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ビジネス書を読まない人のビジネス書~『ビジネスに「戦略」なんていらない』
平川克美著(評:澁川祐子)

洋泉社新書y、780円(税別)

  • 澁川 祐子

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2008年6月30日(月)

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ビジネスに「戦略」なんていらない

ビジネスに「戦略」なんていらない』平川克美著、洋泉社新書y、780円(税別)

 成功したあの人は、どんな本を読んでいるのか──取材でしばしば、経営者に自身の読書について語ってもらうことがある。すると、見事にビジネス書を「読む派」と「読まない派」のどっちかに分かれる。「読まない派」のざっくりとした言い分は、過去のケースをなぞっても仕方ない、他人の成功譚は必ずしも現在の自分の状況に当てはまるとは限らない、というものだ。

 本書は、ビジネス書を「読まない派」によるビジネス書であり、「ビジネス書を読まない人間ならでは」のビジネス論が展開されている。

 著者は、翻訳会社の起ちあげから始まり、シリコンバレーで企業支援会社(インキュベーションカンパニー)を起こし、現在はビジネスカフェジャパンやリナックスカフェの設立者にして社長という、ゴリゴリのビジネス畑の人だ。一部で、現代思想の語り部・内田樹氏の幼なじみとしても知られている(なお本書の巻末には、内田氏と著者の共著『東京ファイティングキッズ』(朝日文庫)を再現したダイアローグもくっついている)。

 ビジネスの最前線に長らく身を置いてきた著者が、ビジネス書を読まないのはなぜか。それは、冒頭に述べたような「現実には使えないから」という理由もある。だが、それ以上に昨今のビジネス書に蔓延する「戦略的思考」に違和感を覚えてきたからだ。

〈ビジネスが社会の限られたリソースの奪い合いとして認識され、会社をその収益獲得機関として考えるビジネス観が支配的になってきました。奪い合いであれば、その最終形態は戦争です。(中略)いかにして戦争を有利に進めるか、そのためにはどのようなポジションをとるべきかといった戦略論議が、戦争であるビジネスに「勝利」する必須の条件になるのです〉

 「勝ち組」「負け組」という言葉が氾濫し、誰もが誰かを出し抜き、誰かに出し抜かれまいと戦略を練る。だが、ビジネスをそうした「勝ち」「負け」のゲームだと捉えてしまうのは、ちょっと違うんじゃない? それじゃビジネスの本当のおもしろさは語れないんじゃないの? という問いかけから、本書は始まる。

 戦略的思考がはびこった要因として、著者は「アメリカ発のグローバリズム」を厳しく批判している。

 1990年代半ばにアメリカではシリコンバレーバブルが起き、IT革命による経済のグローバル化が加速。その恩恵を受けて金融ビジネスが隆盛する。そうして海外から集まってきた資本を、今度はインドや中国など成長の著しい地域に投資して利益を回収する。著者が「経済帝国主義的な収奪システム」と呼ぶところのグローバリズムの成功は、アメリカに空前の好景気をもたらした(グローバル化は技術革新によって必然的に起こるもので、グローバリズムとは別もの)。

 かくして世界経済は、アメリカ主導の合理主義が優勢となり、いかに少ない労力で大きな利潤を生み出すかが企業の命題となっていく。社外では限られたパイを巡って我先にとシェアを奪い合い、社内では徹底したコスト削減に走る。そして、同様の戦略なき者は、敗者の烙印を押される。

ビジネスは言葉に頼らない、ハイレベルの「会話」である

 しかも国内を見渡してみれば、

〈少子化に伴う人口減少によって、ロングスパンで見た日本経済は大きなパラダイムシフトの時代を迎えています。つまり、経済が成長してゆく基本的な条件である総需要が縮小してゆくという事実です〉

 市場が縮小すれば、現在の戦略的思考のままで押し切ろうとしても、競争は泥試合と化すことは目に見えている。だから著者は、低成長時代を前にもう一度ビジネスについて考え直してみようじゃないか、と書かずにはいられなかったのだ。

 では、著者が考える「ビジネス」とは何なのか。

 本書では、〈モノやサービスを媒介とした高度な非言語コミュニケーション〉だと定義している。人は、はるか昔から自分の持っているモノを相手のモノと交換することを通じて、見知らぬ他者とのコミュニケーションをとってきた。その発展形がビジネスだという。

 なぜ高度なのかというと、〈ビジネスは一回半ひねりのコミュニケーション〉という、なんともまわりくどいものだからだ。

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