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全裸男子フィギュアが16億円なワケ~『現代アートビジネス』
小山登美夫著(評:栗原裕一郎)

アスキー新書、743円(税別)

  • 栗原 裕一郎

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2008年5月23日(金)

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現代アートビジネス

現代アートビジネス』小山登美夫著、アスキー新書、743円(税別)

 5月14日、ニューヨークのサザビーズ・オークションで、村上隆の「マイ・ロンサム・カウボーイ」が約16億円(1516万1000ドル)で落札された。顔だけアニメキャラ風の全裸少年がペニスを握りしめ、その先端からほとばしったスペルマが中空で渦を巻いているというフィギュアである。

 ネットの反響を見ると、「俺はこんなもんアートとは認めん」「こっちの(といってサンプルを示し)フィギュアのほうがぜんぜんデキがいいのに」「アメリカ人は頭がおかしいのか?」といった否定的見解が圧倒的に多いようだった。

 ようするに「どうかしている」とみんな思ったわけだ。

 私も「どうかしている」と思う。

 が、頭ごなしに否定したって「どうかしている」現実のほうはビタイチ動きはしない。批判するためには、まず、現実を「どうかしている」ものにしているメカニズムを理解しておく必要があるだろう。

 タイミングを見計らったかのように落札直前、そのメカニズムを知るための絶好の手引きを、村上隆にゆかりの深い人物が出版した。本書がそれだ。

〈アートマーケットも、まさに市場経済そのものです〉

〈「よい作品なのに売れない」というアート関係者は多いですが、「よい/悪い」「好き/嫌い」と、「売れる/売れない」はまったく別の話なのです。つまり、どんな作品でも、交換が成り立てばマーケットができ、お金の流れが生まれる〉

 最初のほうでこう断言する本書の著者・小山登美夫は、村上隆、奈良美智を送り出したことをはじめ、この十数年間、現代美術シーンを牽引してきた一線バリバリのギャラリストである。

 「ギャラリスト」は旧来の「画商」とは違う存在であると小山はいう。「画商」が売買を仲介するブローカーであるのに対し、「ギャラリスト」は〈みずからのギャラリーで発掘したあるいは選んだアートを発表し、社会に価値を問い、その価値を高めていく仕掛け人〉なのだと。

値段には「プライマリー」と「セカンダリー」がある

 小山は「価値」という言葉をさりげなく使っているが、アート作品の「価値」は多義的であり、本書に限定しても「マーケット的価値」と「美術史的価値」の二層が混在している。両者は、当然ながら緊密に連動しており、その総体が「アート・マーケット」ということになる。

 タイトルからもわかるとおり、本書は、前者の「価値」、アートとカネの関係に焦点を当てている。これまでアートの「価値」というと後者ばかりが話題になってきたけれど、アートにだっておカネは大事な問題なんだからちゃんと考えなければダメだ、というのが著者のスタンスである。

 具体的には、ギャラリストという仕事の解説、アートの価値(価格)が決定される仕組み、投機対象としてのアート作品、コレクターとマーケットの関係、メディア(批評)が果たすべき役割、日本のアート・マーケットの現状とそれに対する提言といった内容だが、アート・シーンをより良くするのだという理念が一貫していて、無味乾燥だったり嫌みだったりするところがまったくないのが、さすが、というかすごい。前半には、ギャラリストから見た、村上隆、奈良美智への評価も添えられている。

 この本の核をなしているのは、読者の興味とも一致すると思うが、やはり「アートの価値(価格)を決定する仕組み」の部分だろう。

 アート・マーケットには「プライマリー・プライス」と「セカンダリー・プライス」という二種類の価格があるのだそうだ。

 プライマリー・プライスとはギャラリーで展示販売されるさいにつけられる値段のことで、作家ごとに設定された基準にしたがい、サイズと素材で決定される。つまり、作品の出来に依らず、「この作家でこの大きさでこの素材ならいくら」と一律で価格が決められるわけだ。

 一方、セカンダリー・プライスは、市場で二次的に売買されるときの価格である。村上のフィギュア16億円というのは、したがって、セカンダリー・プライスということになる。とくにサザビーズやクリスティーズなど権威あるオークションでの落札価格は、作家の評価としてプライマリー・プライスに反映されるという。

 ギャラリーが作品を販売するのは主にコレクターと呼ばれる富裕層だが、誰が買ったかというのも作品や作家を評価する重要なファクターとなる。

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