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「モンスター」を生んだのは?~『バカ親、バカ教師にもほどがある』
藤原和博・川端裕人著(評:朝山実)

PHP新書、720円(税別)

2008年4月14日(月)

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バカ親、バカ教師にもほどがある 子ども化する大人たち

バカ親、バカ教師にもほどがある 子ども化する大人たち』藤原和博・川端裕人著、PHP新書、720円(税別)

 これはタイトルでトクしているのか、客を逃がしているのか。

 近ごろ週刊誌あたりで話題となる「モンスターペアレント」あるいは「モンスターティーチャー」がわんさか取り上げられ、こきみよく撃退されていく。オビの戯画化されたイラストとセットとなり早合点しそうなネーミングだが、内容に寄り添ってはいない。

 モンスターたちが断罪されるのを見て、溜飲を下げようという期待をもって読むと、それこそハラを立てる人も出てくるかもしれない。

 本も商品である。刺激的なコピーで、お客の目をひこうとする。このコラムにしても、タイトルや見出しは編集者が考えたもので、センスのよさを感じることもあれば、なんじゃこれ!? と、掲載されたものを見て首を傾げることもある。ただ、書き手がつけたりするよりも、編集者が知恵を絞った方が、読者ウケは確実にいいようだ。

 それはさておき、本書は、民間から東京都内の公立中学の校長となり、地域と連携したユニークな学校運営で話題を提供してきた藤原和博氏に、小学生の子をもつ作家の川端裕人さんが聞き手となって、ふたりで「学校」の問題について話し合うものだ。

 子どもがケンカでケガをしたから慰謝料を払えと学校に請求したり、保護者会に参加するため会社を休んだのだからと休業補償を要求したりする。

 マスコミは、こうしたトラブルを耳にすると、ひとりを何倍、何十倍にも膨らまし、潜在的にそういう親がうじゃうじゃいるかのように伝えようとするきらいがある。メディアとしての商売っ気がそうさせるのだろうし、ワタシだってその一端に位置していたりするのだが。

 川端氏は、いかにもな、いまどきの困った親の例を挙げながら、「モンスターペアレント」と騒ぎ立てるムードに違和感があるといい、こう記している。

〈迷惑に違いないから問題にするのは当然にしても、一面的に非難するばかりでは対症療法にしかならない。また「最近の若い親は」みたいな、単純な若者叩き(子育て世代叩き?)言説に、簡単につながってしまうのも気持ち悪い〉

 本書が面白いのは、藤原氏は学校の側から、川端氏は親の側から、ひとつの問題をそれぞれ別の立場で考えて、対話していこうとするところにある。

 考えは一致することもあれば、合わないこともある。わからないことは、曖昧にせず、きちんと訊ねる。

 答える側も、相手を納得させるため、具体例を挙げ説明してみせる。話し合いによって、見えてくるのは、同じものを見ているにもかかわらず、見ている部分が微妙に違っているという事実だ。

 「第1章 バカ親の壁」で取り上げている一例は(この章タイトルの煽りもけっこうすごい)、息子は有望選手だったらしく、転校した先の中学に、サッカー部がないから部を新設しろ、「うちの子の才能をつぶすのか!」と保護者が押しかけてきて困っているという、ある学校長のお悩み相談だ。

 藤原氏は、自身の学校を例に、学校経営の観点から、なぜ部活の数を増やすことができないのかを説明している。

 部活には顧問となる教師が必要だが、絶対数として教員の数が足りてない。トラブルが発生しなければ顧問はいてもいなくてもいいようなものだが、事故やケガが起きたときに学校が負う責任を考えると、適切に判断のできる顧問がいないと困る。

 だから、仮に保護者が「顧問がいないんだったら、おれが教える」と申し出ても、ひとりの父親が起こりうる事態すべてに責任をとれるわけでもなく(教師にしても同様だろうが)、またとらせるわけにもいかない。といふうに、慎重にならざるをえない学校の立場を挙げている。

 開陳されてみると、万一の事態をあれこれ想定するあまり身動きができなくなってしまっているジレンマが窺えなくもないが、学校が何を危惧しているのか、互いの判断材料となる具体的な事情はわかってくる。

 川端氏は、理解を示しつつも、〈もしも自分の息子がサッカーが得意でやりたがっていたとしたら、ぼくの場合は、こっそり入れ知恵するかもしれない〉。藤原氏に、11人仲間をそろえ、サッカー部をつくらせてほしいと校長に直談判してきたら、どうかと問いかける。

 青春ものの映画やテレビドラマでよく見かける展開だし、そういう盛り上がりにはつい応援したくなるものだが、藤原氏は現場に立つだけあって、覚めている。

〈うーん、いまの子って、そうやって入れ知恵しても、まずやらないと思いますよ〉

 それでも、仮にそういう機運が起こったとしたらどう対処するのか。

コメント12件コメント/レビュー

最近は共働きも増えているし、母親ですら企業の論理や社会の仕組みを知っているはずなのに、何故「教育」や「学校」には、その仕組みや論理を当てはめることが出来ないのでしょうか?それが一番謎ですね。学校も企業であり、新しい部活は新規事業部の創設だと考えれば、簡単にはいかないこともすぐにわかるのではないのでしょうか。学校側にプレゼン能力がないことはよくわかります。説明責任を果たすだけで、回避できる事実ってのはかなりあるんじゃないかと思うんですが…会社と違って、クライアントが常に二種類いるってことが、混乱を産んでいることになっているのかもしれません。教師の教育が先ってことかなぁ。(2008/04/25)

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最近は共働きも増えているし、母親ですら企業の論理や社会の仕組みを知っているはずなのに、何故「教育」や「学校」には、その仕組みや論理を当てはめることが出来ないのでしょうか?それが一番謎ですね。学校も企業であり、新しい部活は新規事業部の創設だと考えれば、簡単にはいかないこともすぐにわかるのではないのでしょうか。学校側にプレゼン能力がないことはよくわかります。説明責任を果たすだけで、回避できる事実ってのはかなりあるんじゃないかと思うんですが…会社と違って、クライアントが常に二種類いるってことが、混乱を産んでいることになっているのかもしれません。教師の教育が先ってことかなぁ。(2008/04/25)

この本は読んでいませんが、このレビューを読んでいて一番木になったのは、本来主役であるはずの生徒(子供)についてほとんど書かれていないことでした。特にサッカー部のくだり、普通なら生徒がまず部活をほしいといい、それに対して学校や親が拒否したり応援したり、という段取り(?)になるのではないでしょうか。私(31歳)も高校時代はない部活を作るため、友達と知恵を絞った記憶があるのですが、今の子供は入れ知恵されても、本当にそれすらできないのでしょうか?する気がないのでしょうか?本の主旨とはズレるかもしれませんが、馬鹿教師と馬鹿親の間で主役の生徒はいったい何をしているのか、そちらの方が気になりましたし、そっちの方がよほど問題ではと思いました。(2008/04/24)

結びの”一度モンスターと呼んでしまえば、いろんなことはナシにしてしまえる。モンスターとは、とても便利な言葉だ。”はその通りですね。   氷河期世代とバブル世代、団塊世代などの世代間での”闘争?”も同じ根っこを持っているように感じました。   ところで、ETの話でウルトラマンの怪獣達を思い出しました。一寸の虫にも五分の魂、ではありませんが、1体の怪獣にユーモアや悲哀などが感じられましたよね。 徹底した対立ではなく、理解や融和を求める日本人の感性の賜物だったのでしょうか。(2008/04/15)

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三品 和広 神戸大学教授