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カネのない奴ぁヒッジョーに厳しい『極端な未来』
~極論から考える、これが米国の強さ…かも

  • 麻野 一哉

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2008年5月14日(水)

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極端な未来 経済・産業・科学編

極端な未来 経済・産業・科学編』ジェームズ・キャントン著、椿正晴訳、主婦の友社、1900円(税抜き)

 会話の最中、「よし、極論をいおう」といって、無茶な話をすることがある。しかし、たいていの場合、それは話の方向をわかりやすくするための方便にすぎず、本気で言っているわけではない。けれども、この『極端な未来』は、そういう極論の世界が遠からず出現すると予言する。たとえばそのひとつが、〈中国では2015年までに、人口1000万超の巨大都市が100ヶ所建設される〉

 1000万超の巨大都市ということは、これはつまり東京が100できるということだ。現在の日本だと1000万人を超える都道府県は東京だけ。次は大阪、神奈川の900万、愛知、埼玉の700万、千葉の600万、兵庫の500万と続くので、サバをよんで1000万「以上」でなく1000万「前後」としても、日本には三カ所しかない。

 中国の人口は13億で日本のほぼ10倍だ。であれば、巨大都市ができるといってもせいぜい30ではと思うのだが、本書は100という。それだけ都市と田舎の差が激しくなるということなのか。あるいは、まだまだ人口が増えたり移民が押し寄せるのか。この「予言」は数多ある中国の将来のひとつにすぎないので、詳細な根拠は書かれていない。しかし、“極端な数字”であることに違いはない。

 ちなみに、現在すでに北京は1450万人、上海が1700万人で、東京の人口を上回っている。そんなのが100も出現するというのはどういう状態なのか。

 頭をよぎるのは、地球を見下ろす人工衛星からの写真だ。東アジアの夜は、帯のように太平洋ベルト地帯が光り輝き、他はソウルと北京、上海が明るいぐらいで、あとは比較的暗い。しかし、2015年には東京を越える光が100ヶ所も中国全土にあふれかえるのだ。喜ぶべきなのか危機感を持った方がいいのかよくわからない。

 本書は、「経済・産業・科学編」と「政治・社会編」の二巻構成になっている。一巻に書かれているのは、ざっとこんな内容だ。

  1. 自由な精神、自由市場、自由企業のもとで、IT(以下、Tはテクノロジーの略)、ナノT、ニューロT、バイオTを柱にした技術が発達し、世界的な規模で「貧困の削減」「国境なき商活動」「民主主義改革」が進む。
  2. 温暖化対策は全人類に避けられないテーマとなり、クリーンテクノロジーが求められる。「脱石油」が求められ、未来の燃料として、「水素」「ナノエネルギー」が柱になる。
  3. 人類は100歳まで生きるのが当たり前になり、その権利を保障する政治的なシステムが求められるようになる。また、疾病や欠損した機能を回復するだけでなく、本来の能力を強化するための人工的な手術や投薬も始まる。
  4. 技術の発展は、現在の我々から見ると、トンドモ科学としか思えないような、「極端な人体改造」「宇宙への植民」「テレポテーション」が現実化する。

 3に関して少し詳述する。

 現在もレーシックなどによる視力回復が進んでいるが、やがて視神経そのものの回復も可能になる。また万能細胞の研究により、2030年までに心臓や肺などの臓器が再生可能になる。そのうえ、そういった「マイナスをゼロにする」医療だけでなく、「ゼロをプラスにする」ような医療も登場する。

 たとえば「赤外線が見える警備員」や、「突出した画像検索能力を持つゲームデザイナー」や、「大容量の記憶容量を備えた詩人」になるための医療などだ。美容整形ではなく、機能整形とでも呼べばいいだろうか。

 評者は以前、本欄で、『ポスト・ヒューマン誕生』という本を紹介したことがある。この本も未来を予言するという点で共通しているが、ことなる点もいくつかある。そのひとつが著者のおかれている立場だ。

ブッシュのご指南役も務めた筆者

 『ポスト・ヒューマン誕生』の著者は発明家であり、その主張はあくまでも一市井人としての発言にすぎない。しかし、本著『極端な未来』の著者は、未来予測のシンクタンクの所長として多くの企業のコンサルタントをしてきている。9・11以後の世界を見渡すための助言を、ブッシュ大統領に求められたこともある。非常に責任のある言動を求められる立場にあるといえよう。

 ちなみに、『ポスト・ヒューマン誕生』の未来予測はもっと極端だった。なにしろ、「将来、人は心臓も肺もいらなくなる」というのだ。しかし、凡人である評者としては、「心臓も肺も再生可能になる」と聞くほうが安心する。

 『極端な科学』でも、「トンデモ科学が実現するかも」といった1章があり、そこには「背中に羽根をはやした天使になりたがる少女」や、自己組織化の原理を活かして、「ダウンロードするだけで自動的に組みあがる本棚」といった話も出てくる。しかし、この章には、どこか著者自身が信じきって書いてないような雰囲気が漂っている。含み笑いを感じるというか、完全にクレイジーになりきれてない。しかし、というか、だからこそというか、この本には常識といったものが感じられる。要するに、信頼性があるのだ。

 ちなみに著者は、9・11の飛行機に乗るはずだったのが、たまたま仕事の都合で1日前の便に乗り、命拾いしたらしい。自分が生き残ったことに運命を感じ、今後の世界のあり方に対して、より強く考えるようになったという。

 もうひとつ、『ポスト・ヒューマン誕生』と大きく違う点がある。それは、技術の発達がもたらす結果が、どういう影響を社会に及ぼすかという視点である。

 たとえば著者は、〈長寿医療の進歩により、10年以内に、100歳過ぎまで生きることが当たり前になり、2025年には人間の生得権となるだろう〉といい、同時に、〈能力強化を受ける権利が、ゆくゆくは教育を受ける権利や労働権と同じく、基本的人権のひとつになると予測している〉

 しかし、その反面、〈どのような人が(中略)長寿医療を受けるべきなのだろうか。どのあたりで年齢制限の線引きをすべきか。費用は誰が負担するのか。(中略)民主的な社会において、自らの健康増進と能力向上を望む個人の権利は、どう保証されるべきなのか〉という問いも投げかけている。

 著者の語り口は上品だが、平たくいうと「金のない人間はどうなるのか」ということだ。

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