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第5回 英語教育60年の辿ったまわり道
~正解は戦後3年目に示されていた

  • 晴山陽一

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2008年6月23日(月)

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(前回「見えてきた『究極の英語学習法』」から読む)

英語ベストセラー本の研究

 私の新著『英語ベストセラー本の研究』(幻冬舎新書)をベースにして、英語の学習法について全6回の予定でお話をさせていただいている。

 5回目の今回は、戦後60年の英語教育が、いかに足踏みし、遠回りの道を歩んできたか、という話をしたい。

 すでに第3回(「英語で考える」ことは可能か?)で、終戦後3年目の1947年の春に、驚くべき内容の『指導要領(試案)』が発表された話をした。そこでは、英語教育の目標は次の4項に定められていた。

  1. 英語で考える習慣を作ること。
  2. 英語の聴き方と話し方を学ぶこと。
  3. 英語の読み方と書き方を学ぶこと。
  4. 英語を話す国民について知ること、特にその風俗習慣および日常生活について知ること。

 目標のトップに「英語で考える習慣を作ること」が挙げられているのも驚異だし、「聴き方と話し方」が「読み方と書き方」に先んじている点も注目に値する。少し長い引用となって恐縮だが、第1目標「英語で考える習慣を作る」の説明部分も見てみたい。

「英語を学ぶということは、できるだけ多くの単語を暗記することではなくて、われわれの心を、生まれてこのかた英語を話す人々の心と同じように働かせることである。この習慣(habit)を作ることが英語を学ぶ上の最初にして最後の段階である」

 ここでは、英語学習の目的は、単に言葉を覚えることではなく、ネイティブの考え方を学ぶことであることが示されている。これに続き、こんなことが書かれている。

「英語で考えることと翻訳することとを比較してみよう。前者は英語をいかに用いるかということを目的としているが、後者は古語を学ぶときのように、言語材料を覚えることに重点を置いている。前者は聴き方にも、話し方にも、読み方にも、書き方にも注意しながら英語を生きたことばとして学ぶのに反して、後者は書かれた英語の意味をとることにのみとらわれている。ここにおいて、英語で考えることが、英語を学ぶ最も自然な最も効果的な方法であることが明らかである」

ずっと進歩的な姿勢が示されていた

 ここで注目すべきは、英語を翻訳することは、古語を学ぶようなものだという主張である。たしかに「古語を学ぶ」のは、決して古語を使えるようになるためではない。以後の英語教育が「書かれた英語の理解」という方向に突き進んでいくことを予見したような記述に、私は驚くのである。

 これらの目標に対して、やがて日本の英語教育界は、「日本人が英語で考えるなど、どだい不可能な目標である」と根強い抵抗を示すようになっていく。しかし、頭から拒絶する前に「英語で考えるには、具体的にはどうしたらよいのか」を真剣に(制度的にではなく原理的に)探求する態度をとれば、その後の英語教育の混乱と低迷はずいぶん回避できたのではないだろうか。それほど、この試案の文章は理想と熱意にあふれているのである。

 私には、英語教育の目標について、実は60年前に立派な模範解答が示されており、以後の英語教育の迷走ぶりは、まるで駄々っ子のようにこの模範解答に対し逡巡し抵抗を繰り返してきた歴史のように思えてならない。試案第5章の、学級運営に関する次の文章を読む時、このような思いをさらに強くする。

「……このために、1学級の生徒数が30名以上になることは望ましくない。聴き方と話し方とが英語の第一次の技能であるから、生徒は、特に初期の課程においては、教師の話し方になれなければならない。こう考えてくると、中学校においては、1人の教師が1学級に少なくとも1年間専属することが望ましい。(中略)英語の学習においては、一時に多くを学ぶよりも、少しずつ規則正しく学ぶ方が効果がある。それで毎日1時間1週6時間が英語学習の理想的な時数であり、1週4時間以下では効果が極めて減る」

 ここでは1学級の生徒数は30人未満が望ましいこと、英語の授業時間は毎日1時間ずつ週6時間が至当であることが述べられている。のちに文部省(当時)自身が中学の英語の授業時間を週3時間とする指導要領を発表したのは、この試案が書かれたちょうど30年後の1977年のことだった。その後の「ゆとりの英語教育」の低迷ぶりは、あらためて説明するまでもないだろう(なお、上記の試案の引用は、稲村松雄著『教科書中心 昭和英語教育史』に拠っている)。

 日本の英語教育界の迷走ぶりは、具体的な教育方法についても見て取れる。ひとつ例を示そう。

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