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ラオス再訪 その1

2008年5月14日(水)

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 四月二十一日から、またもやラオスへ。昨年は三月と八月、二度ラオスに行った。今年も五月の末に再度挑戦の予定。ようやるわ。

今回のラオスは、こんなところです

今回のラオスは、こんなところです

 なぜラオスにばかり行くのか。

 ヴィエンチャンに若原弘之という便利な人がいるからである。

 ヴィザのあれこれ、現地での行く先、交通手段の選定、宿泊まで、まったく遺漏がない。そのうえ虫にも植物にも詳しい。ラオスに行くなら、おかげで私はなにも考える必要がない。

 こういう楽な旅に慣れてはいけないのではないか。ふとそう反省したりする。

 しかし私も、もう歳である。いまさら艱難辛苦に耐えて、自分を訓練することもあるまい。そう思い直して、大名旅行に甘んじている。

 若原君自身のことは、新潮社の季刊誌『考える人』の昨年の特集に載っている。関心がある人は、それをぜひご覧いただきたい。現代には稀な、貴重な人材である。そう思うのは、私だけかもしれないが。

 もう一つ、ラオスのいい点がある。

 虫の持ち出しが比較的自由だということである。

 いわゆる発展途上国は自然物の国外持ち出しを基本的に禁止している。それを厳密に解釈すれば、虫も当然ダメである。しかし私が採っているような虫は、そもそもだれも気にしていない。私流にいうなら、この世に「存在していない」のである。その「存在しない」ものを国外に運ぼうとすると、急に捕まったりする。このあたりが現代社会の理解不能なところである。靴の底に付着した土だって自然物で、その中には細菌を含め、かなりの生物が含まれているに違いない。

 聞いた話だが、タイはその点、あんがい合理的である。持ち出せない種のリストを定めているという。商品化されやすく、放置すると乱獲される可能性の高い虫を選んだのであろう。ただし、そういうリストが作れるということは、すでに虫の正体がわかっているからである。

 そのリストのなかに、ゾウムシが入っていないことは確実である。どうせ売れない虫だし、そもそも名前がないものが多い。名前もないのに、どうやってリストを作りゃあいいのだ。ただし虫のなかには、チョウや一部のクワガタのように、お金になる種がある。その持ち出しをあるていど規制するのはやむを得ない。

 自然に関心のある人はすでにおわかりの通りで、多くの虫はいま採らないと、環境ごと絶滅する可能性が高い。

 採集するから減るというのは、虫により、状況による。ラオスのゾウムシなんて、減るわけがない。「減る」というためには、対象をきちんと指定し、現在量を確認しておく必要がある。そもそも名前がついてないゾウムシのほうが多いのだから、そんなこと、できるわけがない。

ラオスのゾウムシたち さあ、今回は何が採れるだろう?

ラオスのゾウムシたち さあ、今回は何が採れるだろう?

 私は戦前に東京二十三区内で採れた虫の標本をわずかに持っている。むろん現在ではすでに採れないものばかりである。採れるはずがない。虫のいるような場所が消えてしまったからである。環境の変化が虫を滅ぼす。その変化を引き起こしている人たちは、虫のことなど、毛ほども考えていない。虫のことなんか考えない人たちが虫を滅ぼし、虫のことを考える人たちには、虫を採るな、という。世間がときどき気が狂うのは昔からだが、いまだって同じである。おとなしく従う相手には、いいように指図し、力のある相手にはなにもいわない。

 炭酸ガスで地球が温暖化するから、石油の消費を控えろという。じゃあ、売るな。石油の使い方なんて無限に近くある。それをいちいち統制できるか。

 いちばん簡単なのは、元栓を締めりゃあいいのである。テレビ、新聞、雑誌がそういったか、そう書いたか。節約せよの一点張り。「欲しがりません、勝つまでは」の時代にそっくり。その戦争は負けましたよ。

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「ラオス再訪 その1」の著者

養老 孟司

養老 孟司(ようろう・たけし)

東京大学名誉教授

解剖学者/作家/昆虫研究家。1937年生まれ。62年東京大学医学部卒業後、解剖学教室へ。95年東京大学医学部教授を退官し、その後北里大学教授に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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