「NBO新書レビュー」

カツオ君を育てる地域社会〜『「サザエさん」的コミュニティの法則』
鳥越皓之著(評:清田隆之)

生活人新書、660円(税別)

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2008年4月21日(月)

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評者の読了時間4時間00分

「サザエさん」的コミュニティの法則

「サザエさん」的コミュニティの法則』鳥越皓之著、生活人新書、660円(税別)

 マンションでは、隣人の顔すら知らない。近隣住民によるトラブルは格好のワイドショーネタ。近所の子どもを叱れば、親から苦情が来る始末……。

 と、のっけからJ-POPの歌詞みたいなことを言っているが、こうした状況はもはや歌詞としても陳腐なほど、日本社会の常態と化している。自分自身の生活を振り返ってみても、隣人と挨拶を交わしたことはいまだにない。

 でも、はたしてそれでいいのか? 地域社会や共同体のあり方をキチンと考え直さないと、日本の社会が暮らしにくいものになってしまう──これが著者の基本的な問題意識だ。

〈今、コミュニティというものの姿は大きく変わりつつあります。しかし、どの方向に進むのかはまだ明瞭ではありません。国や地方自治体がコミュニティの再編に力を入れはじめていることは多くの方がご存じでしょう。他方、それぞれの地域の住民が「自分たちの」コミュニティをつくりつつあります。このような動きが生じているのは、今私たちひとりひとりを取り巻いているほんの身近な社会の仕組みが、どうもしっくりきていないからではないか、と思います〉

 共同体の崩壊を嘆き、その再興を説く言論自体は、とくに珍しいものではない。しかし「私たちに『過去に戻れ』と呼ぶ声は、過去の残酷な生活を無視したノスタルジーでしかありません」と断じているように、本書は単なるノスタルジー回帰を謳っているわけではない。

 書名のとおり、著者は『サザエさん』の象徴的なエピソードや、過去のコミュニティを参照してはいるが、それは「新しい時代、新しい環境変化を見据えたコミュニティ論」を展望するためだ。

 本書の冒頭で、著者はまず「子育て」の問題に触れている。現代は核家族が主流であり、共働きの夫婦だって珍しくない。そんな状況下で子どもを育てるとなると、多くの親は負担過剰となってしまう。一方、磯野家のように祖父母がいる「三世代家族」であれば、家事や育児を担える人材が複数いるため、家庭のバランスは安定する。

 とはいえ、それを処方箋として唱えるのはあまり現実的ではない。ここで期待されるのが地域のコミュニティだ。

生きていく知恵を育てる“親”たち

 かつての地域社会には、オシメを交換してくれるおばちゃんや道ばたで叱ってくれるおじさんなど、育ての親ともいうべき人が近所にたくさんいて、「子どもは地域で育てる」という発想があった。これらは一度弱体化してしまったものだが、最近再び活気づいてきているという。

 例えば兵庫県には、古い商家を交流館に改造し、そこでお年寄りが子どもたちに物づくりなどを教えるイベントを行うという場所がある。これは、お年寄りの「経験」や「時間」を地域ぐるみの子育てに有効活用している好例だ。

 ただ「昔に戻れ」というのでは実効性のない話だが、このようにそれぞれの地域が工夫を凝らしていけば、子育てになかなか時間を割けない親たちにとって心強い手助けとなるだろう。さらにこれは子どもの「教育」にとっても有用だという。

 礼儀作法、他者とのコミュニケーション、異世代交流、などの術を子どもに教えることは、本書において「平凡教育」と呼ばれており、コミュニティはこれを授けるための格好の装置になり得るというわけだ。

 確かに親のいない家にひとりで過ごしていては、こういった能力は身につきづらいだろう。近所のおじいさんや学校の上級生、時には気の合わない友達などとも一緒に過ごしながら、「コミュニティで生きていくための知恵」を自然と身につけるのが平凡教育なのだ。もちろん、『サザエさん』でいえば、カツオがこの教育の成功者だ。

 コミュニティへの期待や注目は「子育て」という家庭的な問題だけに限らない。

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著者プロフィール

清田隆之(きよた・たかゆき)
/BLOCKBUSTER

1980年東京生まれ。早稲田大学出身のクリエイターチーム「BLOCKBUSTER」所属。主な活動媒体に『R25』など。フリーマガジン『FILT』で連載中の人気コーナーを書籍化した『おとなてすと』(マガジンハウス)が発売中。ブログ「ブロックバスターファンクラブ」は月〜金で更新。

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