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“男子”究極のコーチング! 『赤めだか』
~落語に祝福された男の人生録

  • 折野 冬葱

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2008年5月28日(水)

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赤めだか

赤めだか』立川談春著、扶桑社、1333円(税抜き)

〈前座の間はな、どうやったら俺(談志)が喜ぶか、それだけ考えてろ。患うほど気を遣え。お前は俺に惚れて落語家になったんだろう。本気で惚れてる相手なら死ぬ気で尽くせ。サシでつきあって相手を喜ばせられないような奴が何百人という客を満足させられるわけがねェだろう〉

 言ったのは立川談志。言われたのはまだ前座時代の弟子・談春。

 立川談春は、入門して24年、真打ちになって11年。好評を博していた雑誌の連載を単行本化したのが本書である。

 上記の言葉は、きつく、また、温かい。「俺を喜ばせろ」とは大変な事であるが、喜ぶ顔を見ればこちらも嬉しい。もっともっと喜ばそうと思う。

 この本は雑誌の連載をまとめたもので、前座から二ツ目になるまでをメインに、時が流れ、真打ちになって以後の話も入っている。

 立川流は末広亭、上野鈴本演芸場などの定席寄席には出られない。落語協会の大量真打ち誕生などに腹を立てた談志が、弟子を連れて独立したからである。

 著者・談春が高校をやめて落語家になろうと思ったとき、すでに立川流は定席の寄席を持たない流派だった。それでも、談春には談志しかなかった。ホールで聞いた談志の『芝浜』に心臓を射抜かれたのである。

 数十年前。談春と同じレベルではとうてい語れないが、似たような経験をした事が評者にはある。ホール最前列中央で談志の『六尺棒』という噺を友達とふたりで聞いて、ふたりとも5分ほど立ち上がれなかった。圧倒された。感動でも興奮でもない、圧倒だった。

 圧倒された少年・談春は高校を中退し、住み込みで新聞配達をしながら家元のもとへ通った。談志はこういった。

〈よく芸は盗むものだと云うがあれは嘘だ。盗む方にもキャリアが必要なんだ。最初は俺が教えたとおり覚えればいい。盗めるようになりゃ一人前だ。時間がかかるんだ。教える方に論理がないからそういういいかげんなことを云うんだ。いいか、落語を語るのに必要なのはリズムとメロディだ。それが基本だ〉

教える方がどんどん変わっていく

 そして、

〈坊やは俺の弟子なんだから、落語は俺のリズムとメロディで覚えろ〉

 相手は17歳の少年である。談志は、相手の成長に合わせて教えることを変えてゆく。

 二ツ目になるには、50のネタが必要だ。複数の弟子が全員師匠から直接50のネタを教えてもらう、なんてことがあるわけはない。それぞれにテープやCD、ビデオなどで先輩諸氏のネタを土台に"談志のリズムとメロディ"にして組み替え、作り上げるのだ。

 落語からリズムはともかく、メロディなどという言葉が出てくると誰が思うだろうか。

 電車の中などで意識して会話に耳を傾けてみると、心地よいメロディに聞こえる会話もある。やけにトゲトゲしいメロディに聞こえる会話もある。

 小さい頃「まーりーこーちゃん。あーそーびーまーしょ」から始まって、「まーたあーした」に終わるまで、わたしたちはたくさんのメロディで会話をしていた。マナー教室でビジネスの会話術を教えるところがあるが、自分のしゃべり方が「よいメロディ」になっているかどうか、ICレコーダーに録音して確認してみても面白いだろう。

 談春たちの後、二ツ目の昇進は厳しくなった。「談志が認める二ツ目は並ではない」と世間に伝えたかったのだ。

 談志は、常に自分の弟子を自信を持って世に問いたい。そのために、基準や形式を平気で変えることがある。

 そのとき、家元が動いた地点を確認して、よい距離を取れるかどうか。

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