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ラオス再訪 その5 ムアン村から、クチブトゾウムシをとりにいく

2008年6月11日(水)

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 四月二十六日夕刻にムアン村に到着、それから五月四日まで、結局村には一週間あまり滞在した。その間、かならずしも天気は良くなかった。しかし夜間に雨が降ることが多く、その雨が残っても、十時前には雨が上がる。さらに午後三時を過ぎると、夕立風に局地的な雨がやってくることが多い。おかげで昼間の採集にはさして支障がなかった。

ラオス・雨と霧の朝 数メートル先がもう見えません

ラオス・雨と霧の朝 数メートル先がもう見えません

 夜が雨、昼間は晴れというこのパターンは、ブータンの雨期でも同じである。ヒマラヤからラオス、おそらくは中国の奥地にいたる、アジアの山地では、雨期がこういう天候なのかもしれない。

 二十八日は朝の天気が悪く、そうなると出られないから、することがない。小屋の白板に若原君が当日の予定を書く。それを柳瀬君がカメラに写す。白板を斜め方向から撮っても、「斜め補正」という機能がカメラについているらしい。それを使うと、白板だけを正面から撮影したように補正される。

 それを見た若原君が感心して、早速自分の顔を横から撮れという。斜め補正を使ったら正面からの顔に変わるか、というのである。柳瀬君が実験したが、むろんダメ。「認識できません」という表示が出る。いい大人が、なにやってんだろうね、本当に。

 それがどうしたかって、要するに虫採りに出られないということは、ヒマだということなのである。それでも十時過ぎには雨がやんで、出発できた。その日は松林で採集。

 二十九日も、天気は似たようなもので、松林を通って、近くのモン族の村方向へ行こうということになった。数は少ないが、ボチボチ虫が採れないわけではない。途中に湿原があるが、小さなもので、特別な虫はいない。ただカシの木に一本だけ、花が咲いていた。ここにカミキリ屋さんが張り付いてしまう。ともかくカミキリを能率よく採るのは、枯れ木の多い焼畑か、樹木の花なのである。トラカミキリ、コバネやモモブトの小さなカミキリは、花にたくさん集まる。

 新里君は花にしか、目をくれない。花があると、ただ一直線、花に向かって進む。その早いこと。アッと思うと、もう花の下に新里君がいて、網を花にかぶせて、カミキリを採っている。その後に池田君がやってきて、最後に伊藤君が来るというのが定番。最後は三人が交互に網を振ることになる。カミキリは次から次へと飛んでくるから、午前と午後に一回ずつ、などとやっている。

 私は花を掬っても仕方がないので、木の葉を叩きながら歩く。これは小島君と関東君の分野で、どちらも若いし、私とは力が違う。小島君の場合は、ブルドーザーが通過する感じである。私は医者が患者さんの胸を叩くように、コンコンと棒で木の枝を叩く。打診というやつである。小島君のは叩き落す。ゾウムシはしっかり枝についているから、力強く叩かないと、しばしば落ちないのである。

 イヌザンショウの小枝に、大きなアシナガゾウムシがついている。これも長い肢でしっかり掴っているので、目で見て採らないとダメ。打診したって、落ちるようなものじゃない。

 モン族の村に行く途中に、開けた湿原があって、そこの羊歯の塊を小島君が叩く。クチブトゾウが採れるという。ポンサヴァンのホテルの斜面と同じである。でもまさか羊歯とはネ。そう思ったが、現に採れるのである。数日後に、ムアン村の手前にある湿原に行った。そこで羊歯の塊を叩いて、クチブトを何種か採った。

ムアン村の手前の湿原で羊歯(シダ)をたたいて、ヒゲブトゾウムシをとる

ムアン村の手前の湿原で羊歯(シダ)をたたいて、ヒゲブトゾウムシをとる

 小島君のおかげで、樹葉だけではなく、草本につく種類がクチブトにはいくつもあるということを知った。専門家について歩いたおかげで、新しいことを学ぶことができる。自分だけでやっていたら、草原の羊歯の塊なんか、ほとんど叩かないに違いない。これまでクチブトは草にはつかないと、どこかで思い込んでいたのである。

 むろん考えてみれば、日本のヒゲボソゾウムシだって、イタドリなどについていることが多い。渡良瀬のハバビロヒゲボソなら、ヨモギについている。適当な葉なら、なんでもいいのである。湿原は木が少ないから、虫も仕方がないのであろう。

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「ラオス再訪 その5 ムアン村から、クチブトゾウムシをとりにいく」の著者

養老 孟司

養老 孟司(ようろう・たけし)

東京大学名誉教授

解剖学者/作家/昆虫研究家。1937年生まれ。62年東京大学医学部卒業後、解剖学教室へ。95年東京大学医学部教授を退官し、その後北里大学教授に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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