翌二十二日は朝八時に出発。池田・新里組が到着するまで二日あるから、一泊の予定でヴィエンチャンの北にあるヴァン・ヴィエン Vang Vieng に行く。
ここはリゾートで、石灰岩の山が多く、中国の桂林の縮小版である。その途中、昨年も立ち寄ったお寺に行く。ここは砂岩の小さな山で、そこならクチブトゾウがいることを、昨年確かめてある。とり始めると、ちゃんといる。池があって湿気があるから、ほかの虫もいくつか採れる。
お寺の地面に張り付いているオジギソウにノミゾウがいる。小島君がそういう。見せてもらうと、めちゃめちゃ小さい。0.4 ミリ、いくら虫は小さいものだといっても、これは小さすぎる。カメラマンの柳瀬君が撮影しようかとやってくるが、とうてい無理。
小島君の網の上に小さな黒点が複数あり、伊藤君が指差しながら、これですか、と小島君に聞いている。
「それはアブラムシ」。
持ち帰って電子顕微鏡で見ることにする。老眼の進んだ私には、要するに黒点である。ヒトが肉眼で見る点の大きさは、ほぼ 0.1 ミリまでだから、見えないことはない。
でも虫には見えんわ。
小島君は世界でも珍しいゾウムシのプロで、プロについて歩くと、こういう風に勉強になる。一緒に来た関東君は東京農大の大学院生で、チビゾウムシの研究中。名前でわかるだろうが、これも小さい。お寺にはチビゾウもちゃんといたらしい。水辺の草についている。こういう人たちに比べたら、私は間違いなくアマチュア。

ヴァンヴィエン(Vang Vieng) で泊まったリゾートホテル、タヴォンセック

ヴァンヴィエンの風景

ヴァン・ヴィエンの宿は、Thavonsouk Resort といい、戸建のきれいなバンガローが並んでいる。周辺も花盛りで美しい。各部屋にバルコニーがあって、向かいは石灰岩の山、目の前は川、なかなかの景色である。リゾートになるわけ。欧米人のバックパッカーが多い。宿泊料金は御主人を知っている「若原価格」で40ドル。
この御主人、農林省の偉い人だというが、なんとギターを弾いて客の前で歌っている。世界にはうらやましい人がいるものである。やっぱりラオスはいいなあ。
夕日を背景に、山川を見ながら涼風に当たり、バルコニーで夕食。贅沢なもの。ヴィエンチャンよりずっと涼しい。ヴィエンチャンでもすでにヒート・アイランドが始まっているのか。
翌朝は向かいに見える石灰岩の山の裏側に向かう。山が三層に重なっていて、その間の谷に入っていく。ヴェトナムのククフォン国立公園によく似ている。どちらも標高が低く、いわば平地で、石灰岩の山にはさまれた狭い谷である。ただしククフォンの森林は保全されているが、こちらはダメ。ほとんど伐られてしまっている。
若原君によると、ここはチョウの種類が非常に多く、三百八十種ほどだという。日本全体で三百を越えないから、わずか狭い谷一つで日本全土を優に越えてしまっている。これもククフォンに似ている。こういう場所では、じつは甲虫は少ない。チョウと甲虫の採れる場所が違うというのも、なかなか面白い。
当然ながら、クチブトゾウはほとんどいない。あとはシロコブゾウを一種、捕まえただけ。背中に白い粉でできた妙な突起をつけたカツオゾウがイラクサの仲間についている。この粉は取れてしまうが、小島さんが粉が再生しないかというので、生かして持って帰るという。結局、ほぼ二週間後まで、再生はしなかったようである。
それにしても日中に動くと暑い。毎日サウナに漬かっているようなもの。
23日の夜に、池田・新里組が無事に到着。でも次の予定地ポンサヴァンに行く飛行機は毎日は出ない。次便は25日。だから24日が一日空く。それなら新規到着組のウォーミングアップを兼ねて、近所に行こう。そういうことで、ヴィエンチャンから二十キロほどの砂岩の山に行くことにする。ここは私ははじめて。
目的地の近くで、開けた場所に数本の大木がある。砂岩地帯だからクチブトがいるかもしれない。そう思って、車を降りて探す。花が満開のネムがあったので、低い枝を叩くと、たちまちミヤマカミキリが一頭、それにクチブトゾウが採れた。長竿の網を持って近くにいた新里君に頼んで、枝葉を網ではらってもらう。クチブトが多数、結局二種採れた。
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