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『「若者論」を疑え!』後藤和智著、宝島新書、720円(税別)
「イマドキの若者は」という若者バッシングはいつの時代もあった。しかし、「少年犯罪は急増/凶悪化/低年齢化している」「インターネット/ケータイ/ゲームが若者をダメにした」「ニート/大卒フリーター問題を見ても、若者は就労意欲が低い」等々どれを取っても、若者のこころの弱さ、未熟さを憂う昨今のそれは、あまりに極端だ。
メディアを席巻するそうした言説を、「何を根拠に?」と眉ツバで聞いていた人もいるに違いない。
もちろん、「若者論」への反証がなかったわけではない。阿部真大『搾取される若者たち』雨宮処凛『生きさせろ!
』赤木智弘『若者を見殺しにする国
』などは、当節の若者特有のメンタリティーや、格差問題が経済構造の問題であることを説明してくれていた。
とはいえ、それでイマドキの若者への違和がすべて氷解したわけではなかった。
そこに登場したのが本書である。根拠が曖昧だったり、論理的破綻がある若者論を「俗流若者論」と呼び、自身のブログで批判的検証を続けている若き論客の初の単独著作だ。
“バッシングがきちんとした統計に基づいた論説ではなく、論者の直感を都合良く裏付けするような根拠ばかりを持ち出して語っている”ことに憤る著者は、1984年生まれ。若者批判のターゲットである世代から、直接どんな論駁が聞けるのか、期待して読んでみた。
本書は、少年犯罪急増論、ケータイ・ゲーム有害論、格差・ニートの自己責任論についてそれぞれ章立てになっている。現在の若者を取り巻く言説に対して、社会学などの学問的資料や実際の統計をつぶさに参照し、その誤謬を指摘していくスタイルなので、現在の若者批判の何が問題なのかがわかりやすい。
たとえば「凶悪化する少年犯罪」という認識は、若者の人口減少を加味しても検挙件数は格段に減っていること、強盗事件の増加は、平成9年に実施された「少年非行総合対策推進要項」によるトリックに過ぎないと看破する。
この要項により、「窃盗+傷害」として扱われていた事件は、「強盗(強盗傷害)」として検挙されるようになった。その結果、強盗だけでなく殺人や放火なども含む〈凶悪犯罪全体の検挙人員が約1.6倍に増加したのです〉と著者は言うのである。
でも、数字の誤読で片づけきっていいの?
また著者は、「理解できない事件」「過去にはなかった事件」と報じられる少年犯罪も、似たような過去のケースを具体的に挙げ、〈その事件は「過去では考えられなかった事件」ではない〉と述べている。
〈ましてや、現代の若者の「心の闇」や「キレやすさ」を象徴していると言いきることは、慎むべきではないでしょうか〉
先のような事実誤認は是正されるべきだし、事件を理解しようともせず、「心の闇」ですべてを片付けようとする姿勢は糾弾されて然りだ。
ただ、著者のデータ解読によって数値的な過りが正されても、腑に落ちない部分は残る。
著者は、「社会的背景や事件の残忍さが表れないから、統計はあてにならない」と主張する人に対し、〈このような経験主義的な物言いには、大きな疑問符が突きつけられるべきでしょう〉と言うのだが、統計を軽んじることも統計だけを論拠にすることも、同じように何かを見落とすのではないかと評者は思うからだ。
たとえば1年前に起きた福島・会津若松市の母親殺人事件。報道によれば、犯人の高校生は切断した母親の頭部を持って自首した。少年はそれを運ぶ際に乗ったタクシーの運転手にカバンのしみを指摘され、「ココアです」と答えたという。
かつての日本にこの母親殺しと似た事件があったとしても、しみがシートにうつることを咎められた少年が淡々とココアだと言い訳する不気味さは、統計だけでは見えてこない。若者の変化や世相の傾向といった“統計では読み取れない一面”は、そうした突出した事件に視点を向けることで、十分に一般論として語りえるのではないだろうか。
それでも著者は、「個別的な事件を一般化するな」「一般論を語るなら統計の裏付けがあってこそ」と主張するかもしれないが。
ついでに言うと、いくつかの指摘の中に、データの並べ方や拾い方で気になるところがあった。
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