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師匠は言った。「修業とは矛盾に耐えること」

2008年6月5日(木)

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 落語家、立川談春の自伝的青春記『赤めだか』が売れている。17歳で立川談志に入門して始まった前座修業は「矛盾に耐えること」だった。師匠の言葉に振り回され、戸惑い、悩み、成長して行く物語はエッセイというよりビルドゥングスロマンの趣である。職場の人間関係がドライになる中、ここに描かれる濃密な師弟関係に、ある種のうらやましさを抱くビジネスマンは少なくないだろう。

(聞き手は、日経ビジネスアソシエ副編集長 三橋英之)

――『赤めだか』は取り立てて落語に関心のない人たちにまで評判を呼んでいます。何がそうした人たちを引き付けたのだと思いますか。

赤めだか
立川談春著、扶桑社、1333円(税抜き)

談春 もともと雑誌(季刊文芸誌「en-taxi」)に連載中から、落語ファンを念頭には置いていませんでした。でなければ、本にする時に「赤めだか」などというタイトルを付けません。

 むしろ僕は、談春ファンや談志ファンが手に取らない可能性のあるタイトルをつけたかった。それは、ファン以外に、僕という人間に興味を持つ人がいるはずだという自信ではありません。ただ、読んでもらえれば、「ヘンだな、この談志っていうのは。でも、いいこと言うな」と感じてもらえるだろうと。

 僕が前座修行中に何を感じ、どう動いたかを書きましたが、それらすべての出発点は談志が発した何らかの言葉です。そこには興味を持ってもらえると思っていました。

 だって、絶対みんな人から影響を受けたいはずですもん。もっと言えば、上司には惚れたいでしょうし、抜きたいと思える上司に出会いたいでしょうし…。昔はどの世界にも、誰かにほれ込み、この人に着いて行こうといった師弟関係に似た人間関係があったわけでしょ。最近は「会社の人間関係が希薄になって…」なんて声を聞きますが、そんなに変わんないと思うんですよ、人間とか、日本人とかって。

弟子が、部下が「すごいな」と思えればいい

――談志師匠が弟子たちに、とても覚えきれないほどの大量の用事を言いつける場面があります。しかも、その中には「家の塀を偉そうな顔して猫が通りやがる。不愉快だ、空気銃で撃て。ただし殺すな。重傷でいい」などと無茶な指示もある。当然、理不尽さや矛盾といったものを感じるはずで、それをどうやって処理したのですか。

談春 この人からものを教わらないと落語家になれないんですから、しょうがないですよ。

 弟子は全員、入門前に師匠から「修業とは矛盾に耐えることだ」と言われるんです。どういう意味かよく分からないまま、勢いで「はい、分かりました」と答えるでしょ。後になって、いくら師匠の言葉でもこれはおかしいぞという時に「でも師匠は、修業は矛盾に耐えることだと言ったよな。これは矛盾以外の何物でもないけど、イコール修業と立川談志が言っているなら仕方ない」と思うんです。「師匠は全部考えて言っているんだな」と面白く感じましたね。普通は「だとしてもおかしい」と反発するんでしょうが、僕は子供だったので、ああ面白いなと思いましたね。

――無茶な指示にも必死になって応えようとする弟子たちの姿に、師匠への尊敬と愛を感じました。また、師匠の方も、実によく弟子たちを見ていて、心にぐさりと刺さる言葉を発しますね。

立川談春(たてかわだんしゅん)氏
1966年生まれ。84年に立川談志に入門。1997年に真打に昇進。「国立演芸場花形演芸会大賞」など多数を受賞。若手本格派として高い評価を得ている。
(写真:山田 慎二 以下同)

談春 弟子が何を考えているのか、何を悩んでいるのか。それは当然、師匠には見えるでしょう。その程度のことが見えない人は売れないですもん。

 もっと言えば、見たものが合っているかどうかは関係ないんです。重要なのは、立川談志が発した言葉が、相手に合っている合っていないではなく、「さすが談志だ。すごいことを言うな」と思わせられるかどうかなんです。それは上司だって同じでしょう。

 もっとも、師弟関係と上司部下の関係とでは、お金や利害が介在しない点で決定的な違いがあります。

 弟子は師匠にタダで教わり、師匠もタダで教える。そうするとタダで教わるとはどういうことかを考えますよね。教わる回数を増やしたいし、密度も濃くしたい。だったら、どうすれば師匠が自分に教えたくなるのか。それを必死に考えて行動します。

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「師匠は言った。「修業とは矛盾に耐えること」」の著者

三橋 英之

三橋 英之(みつはし・ひでゆき)

日経トップリーダー事業開発部長

1988年一橋大学卒業、日経BP社入社。日経ビジネスで自動車、電機、流通などを担当。日経ビジネスアソシエ副編集長、日経レストラン編集長を経て、2012年9月から現職。日本の食と食文化を海外に伝える各種プロジェクトを企画・実施する。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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