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苦しむことに意味が欲しい~『悪魔という救い』
菊地章太著(評:島村麻里)

朝日新書、720円(税別)

  • 島村 麻里

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2008年4月10日(木)

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評者の読了時間2時間40分

悪魔という救い

悪魔という救い』菊地章太著、朝日新書、720円(税別)

 悪魔祓いについて評者が初めて知ったのは、1973年の映画「エクソシスト」。観たのは米中西部の映画館だった。

 途中、観客が相次いで退出したのをよく憶えている。座席で吐いたり、ショックで学校を休んだりといった話も。たしかに怖い映画だけれど、なんでそこまで? と、米国人の恐がり方に首を傾げたものだ。

 あれから35年。悪魔祓いは現在、世界各地で要望が殺到しているのだという。悪魔の存在を認めるローマ・カトリック教会は目下、ヴァチカンをあげてエクソシストを養成中だが、それでも需要に供給が追いつかぬ状態らしい。

 ヨーロッパで、中南米で。なぜ、この現代社会に生きる人々が悪魔に苦しみ、教会に救いを求めにくるのか?

 本書は、悪魔祓いにかんする、日本初の学術的入門書ということだ。

 若い頃フランスの神学校で学んだ比較宗教史家だが、特定の宗教に帰依してはいないという著者は、護教的な立場からではなく、「悪魔憑きという時代遅れとしか言いようのない現象の意味を、心の闇とそこからの解放という視点で」捉えようと試みる。

 「エミリー・ローズ」「エクソシスト」「尼僧ヨアンナ」など、悪魔祓いを扱った映画をテキストに、本書は進む。

 身体が弓なりに反り返る。ベッドが揺れる。突然異国、もしくは古代の言語で喋り出す。本人が知り得ぬはずの事実をいい当てる。あるいは皮膚に傷痕や文字が表れる……。

 「あれか」。上記の映画や原作に触れた人なら、いくつかの場面が思い出されるだろう。

「悪魔憑き」は医学で説明可能ではある

 カトリック教会で正式に教理として定められている「盛儀祓魔式」(悪魔祓いの正式名称)は、教会の許可を得た司祭だけが行える。悪魔に憑かれたと訴える人がいても、病気、とくに、精神的な病によるものであれば、お祓いの対象とはならない、とされる。

 もっとも現代の医学では、悪魔憑きとされる状態の大半が、説明可能なのだ。

 身体の硬直も揺れるベッドも、人間の心身が放つ猛烈なエネルギーによって説明可能だし、一見理解不能な発言なども、演技性人格障害や解離性同一障害、あるいは統合失調症による妄想であったりする。皮膚に表れるしるしは皮膚描記症、といった具合に、たいていの症状は、医学的に説明できるものなのである。

 米国精神医学会による精神疾患の手引き書も、その最新版に「解離性トランス障害」を追加している。いわば死霊や悪魔による「憑きもの障害」だ。

 自分のなかに複数の人格がいる解離性同一障害と、このような「憑依」との違いは、「外部の魂または存在が自分の身体に入ってきて乗り移ったと表現する事実」だという。

 なるほど、と、気になって、本棚の奥から昔読んだ『エクソシスト』(ウィリアム・ピーター・ブラッティ著、新潮社刊・1973)を引っ張りだしてみた。

 12歳の少女に取り憑いたとされる悪魔の存在を、精神病理学者でもあるカラス神父は物語の終盤近くまで信じておらず、少女の示す症状の大半が医学的に説明可能だという立場を最後の最後まで崩さない。

 それならば、有能な精神科医に治療してもらえばよい話ではないか? カラス神父はなぜ、悪魔祓いを教会に要請したのか。翻って現実のカトリック社会ではいま、なにゆえ、養成が追いつかぬほどの勢いでエクソシストが求められるのか?

コメント6件コメント/レビュー

「すべて医学的に説明できる」と言われても、治癒するなら医学をアテにできるだろうが、治らないのなら、当人にとってはあまり意味がない。科学で説明しきれないことはこの先も多分完全にはなくならないだろう。悪魔祓いだろうが何だろうが、実際にそれで治る人がいるなら、科学的に説明できなくても別にかまわない、と実際にその病で悩んでいる人は思うのではないか。そもそも、「治癒」のメカニズムがどのようにしておこるのか、科学で完全に解明することなどできない。「症状がよくなる人が比較的多いので、どうやらこの薬、治療法は効きそうです」としか言えないのが医学だ。難病や末期癌が、なぜかわからないが治癒してしまったという例は、数少ないとはいえ世界中にある。精神の病にしても、「解離性人格障害」という病名をつけてみても、それは医学的なひとつのレッテルでしかない。「悪魔がついています」という言葉とどれだけ差があるだろうか。(2008/04/10)

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「すべて医学的に説明できる」と言われても、治癒するなら医学をアテにできるだろうが、治らないのなら、当人にとってはあまり意味がない。科学で説明しきれないことはこの先も多分完全にはなくならないだろう。悪魔祓いだろうが何だろうが、実際にそれで治る人がいるなら、科学的に説明できなくても別にかまわない、と実際にその病で悩んでいる人は思うのではないか。そもそも、「治癒」のメカニズムがどのようにしておこるのか、科学で完全に解明することなどできない。「症状がよくなる人が比較的多いので、どうやらこの薬、治療法は効きそうです」としか言えないのが医学だ。難病や末期癌が、なぜかわからないが治癒してしまったという例は、数少ないとはいえ世界中にある。精神の病にしても、「解離性人格障害」という病名をつけてみても、それは医学的なひとつのレッテルでしかない。「悪魔がついています」という言葉とどれだけ差があるだろうか。(2008/04/10)

一神教というのは脅かしてお金をとる霊感商法と同じということですかね。“小盗は磔っせられ大盗は侯となる”というのと同じで“小詐欺師は入牢し大詐欺師は 世界宗教となる”ということでしょうか。そうすると多神教は、褒め上げてお金をとる詐欺師かな。(2008/04/10)

せいぜいが物事の半分に過ぎない”合理”で全てを解釈しようとする錯誤が、精神のアンバランスを招くこと、精神分析では良く言われることですが、欧米だけでなく日本も例外では無くなりつつ有る様ですね。猟奇犯はえてして”合理的”です。行き過ぎた合理主義の延長線上に悪魔崇拝があったりもします。現代に必要なのは、合理と非合理の偏りを修正し、人間と”自然”の関係を癒す、地に足の着いた(良質な)シャーマニズムの復権ではないかと思ったりします。(キリスト教的な悪魔排除は、むしろ”悪魔”を強化させるのでは?)(2008/04/10)

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