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(17)東京の団地と大学、老いた集合住宅の新しい「幸せ」に挑む

高島平団地と大東文化大学の地域再生

  • 山岡 淳一郎

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2008年4月22日(火)

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 住民の高齢化と建物の老朽化=「ふたつの老い」が、都市近郊のマンション地帯で深刻な事態を招いていることはたびたび指摘してきた。

 それは俯瞰してみれば衰退する「地方」の問題とも重なる。

 老いるコミュニティを元気にするには「若い世代」を呼び込む必要がある。が、頭ではわかっていても実践策が見えない。そのような状況で4月から東京板橋区の高島平団地と近くの大東文化大学の間で過去に例のない取り組みがスタートした。

 題して「高島平再生プロジェクト」。通称「高P(タカピー)」である。

 日本住宅公団(現UR都市機構)が開発し、1972年から入居が始まった高島平団地は、マンモス団地の象徴だ。日本一の高層団地として脚光を浴び、田中角栄、福田赳夫、大平正芳ら歴代首相をはじめ多くの政治家が、高島平という大票田で「第一声」を上げている。第一次石油ショックで生活必需品欠乏の風評が高まったとき、いち早く米やトイレットペーパーなどの物資が投入された団地でもある。政府は、都市部のモデル団地への対応を通して品不足のデマを封じ込もうとした。

 一方で「自殺の名所」という嫌なキャッチフレーズもつけられた(少なくとも180人以上が飛び降りたようだ)。いまは建物の外廊下にもコンクリート柵が設けられている。さまざまな意味で時代の風を浴びてきた団地である。

高齢化、少子化で空き住居急増、空洞化の危機

 現在、この高島平団地は少子高齢化の逆風をもろに受けている。ピーク時に3万人に達した居住者は2万人にまで減り、高齢化率は3割と全国平均を大きく上回る。全1万170戸のうち8287戸がUR賃貸だ。

 高島平再生プロジェクト「タカピー」の発端は、地元のタウン紙「高島平新聞」が5年前に行った空室調査。新聞の残部数が増えたのを不審に思った村中義雄代表たちが目視で住戸を調べてみると、500戸以上に人が住んでいなかった。高島平の空室化は衆議院予算委員会でとり上げられる。公団側は、住人が引っ越したあと補修せずに残している住戸は多いけれど、それらは賃貸に回されておらず「空室ではない」と妙な弁明をする。空室の政策上の定義がどうであれ、団地住民のなかに空洞化への危機感が高まった。

 翌年、地域の研究会で村中氏と大東大環境創造学部の山本孝則教授が出会い、団地と大学のコラボレーション「タカピー」が始まった。毎月、住民と学生が顔を合わせ、地域を再生するには何をすべきか話し合った。ときには近隣のうどん屋に場所を移し、「酎ハイ、濃いめ」を連発しながら侃々諤々議論を重ねた。

 そして、この4月から大東大の外国人留学生10人と日本人学生6人が、団地で新たな生活に入ったのである。

ルームシェア、カフェ、家賃の地域通貨決済と新機軸が続々

 たかが16人の学生が住んでどうなる、と見くびってはいけない。タテ割りの制度上の壁を破るいくつもの挑戦が仕込まれているのだ。

 学生たちに住戸を貸すに当たって、大東大はURから一括して借り上げ、東京の、とりわけ外国人に厳しい住宅事情に苦しむ学生たちにルームシェアリングで貸す。外国人への賃貸、ルームシェアリング、おまけに一般企業ではない大学を介してのまた貸し。従来のお堅いURではとても認めたがらないとみられてきた壁を次々と突破した。

 さらに入居する学生たちは、団地内のシャッターがおりていた商店街に開設されるコミュニティカフェを拠点に、高齢者支援や育児支援のボランティア活動を展開する。その対価は、すでにタカピーで立ち上げている地域通貨「サンク」で支払われ、家賃の一割程度まではサンクによる決済が認められる。つまり学生たちは地域活動を通して家賃の一部を賄うというわけだ。

 若者を入れたい団地と少子化で危機に直面する大学が、約77万戸の賃貸ストックの再生を模索するURを巻き込んで、独自の一歩を踏み出した。社会貢献と市場経済の折り合いをつけながら、新しい公共的基盤をコミュニティのなかに創設しようとしている。この斬新な志向性は文部科学省の2007年度「現代教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」に選ばれ、3年間で5000万円の補助金がついた。これも学生の団地居住を支えている。

 仕掛け人の山本孝則教授は、私のインタビューに「このプロジェクトには街の生き残りがかかっている」と力を込めて応えた。

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