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都市は、権力者のオツムの「サイトマップ」~『都市計画の世界史』
日端康雄著(評:山本貴光)

講談社現代新書、1000円(税別)

  • 山本 貴光

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2008年5月19日(月)

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評者の読了時間4時間20分

都市計画の世界史

都市計画の世界史』日端康雄著、講談社現代新書、1000円(税別)

 かつて訪れたことがある都市のなかで、一番強く印象や記憶に残っているものを思い出していただきたい。そのとき、どの都市のどういう光景がイメージされただろうか。

 こんなことを訊くのはほかでもない。本書を読みながら、わたしたちは、日頃都市というものをどうとらえているだろうかと思ったからだった。

 或る人は、都市のランドマークをイメージするかもしれないし、行きつけのお店の周囲を思い出すかもしれない。あるいは、その都市の地図やGoogle Earthで見た風景を思い浮かべる人もあるだろう。

 いずれにしても、巨大な都市を一望するのは難しい。もちろん、上空から鳥瞰すれば全体を視野に入れることはできる。だがそうすると今度は具体的な細部がわからない。かといって、都市のなかに立つと、全体がわからない。「同じ都市でもちがう方向から眺めるとまったく別の都市に見える」と述べたのはライプニッツだが、どうも人間の身の丈からすると、都市というものはつかみがたいところがある。

 そもそもこんな巨大で複雑なものが、いったいどうやってできてきたのだろうか。都市開発シミュレーション・ゲーム「シム・シティ」(1989)でなら、何度となく都市をこしらえてきたものだが、現実はどうかというとおぼつかない。

 本書は、そんな疑問にうってつけの一冊だ。古代から現代にいたるまで、世界のさまざまな都市の特徴やそれが変化する様子をマクロに見せてくれる。

 著者によれば、素朴な意味での都市の計画は、すでに古代から行われていたという。古代都市では、権力者たちが城塞を造り、町割(町の区画を設定し屋敷地に分けること)、土地配分、道路敷設、市場や神殿や宮殿の配置などを行っていた。

 ということは、逆に考えると、都市のかたちを見ることで、それを設計した権力者たちの発想が見えもするということだ。そこには政治体制や経済的な要因、住んでいる人びとの職業構成、といった、それこそ万事が絡み合っている。

周囲の文明や戦争によって、転用され、変化していく

 また、都市は、単独であるわけではない。当然のことながら、必ず都市の周囲の土地や環境との関係のなかにある。つまり、外部環境もまた都市の計画に大きな影響を与える一因である。

 例えば、本書に登場する都市を時間の流れにそって見てゆくと、ヨーロッパの都市で、城壁のかたちと高さが変化してゆくさまが見てとれる。どういうことかというと、15世紀末に火薬が登場した結果、武器が大きく変化する。これにともなってヨーロッパの都市は、大砲を防御手段としたかたちに造りかえられてゆき、城壁が従来よりも低くなったのだという。榎本武揚が五稜郭のモデルにしたオランダのナールデンも、そうした変化を受けてつくられた城塞都市の一つだった。

 隣国との戦争が絶えない都市では、どのように防衛するかという観点が欠かせない。このため、軍事技術や戦闘スタイルの変化が都市の設計に大きな影響を与えている。その延長上で考えると、核爆弾や弾道ミサイルや空爆が存在する現在、そうした防衛上の発想は都市設計にどのように反映されているのか/いないのか、大いに興味のあるところだ。

 また、古代エジプトのように王朝が変わるつど遷都する文明もあったが、多くの場合、都市は人間の寿命をはるかに超える長い時間をかけて、同じ場所につくられてきた。

 例えば、ローマ帝国の支配化で発展した植民都市は、現在のロンドン、パリ、バルセロナ、フィレンツェのように後のちまで姿をかえながら連綿と続いている。「樹木が年輪を重ねるように」とは著者の言葉だが、都市はそのときどきの支配者や諸条件によって拡大したり縮小したりしながら変化してゆく。

 つまり、なにもないところに新しく都市をつくるのでないかぎり、都市計画とはすでに存在する都市を、状況にあわせてどう転用・変化させてゆくかという問題を含んでいるということだ。

 この点で、19世紀のパリ改造の計画はまことにドラスティックな事例である。

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