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つまり自宅でサビ残しろってことですね?~『テレワーク』
佐藤彰男著(評:荻野進介)

岩波新書、700円(税別)

  • 荻野 進介

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2008年7月14日(月)

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テレワーク──「未来型労働」の現実

テレワーク──「未来型労働」の現実』佐藤彰男著、岩波新書、700円(税別)

 某外資企業に勤める知り合いが週に一度、在宅勤務をしている。昼の時間を除き、基本的に常時、パソコンの前で仕事をしていなければならないという制約はあるものの、片道1時間の通勤ストレスがないため、その日は土日とは違った意味の解放感があるという。一度経験すると止められなくなるそうだ。

 一般に、こうした働き方は「テレワーク」と呼ばれる。パソコンやモバイル機器を活用した、オフィス以外での仕事形態を指す言葉だ。

 駅や空港から電子メールを送る、行きつけの喫茶店で企画書を書く、好きな音楽をかけながら自分の部屋でパソコンに向かう……田の字型に机が並び、相互監視状態のオフィスから離れた、まさに21世紀の働き方というイメージがあるテレワークだが、気をつけて活用しないと、残業代無視の長時間労働になり、低賃金で搾取される現代の“蟹工船”状態に陥るかもしれない、と警鐘を鳴らすのが本書である。

 その根底に、勤務時間や仕事内容が他から把握しにくいという意味で、テレワーク=「不可視の労働」と捉える著者独自の見方がある。そういえば、家事労働に代表される、賃金の支払いを受けない労働を「シャドウ・ワーク」と名づけたのはウィーン生まれの哲学者、イヴァン・イリイチだった。

 著者によれば、一口にテレワークといっても、3つのタイプがある。ひとつは、冒頭で書いたような、企業の正社員が自宅でも働く「在宅勤務型」である。その推進に当たっては政府が懸命に音頭を取り、企業向けには税を優遇するなどしている。

 昨年5月に政府が発表した「テレワーク人口倍増アクションプラン」では、少子化・高齢化問題への対応、家族のふれあいやワークライフバランスの充実、地域活性化の推進、環境負荷の軽減、有能・多様な人材の確保など、テレワークによって生まれる8つのメリットが書かれている。著者によれば、これらのメリットがすべて実現するのはこの在宅勤務型に限られるという。

 しかし、政府が躍起になっている割に、なかなかその数は増えていないと著者は見ている。せいぜい活用されているのは、女性社員が子供の病気や家庭訪問に対応するために、申請した日の数時間だけ在宅で働く「不定期型」だというのである。

働きぶりが見えなくなる、事務処理の負担が増える

 著者の見るところ、在宅勤務型が広がらない理由は2つある。ひとつは、日本企業では一人ひとりの職務分担がきっちり決まっていないためだ。逆に、その切り分けが比較的容易な外資系ほど在宅勤務を取り入れやすいのかもしれない。

 もうひとつもまた日本的な要因である。多くの企業が人を評価する際、仕事に対する熱意や態度に重きを置きがちなので、在宅勤務を認めると、働きぶりが見えなくなる。つまり、労務管理が非常に困難になるというわけだ。

 一方、企業主導で、その数が増えているのが「モバイルワーク型」だ。営業系社員が自宅、移動中の乗り物の中や喫茶店、顧客先でも仕事をこなす、いわゆる「どこでもオフィス」である。上からの業務命令で、ある日を境に突然そうなることも珍しくない。

 ほとんどの営業社員がモバイルワーク型に移行したある企業の社内調査によれば、顧客満足度の上昇、生産性の向上、オフィスコストの削減といった利点があがっているという。

 そういうプラス面を強調した調査も参考にしつつも、マイナス面も忘れてはならじと、著者は、営業所の全廃という大胆な施策の結果として、部門全体が「どこでもオフィス」化した中規模製薬会社に勤務するMR(医療情報担当者)へのインタビューを紹介する。

 毎日の勤務は結構忙しい。10時間の通常勤務の他、毎日2時間を超える事務処理を自宅で行っているが、それでも足りないので休日もあてている。営業所がなくなり、以前は事務職員に任せていた事務処理を自分で行わなければならなくなったのがきっかけだが、原因は他にもあった。最近、同僚が出先でパソコンを盗まれる事件が起き、「自宅と職場以外の場所で、パソコンを使うな」という指令が会社から発せられ、移動中の車内や喫茶店で行っていた事務処理ができなくなってしまったのだ。

 著者のインタビューを受けたこの社員は、今の仕事については、「裁量性が高く自分のペースで仕事ができる」という意味でプラスにとらえている。しかしその一方で、同僚と顔を合わさないため、会社勤めの実感が薄れ、「自営業か請負業として働いている気持ちだ」とも話す。

 こうした状況を踏まえて、モバイルワークによって生活と仕事の境目が曖昧になり、残業代も支払われない長時間労働に陥っていく危険性を著者は指摘する。

 在宅勤務型、モバイルワーク型に続く第三のタイプが、「育児や家事の合間に少しでも稼げるならば」と、家庭の主婦が主に取り組んでいる「在宅ワーク型」である。

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