「デジタルエンタメ天気予報」

「才能の無駄遣い」がゲームビジネスを変えていく

「バンブラDX」に組み込まれた驚くべき仕掛け

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2008年7月11日(金)

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 「才能の無駄遣い」というフレーズがあります。

 これこそが、現在のエンタテインメント・ビジネスを読み解くための、もっとも大切なキーワードのひとつです。

 ご存じない方のために説明しますと、これは昨今のインターネットの世界における、最上級の褒め言葉のひとつ。ニコニコ動画に代表される動画再生サイトで、優れた作品(および、それを作った人)に対し、感謝の意を表すときに使われます。膨大な労力を使って作られた秀逸な作品に対し、ネットユーザーたちは「なんという才能の無駄遣い!」といった言葉で賞賛するのですね。

 このフレーズが、ごく当たり前のように散見できるようになっているという事実は、エンタテインメント・ビジネスに大きな衝撃を与え始めています。それは、ビジネスの根本を木端微塵にする可能性を秘めているからです。

 だって、そうでしょう? ユーザーがコンテンツを作り、それをユーザーが心から楽しんでしまっている。そこには、基本的には金銭のやりとりがありません。ただ「感謝の言葉」だけを代償として、「努力の結晶」がネット上に溢れ出していて、それを多くの人が納得しています。そこでは、プロの存在意義が、極度に薄まっていることが、おわかりになるでしょう。

もはや、いいソフトを作るだけでは時代遅れである

 これまでは、コンテンツを作るのはプロの仕事でした。「プロの作り手」が作品を生み出し、ユーザーを楽しませてきました。そしてユーザーは楽しんだことの対価として金銭を払っていたのです。小説もコミックも映画も、すべてのエンタテインメント商品は、だからこそビジネスとして成立していたといっていい。

 しかしいま、そんな常識は、音を立てて崩れ始めました。「感謝の言葉」さえあれば、無償でコンテンツを作る人たちが大量に出てきてしまったからです。

 デジタルエンタメの世界はその最先端。もはや「いいソフトを作れば、ユーザーは満足してくれる」という常識に甘えることは許されなくなりつつある。それは一般ユーザーが、世の中を楽しくするコンテンツを流通させる手段を持たなかった時代にのみ通用した、古い常識に過ぎないから、ですね。

 だから、昨今のゲームビジネスは、そんな時代に敏感に反応し、かつてない仕組みを用意し始めています。

 市場を眺めていると、いろいろな新しい仕組みを持ったソフトが登場しつつあることが確認できます。今回は、その中のひとつを、ご紹介しましょう。それが任天堂が6月26日に発売したニンテンドーDSソフト「大合奏! バンドブラザーズDX」です。

任天堂が用意した「ユーザーのための環境」とは?

演奏画面。1ボタンを押すだけで楽しめるモードから、全てのボタンを駆使する上級者モードまで完備している。音楽が好きなら、ぜひ体験してほしい1本。

演奏画面。1ボタンを押すだけで楽しめるモードから、すべてのボタンを駆使する上級者モードまで完備している。音楽が好きなら、ぜひ体験してほしい1本 (c)2004-2008 Nintendo

 ひとことでいうと、DSのボタンを押すことで音楽を演奏するソフトです。

 素晴らしいソフトです。音楽ゲームは数あれど、「音楽を奏でている」気持ちよさが味わえるのは、このソフトくらいのもの。1人で演奏するだけでなく、各パートを最大8人で合奏可能なのも嬉しい。全員の息がピタリと合い、素晴らしい演奏ができると、ああ、音楽って楽しいなぁ、と心から思えてきます。

 しかし、このソフトの真の凄さは、これが「ただの傑作ソフト」にとどまっていない点にあります。

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著者プロフィール

野安 ゆきお(のやす・ゆきお)

野安ゆきお

1968年生まれ。ファミコンの時代から、テレビゲームの関連記事・単行本の執筆に専念。製作に参加したゲーム攻略本・ゲーム関連書籍は100冊を超え、プレイしたゲームは1000本を超える。

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