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第3回 「英語で考える」ことは可能か?
~「英語が使える」という言葉の真の意味

  • 晴山陽一

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2008年6月9日(月)

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前回から読む)

 私の新著『英語ベストセラー本の研究』(幻冬舎新書)をベースにして、英語の学習法について全6回の予定でお話しをさせていただいている。

 前回では「ヴェルニッケ中枢」と「ブローカ中枢」を共に刺激する「音読」が、英語のかけがえのない学習法であることを紹介させていただいた。今回は、今からちょうど40年前の1968年に出版された松本亨著『英語で考える本』を起点にして、「英語で考える」というテーマについて書いていきたいと思う。

 私が新著を書くために読んだ40冊以上の書物の中から最もインパクトの大きかった2冊を選ぶとするなら、前回取り上げた國弘正雄著『國弘流 英語の話しかた』と、この『英語で考える本』が文句なく双璧をなす。

 松本亨は英語教育界の巨星だった。その生涯を通じて「英語で考える」「英語の意味は音声にある」という2つの信条を守り通し、いささかも曲げることがなかった。特に「英語で考える」という主張に対しては、「日本語で考えることに慣れた日本人には、どだい不可能な理想論」と、これを疑問視する声が根強く、彼の一生はこのテーゼを身をもって実証することに費やされたと言っても過言ではない。

 今回、『英語ベストセラー本の研究』を書くために膨大な資料に目を通したわけだが、私が驚いたのは、松本の『英語で考える本』が出される21年も前に「英語で考える」という標語を高らかに掲げた文書があったという事実である。

英語で考えることが、最も自然で効果的な学び方

 終戦後3年目の1947年に教育基本法が公布され、6・3・3・4制の学制が定められ、同年の4月から新制小・中学校(高校は翌年)が発足した。それに先立って『指導要領(試案)』があわただしく発表された。次にご紹介するのは、英語科のセクションの第1章、英語教育の「目標」の部分だが、ここに目を疑いたくなるような記述がある。まず、項目だけを列記すると……

  1. 英語で考える習慣を作ること。
  2. 英語の聴き方と話し方を学ぶこと。
  3. 英語の読み方と書き方を学ぶこと。
  4. 英語を話す国民について知ること、特にその風俗習慣および日常生活について知ること。

 これが英語教育の目標である。トップに「英語で考える習慣を作ること」が掲げられているのである(さらに「聴き方と話し方」が「読み方と書き方」に先んじている点も大いに注目に値する)。終戦直後のこの時期に、英語教育の第一目標に、さりげなく「英語で考える習慣を作ること」が挙げられていることに、私は驚きを禁じえない。

 この第1項の説明部分を見ると、そこには「英語で考えるという習慣が最初で最後の段階」とか「英語で考えることが最も自然で効果的な学習法である」と明記されている。

 しかし、のちに「英語で考えること」を「最も自然で効果的な学習法」とみなし、そのための膨大なテキストを作成して世に問うた松本亨は、ともすれば現実から遊離した理想論者とみなされ続けたのである。

 松本の略歴を見て感心するのは、彼の英語学習の道が決して平坦ではなかったこと、それにもかかわらず、ずば抜けた直観力で道を切り開いていったことである。そのことは、彼が中学で英語を学び始めて7年も経ったのちに、英語を一からやり直した勇気と真摯さによく表れている。話はこうである。

 その時、彼は明治学院大学の1年生だった。毎日のようにネイティブの教師たちの家に入り浸って英語に触れ、だいぶ自信をつけてきた矢先のある日のこと。彼は校庭で、アメリカ人教師が奥さんと早口で立ち話をしているのを耳にしたのだが、まったく聞き取ることができなかった。この時、松本は「本当の英語は、自分にはまだわからないのだ!」と非常なショックを受けたという。自分の学習法には何が欠けているのか、一晩眠らずに考えた末、到達した結論は次のようなものだった。

(1)
自分はこれまでアメリカ人の先生の言うことを聞いて、それを一度日本語に訳していた。だから、文が完全に聞き取れないと、意味が完全に取れないのである。
(2)
返事をする時は、まず頭の中で英文を組み立て、動詞の時制や名詞の単数・複数や冠詞の使い方や発音などを2、3秒で確認してから話す。これは大変な労力を伴う。

 このような反省を踏まえた上で、松本は「なんとか自由自在に英語を使うようになりたいものである。正しい英語が、自然に口から出てくるようにできないものだろうか」という強烈な願望を持つようになるのである。

 では、どうしたらいいのか?

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