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それなりに幸せな「格差社会」~『不平等国家 中国』
園田茂人著(評:中村正人)【奨】

中公新書、740円(税別)

  • 中村 正人

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2008年6月20日(金)

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不平等国家 中国 自己否定した社会主義のゆくえ

不平等国家 中国 自己否定した社会主義のゆくえ』園田茂人著、中公新書、740円(税別)

 今年で来日20年になる上海人がこんなことを言う。

「日本は中国よりずっと社会主義の国みたいだよねえ」

 高い経済成長を続ける中国に対し停滞する日本。そんな形勢の逆転に積年の在日生活の労苦が報われたと言わんばかりの口ぶりである。聞き流しておけばいいのだろうが、ひとこと言い返したくもなる。

「ちょっと待ってよ。そもそも中国は共産党の指導する社会主義国でしょう。格差と不平等がこんなに拡がっているのに、よく平気でそんなこと言ってられるねえ」

 呆れてたしなめると、一瞬苦々しい顔つきになり、「社会主義は過去のもの」とすぐに反論する。迷いはない。なさすぎる気もするが、無理もない。彼のような1980年代出国組は「社会主義」の閉塞感に焦りを感じて、若き日海外に出た。国家に頼らずひとりで生きてきたわけだ。そのぶん、この10数年の中国政府の数々の政策変更により(それは「革命」とも呼びうるものだ)生活保障の基盤を失い、「グローバル化」の最前線として競争を強いられる、いまの中国人が置かれた状況に同情の気持ちは起こりにくいのかもしれない。

 もっとも、この20年間彼は日本にいたわけで、政策の変化がもたらした負の側面を十分理解していないようにも見える。はっきりしているのは、景気のいい話は日本には少ない。ここ数年、出国組の成功者意識にも陰りが見えてきている。次々と帰国していく同郷の知人の噂を気にしながら、自分も帰国すべきかどうか思いをめぐらせるうちに、冒頭の言葉を深く考えもせず口にしてしまうのだろう。

進化して、過去へ向かう中国

 改革開放30年の歴史は、社会主義中国の格差と不平等の内実を大きく変えた。本書では、まず改革開放以後、新中国成立時の政策が180度転換となった経緯を概観。以降、学歴、都市と農村、ジェンダー、都市中間層をキーワードに不平等の背景が論考されている。

 著者は早稲田大学院教授で、中国の階層研究の第一人者である。1990年代から、中国では政治的に“敏感”なテーマを含むだけに実施の難しかったアンケート調査を中国人研究者と共同で進め、社会学者として激変する中国の階層意識や政治意識のありようについて、都市中間層の動向を中心に分析してきた。

 本書には数々の興味深い指摘がある。サブタイトルの「自己否定した社会主義」もそうだが、著者はこれからの中国社会を「過去へ進化する社会主義」と呼んでいる。

 改革開放に伴う市場経済化のインパクトは、中国を「過去へ」向わせている。激化する学歴社会は科挙による官僚選抜試験という中国の伝統との継続性を想起させる。かつての階級史観の衰退とともに、そこで選ばれたエリートの支配を国民が期待する姿もそうである。この国では自らの努力で獲得した学歴による高所得や権力が批判されることはない。その一方で、都市中間層に見られる情報リテラシーの向上と、それに伴う政治参加への拡大が進むという現代的な意味での「進化」の側面もあるという。

 都市中間層の成熟が中国の「民主化」をもたらすという、欧米や日本のマスコミにありがちな「期待」に対しても、著者は懐疑的である。理由として、中国の中間層の〈大きな変化を望まない保守主義的傾向〉をあげ、社会の安定のためには〈言論の自由が制限されても仕方がない〉と思っていることをデータに基づき論証している。

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牛島 信 弁護士