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官任せの我々が生んだ『官製不況』
門倉貴史著(評:倉都康行)

光文社新書、740円(税別)

2008年7月10日(木)

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評者の読了時間1時間30分

官製不況 なぜ「日本売り」が進むのか

官製不況 なぜ「日本売り」が進むのか』門倉貴史著、光文社新書、740円(税別)

 株式市場が気になって仕方がないという人は、昨年来の日本株の低迷を何とも歯痒く思っていることだろう。「政府の政策がダメだから仕方ない」という諦めは、全国隅々にまで行き渡っている。一方で、株価にそれほど関心がない人も、「本日の日経平均は200円下がりました」なんてニュースを幾度となく聞かされれば、「日本経済はもはや一流でない」という、なんだか他人事のような大臣の声にも、特に違和感を抱くことはないのかもしれない。

 昨年、大きく下落した日経平均が世界のブービー賞を「受賞」したことが広く報じられて、「構造改革を停止した日本が、世界の投資家から見放された」という悲観論が一気に高まった。同時に、改正建築基準法や改正貸金業法といった一連の「規制強化」が、建築業界や消費者金融を直撃し、日本経済の基盤を崩してしまった、あるいは小泉流構造改革による格差拡大が、日本の経済構造を歪曲してしまった、などとする指摘も数多く出回った。

 やっぱり国が悪いのだ。政治家も官僚も、何も解っていない。だって年金問題ひとつとってもそうだろう。政治家はテレビに出れば改革が必要だなどと叫んでいるが、マトモな改革など何も無いではないか。官僚が悪いと啖呵を切ってみせる大臣も、結局パフォーマンスだけじゃないか。日本経済の低迷は「官製不況」なのだ--。ざっとこの1年間の世論を振り返れば、こんな展開になる。

 そんなおりだけに、「構造改革を不徹底に終わらせ、打つ手をことごとく外した『官製不況』が、外国人投資家の日本売りを誘う」という本書の主旨は読者の心にストレートに響くだろう。

 投資家への細かな注意喚起を義務付けた金融商品取引法は、「投資から貯蓄へ」の逆流を生み出しかねない。内部統制の徹底を求めるJ-SOX法は、コスト負担を増大させて競争力低下をもたらす可能性がある。改正資金業法による消費者金融の上限金利引下げは、結果的にヤミ金融を増大させるリスクがある……。

 本書はこうした様々な例を挙げて、官の制度設計に大きな問題が付随していることを指摘する。ワーキング・プアの増大に対しても、米国に追いつき追い越せという観念だけで戦後日本を指揮してきた行政は、戸惑うばかりで打つ手がない、と批判する。

 著者は、派手だった小泉改革にしてもどれだけ日本経済の活性化に有用だったのか解りにくい、とも述べている。特に郵政改革は「金融面」で見る限り、大山鳴動して鼠は数匹出た程度である。高速道路問題も、船頭多くして船が山に登ってしまったような雰囲気もある。

外国人投資家は「構造改革」など見ていない

 だが、現在の国会はねじれたままで、頼りなさは増すばかり。そんな政治体制を抱いたまま、「日本売り」を止めるにはどうすれば良いのだろう。

 著者は、ワーキング・プア問題に対しては欧州で注目される「ベーシック・インカム」つまり税収の一部を全国民に給付する制度を、また年金制度改革に関してはスウェーデン方式を引き合いに出して政府に制度設計再考を促している。だが、人口やその構成をはじめとして、日本とは大きな差がある国が採った政策が、本当に日本の経済実態に即した解決法なのだろうか。

 また著者は、「昨年以来の日本株下落は海外投資家が構造改革の中断に失望したことによるものだ」、と訴える。この指摘は解りやすいのだが、実は欧米の投資家はそこまで冷静に日本だけを細かく分析している訳ではない。昨年は中国やインドへの期待感から、アジア投資の枠内での単純なウェイト調整として日本株を引き下げたに過ぎない。世界市場を土俵にした運用とは、所詮「相対性の問題」なのだ。

 私見だが、海外投資家は本年、恐らくその反動として日本株を相対的に増やす傾向を強めてくるだろう。実際に、本年1-6月期の株価下落率が二桁を記録する国が続出している中で、日経平均は8.2%の下落に止まっている。官製不況こそが株価下落の責任だという説明は、実は問題の表面を撫で回しただけのものに過ぎないのではないか。現在の景気減速も本当に「官製」なのか、と疑ってみる必要はないだろうか。

 著者が本書でやってみせたように、政府に文句を付けたい気持ちは解る。だが、なぜ政治はこうも簡単に間違った方向に向かってしまうのだろうか。政治家や官僚の資質が乏しいからなのか。官僚はともかく、そうした政治家を選んだのは我々自身でもある。我々が選択を誤ったのか。とすれば、次回の総選挙で「間違えない政治家」を選ぶことは可能なのだろうか。

 多分、そうはならないだろう。以下は評者の考えだが、「官製不況」は起こるべくして起こったと思う。例えば、消費者金融問題を見ればそれが鮮明になる。

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「官任せの我々が生んだ『官製不況』
門倉貴史著(評:倉都康行)」の著者

倉都 康行

倉都 康行(くらつ・やすゆき)

RPテック代表

1979年東京大学経済学部卒業後、東京銀行入行。東京、香港、ロンドンに勤務。バンカース・トラスト、チェース・マンハッタン銀行のマネージングディレクターを経て2001年RPテック株式会社を設立、代表取締役。立教大学経済学部兼任講師。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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