凄い宮大工なんだろうな」とは思ったものの、著者に西岡に関する知識はなかった。訪ねて行ったものの、なかなか門をくぐる決心がつかず、家の前を何度も行ったり来たりしたという。

 もし、このとき著者が岩手からわざわざ出てきたのではなかったら、あるいは西岡のことをよく知っていたら、臆したまま踵を返していたのかもしれない。

 西岡のもとで仕事をすることが叶った著者が、いちばん勉強になったと語るのは、「お茶出し」である。

コメント2

「NBO新書レビュー」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

機械を売るんじゃなくて、電気が欲しい方に電気が起きる装置をソフトも含めて売るビジネスをしていこうと。

田中 孝雄 三井造船社長