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東京は“新名所”ほどつまらない~『新・都市論TOKYO』
隈研吾・清野由美著(評:近藤正高)

集英社新書、720円(税別)

  • 近藤 正高

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2008年4月16日(水)

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評者の読了時間3時間26分

新・都市論TOKYO

新・都市論TOKYO』隈研吾・清野由美著、集英社新書、720円(税別)

 去る3月20日、赤坂のTBS本社を中心とした再開発地区「akasaka Sacas」がオープンした。ほぼ一年前にオープンした六本木の東京ミッドタウンに続き、これで東京都心の再開発は一段落ついたという印象がある。

 それにしても、東京における再開発とはいったいなんだったのだろうか? 本書ではまさにそんな疑問に答えるべく、建築家の隈研吾とジャーナリストの清野由美が、汐留、丸の内、六本木ヒルズ、代官山、町田といった東京の街を実際に歩いてまわりながら、都市計画について考察する。

 本書の各章は、隈による基調レポートと現地での清野との対話によって構成されている。両者の対話は、しばしば独善的に持論を展開する隈に対して、清野がうまいぐあいに反論や疑問をぶつけたりしており、なかなかスリリングである。

 たとえば隈は、六本木ヒルズを、真の意味での「都市計画」が実現した稀有な例だと評価する。

 六本木ヒルズの開発では、森ビル社長の森稔による徹底した指導のもと、周辺の小区画の地主たちを長時間かけて説得して土地が買い集められ、超高層ビル(六本木ヒルズ森タワー)を中心に円環構造を描いた街がつくられた。そこでは、ほかの東京都心の再開発には見られない多角的な機能の複合が実現され、とりわけ住居の融合は特筆に値する、というのが隈の講評である。

 自身も森タワー内の文化施設「アカデミーヒルズ」のデザインを手がけ、森の手腕を目のあたりにした経験もあってか、ややひいき目の隈に対して、清野は安易に同調はせず、「そうはいっても、ヒルズは庶民には住めない家賃です」と、おそらく多くの人たちが思っているであろうことを代弁する。また、超高層居住についても、家賃との折り合いがつけば一度は経験したいといいつつ、だがやはり人間の生理に反していると思うと、率直に意見を述べている。

 そんなふうに二人が議論を重ねながら各所を歩いてまわるなかで、個人的にもっとも面白かったのは町田編である。町田は、本書でとりあげられているほかの街とは違い、東京の都心ではなく郊外に位置する街だ。その町田を隈と清野はなぜとりあげたのか?

 実は当初、隈は町田に対してあまり気乗りしない様子だった。それが、大型商業施設の建ちならぶ駅前の再開発地域から、チェーン店と老舗商店が同居するメインストリートの商店街を通り、さらには川沿いに建ち並ぶラブホテル、結婚式場、新築のマンション群といったディープな光景を、清野に案内されながら見て歩くうちにこの街に強く惹かれるようになる。

町田こそ都市、と隈研吾が気づく

 さらには、街中で風俗系と思われる女性がたむろする脇を、普通に住民が歩いている様子を目にして、「この混在性こそ都市性であり、それがある町田は正しく都市といっていい」という結論に達するのだが、その過程はドラマチックですらある。

 隈が町田という街に見出したのは、リアリティとヴァーチャリティとの接合だ。ちなみにヴァーチャルな都市とはITの産物ではなく、20世紀に登場した「郊外」という形式こそその先駆だという。隈は郊外を次のように定義している。

〈様々な歴史、時間が染み付いているはずの「土地」の上に、その場所とは無関係な「夢」を強引に構築する方法で作られた街が「郊外」と呼ばれたのである〉

 さらに、その「夢」を鉄道という「線」によって束ね、つなぐ技を発見したのが20世紀だったという。

〈地図の上に新たに描かれた鉄道という「線」に沿って一つの「夢物語」を構築し、そのストーリーに添って一つ一つ「夢」を配置していく。「夢」は単独ではみじめな妄想にすぎないが、束ねられ、つなげられることによって、妄想から現実らしきものへと進化する。私鉄沿線の「郊外」とは、そのようにして出現した現実らしき場所のことであった〉

 こうした私鉄による郊外開発は、20世紀における都市開発の重要な手法となった。私鉄の小田急線がJRの横浜線と交わる町田もその産物にほかならないわけだが、この街ではさらに、私鉄の描く「夢物語」のすきまから染み出た、生々しいリアリティが街全体を覆っていると隈は指摘する。このリアリティこそが、町田に混在性をもたらしているというわけだ。

 しかし、隈が町田で見出したような「混在性=都市性」は、都心ではしだいに失われつつある。日本随一の歓楽街である新宿歌舞伎町ですら、最近は警察関係の取り締まりが厳しくなっており、隈にいわせれば、「危険なワールド」というテーマに沿って規制された店がならび、ほとんどテーマパーク化しているという。

 東京の再開発ラッシュと時期を同じくして、隈の活動の舞台は日本国内から海外へと急速に広がっていった。そのなかで彼は、日本の都市開発で刺激をうけることがほとんどなくなったと漏らす。それは端的にいえば、クライアントが建築家と対等に付き合わないからだ。

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