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ニッポン=集団主義は、ウソだった! 『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』
~信頼は「損得」でなければ培えない

  • 後藤 次美

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2008年4月16日(水)

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日本の「安心」はなぜ、消えたのか――社会心理学から見た現代日本の問題点

日本の「安心」はなぜ、消えたのか――社会心理学から見た現代日本の問題点』山岸俊男著、集英社インターナショナル、1600円(税抜き)

 これまで書かれてきた多くの日本論や日本人論には、肯定するか否定するかの違いこそあれ、“日本人=集団主義”というお約束の語り口があった。ルース・ベネディクトの『菊と刀』しかり、中根千枝の『タテ社会の人間関係』しかり、土居健郎の『甘えの構造』しかりである。

 ところが著者は、専門とする社会心理学の立場から、このお約束に待ったをかける。日本人は本当に集団主義者なのか、と。著者自身が実施したアンケート結果をもとに提出する仮説が興味深い。

〈「日本人は自分たち日本人のことを集団主義的な傾向があると考えているが、ただし『自分だけは例外』と考えている集団である〉

 つまり、日本人は内心では、「個人主義でもいいじゃないか」と思いながら、「周囲は集団主義的に考えているに違いない」と思いこんで行動する結果、社会全体としては集団主義的な傾向を示してしまうというわけだ。ややこしい国民である。

 なぁんだ、結局日本人は集団主義なんじゃないか。そんなツッコミも聞こえてきそうだ。もちろん、著者もそれを否定はしない。ただし、日本人の集団主義的な価値観は、ある条件下のもとで優位を占めているにすぎない、というのが著者の言いたいことだ。

 その条件を著者は「安心社会」と呼ぶ。「安心社会」とは、〈メンバーがお互いを監視し、何かあったときに制裁を加えるメカニズム〉が埋め込まれているムラ型の社会のことだ。こうした社会では、〈社会そのものがそこに暮らすメンバーたちに正直さや、律儀さを強制するような仕組みになっている〉ため、人はいやがおうにも、集団を優先した行動をとらざるをえない。

 しかしこのことは、「安心社会」という条件を外してしまえば、日本人は個人主義的にふるまうことも同時に示している。実際、著者がおこなった社会心理学の実験によれば、アメリカ人より日本人のほうが、他者一般への信頼が薄く、個人主義的な行動に出る傾向が強いそうだ。

 この日本型安心社会と似て非なるものが「信頼社会」である。信頼社会は、不特定多数への信頼をベースにして、「渡る世間に鬼はなし」と考える社会のことをいう。

信頼社会のために、ぜったいやってはいけないのは

 別の著書(『安心社会から信頼社会へ』)で、著者は、「安心」と「信頼」の違いを次のように説明している。「安心」とは社会に不確実性が存在していないと感じることであり、「信頼」とは不確実な社会だけど、相手の人間性から判断して、ひどい行動は取らないだろうと考えることである、と。

 以上のような整理にもとづいて、本書後半では、現代の日本が抱えるさまざまな問題点を読み解いていく。たとえば年金問題や食品の偽装問題。その本質は「不信の連鎖」だと著者は診断する。

〈つまり、消費者や国民が企業や国家を信用していないと同様に、企業や組織の側もまたマスコミや国民、消費者を信用できない。その結果、情報隠しがさらに進展していくわけです〉

 本書では触れられていないが、遅々として進展しない(としか見えない)自民党と民主党の関係も、まさに「不信の連鎖」の象徴といえるだろう。

 誤解のないように言っておくが、著者は安心社会だからといって日本を断罪しているわけではない。むしろ、戦後の「奇跡の経済成長」は、安心社会を前提とした日本型経営の賜物だと述べている。

 だが、日本型経営の特徴であった年功序列や終身雇用、さらに護送船団方式も過去のものとなったことは、安心社会の枠組みが崩壊しつつあることの証左だ。ならば、日本は〈他者との協力関係を構築していく信頼社会に移行しなくてはいけない〉のだが、それがなかなかうまく行っていない。安定した社会関係が弱まっているのに、よそ者は信用できないという旧来のムラ型メンタリティのままでいるために、社会のあちこちで糸がからまっているのが、現在の日本なのだ。

 では、どうすれば日本は信頼社会に移行できるのか。
 ここで著者が厳しく戒めるのが、「利他の心」を教え込む類のモラル教育だ。

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