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ソニーを救い、日立を助けた『町人学者』
~「産学連携」は、大学が本当に大学らしくあってこそ

  • 漆原 次郎

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2008年5月21日(水)

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町人学者 産学連携の祖 淺田常三郎評伝

町人学者 産学連携の祖 淺田常三郎評伝』編:増田美香子編、著:板倉哲郎、更田豊治郎、住田 健二、北川通治、岡田健、毎日新聞社、1600円(税抜き)

 1990年代に入ってから現在まで、「産学連携」が大学改革の一つの目玉となっている。大学側には、大学全入時代による経営難、国立大学の独立行政法人化などがあり、少しでも民間から資金を得たい実情がある。企業側も、スピーディーな技術革新の必要性から、知のリソースを大学に求めるようになった。

 だが、産学連携は成功話ばかりではない。「A社とB大が共同開発」という経済面の見出しの背後には、頓挫や御破算や物別れの山がある。利益追求が最優先の企業と、知の探究が大義の大学が手を組むわけだ。歴史、背景、存在意義、すべて異なる二者どうし。大学側は「研究成果を最大限、製品開発に応用してほしい」と期待する一方で、企業側は「製品開発の目的に適う部分だけ利用すればよい」と考える。かくして、雑誌や本、そしてWebでは、基礎研究が製品化に結びつかない“死の谷”の議論が続いている。

 文化の違う二者が結ばれるには何が必要か。示唆に富む本が出た。『町人学者 産学連携の祖 淺田常三郎評伝』である。

 淺田常三郎は1900年生まれの物理学者。大阪帝国大学(現在の大阪大学)創設まもない1934年から1964年まで、長らく阪大理学部教授として物理学を教育・研究した。

 没年は1984年。24年後のいま評伝が出たのは「淺田先生の業績を今こそ記録に残し、世に問うのは弟子達の責務である」と言いつつ2006年に他界した弟子・増田正美の遺志からだ。

盛田昭夫も弟子の一人

 執筆者である弟子たちは、いまも淺田への尊敬の念から、毎年「淺田会」を開いているという。本書でも淺田は「ベンチャーから大企業まで数多くの企業の発展に貢献した」人物として「産学連携の祖」と呼ばれている。執筆者たちが、これほどまで淺田に魅力を感じているのはなぜか。淺田本人の言葉以上に、淺田の弟子による証言の数々が載っている。

〈先生は物理学を象牙の塔に押し込めなかった〉

 教え子の一人は淺田の功績をそう形容する。国立大学の教員が私企業に肩入れすることが現代よりはるかに難しかった戦前・戦争直後、淺田は増田とともに「株式会社日本原子機械製作所」を起業した。焦土と化した大阪の街で、電柱から落ちた変圧器を拾い集め、電磁ケイ素鋼板から円形磁極を作った。看板製品の電子加速器「ベータトロン」はこうして誕生した。

 その後も淺田は、企業に就職した弟子たちから助言を請われる。牛尾健治(牛尾治郎ウシオ電機会長の父)から、輸出用の電球が早く切れてしまうとの相談を受けた淺田は、フィラメントのタングステンに水分が付くからと仮説を立て実証し、アジ化合物を塗れば水分が取れると解決策まで示した。松浦克昌(日立製作所)からは、全自動洗濯機が振動して脱水速度が上がらないとの相談を受け、30年前に書いた紡糸用ポットの光学的検査で異常振動を抑える実験の報告論文を渡すことで返答した。企業にとって淺田研究室は、困ったときの“駆け込み寺”だったのだ。

〈冗談を言うのが大好きで、教授という立場にありながら、少しも偉ぶった態度をとらなかった。淺田教授は、地位というものにまるで無関心なようにみえた〉

 これは弟子の一人、盛田昭夫の言である。盛田は学生時代、教授の淺田から実験のため借りたドイツ製カメラのシャッターを動かなくしてしまった。恐る恐る研究室に行くと、淺田はカメラにゲンコツ一発を食らわせてシャッターを直し、ニヤリと笑ったという。のちに盛田は東京通信工業(ソニー)を創業。会社の再三の危機にはいつも淺田が解決法を示してくれたという。

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