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『バカポジティブ』関根勤著、ヴィレッジブックス新書、740円(税別)
「お前はスタミナがないから負けるんだよ!」
と言われるのと、
「お前のパンチ力はとんでもないほどある! しかし、世の中にはよけるのがうまいヤツがいてなぁ。そいつに当てるためには、スタミナをつけることだ。そうすれば絶対イケる!」
と言われるのでは、あなたがもしボクサーだとしたら、どっちがやる気になるだろうか。
走ったり、縄跳びを繰り返すのがめちゃくちゃ好きだという選手はいないだろう。ひとをやる気にさせるのは厄介なことだが、いつも傍らにいてくれる人のちょっとした言葉で、やる気になったり、その気をなくしたりするものだ。
著者の関根さんは、名伯楽として知られるトレーナーのエディ・タウンゼント氏の話を紹介しながら、やる気の引き出し方について語っている。
〈僕は、ガツンと頭ごなしに言われるとヘコんでしまうほうだし、世の中にはそういう人のほうが多いんじゃないかと思う。だからね、欠点はホメて直すのがいいんじゃないかな〉
エディ・タウンゼントの話を知って関根さんは、後輩に接するときにも「欠点をホメて直す技術」を使うようになったという。
本書は、ジャイアント馬場や千葉真一のものまねで知られる著者による、自伝ふうの人生の心得帳だ。とはいえ、破天荒なことが書かれているわけではない。
自分が言われたらイヤなことは、他人には言わない。
失敗したときには誠心誠意、謝る。
相手が誰であれ、挨拶は自分の方から元気よくする。
書いてあることは、どれも、いたって常識的で納得しやすい。しかし、関根勤が言うからこその説得力がある。
家庭について語るときにも、毎日過剰にエッチな妄想はするけれど、浮気はしない。「子どもを健全に育てたいなら、いつも奥さんに感謝の一言を!」だなんてマジメぶりは、さすが「ベストファーザー賞」に選ばれるだけのことはあるぞ。
人に好かれたければどうすべきか?
まるで危険なニオイがしない。いや、しなさずきる。芸を売る人間が、こんな常識人でいいのかと余計な心配をしてしまうくらいなのだが、いやいやどうして、著者が座長を務める劇団では、テレビではお見せできないオゲレツなエロネタなどナンセンス芸を売りにしている。そして、自ら「裏関根」と認めるほどの毒舌家でもある。
そうだよな。好感度100%「一緒にいて心地よい」だけのオトコって、逆にキモチ悪いよな。誰だって、言うとあまりにせこくて、なさけなくて、腹のなかに溜め込んでいるイヤーな面を併せ持っているものだよな。
たとえば、デビュー10年目のある日のテレビ局。芸能界に入ったばかりの女の子が個室を与えられているのに、自分は大部屋の楽屋で思わずカチンときたとか。雑誌の4コマ漫画で「面白くないのにテレビに出続けているラビット関根」と書かれてオチこんだりしたことなど、あるものはあるんだと、取り繕わずに綴っている。
〈僕がチャンスをつかめたのは「スタッフウケがよかった」ということがあったからだと思います。(中略)才能に溢れていても、現場のスタッフに嫌われて消えていった人を、僕は何人も知っています。逆に、それほどスバ抜けた才能がなくても、人に好かれ、支えられて徐々に実力を発揮し、成功した人もたくさん知っています。そしてこれは、芸能人だけに言えることではないと思います〉
人に好かれるのも才能だ、と著者は言う。では、好かれる人間になるコツとは何か。
「いつも一生懸命」
思わず、ワタシは付箋を貼ってしまった。
おべっかなど使わない。裏表なく実直であれば、その振る舞いをこっそり見ている人がいるものだという。
ある意味、誰もが感じる「人並み」な目線、自分を過大にも過小にも扱わない、等身大の「自分」に対する視線こそが、彼が芸能界で長く鮮度をたもってこられたヒケツなのだろう。
少しでも目立ちたい。芸能人に限らず、テレビに出る人なら誰もが思っていそうなものだが、著者が経験によって掴んだのは、全体のバランスを見て、前へ前へでなく「後ろに引く」というワザだ。
でしゃばりな人間をテレビ越しに見ていると、うっとうしく思う。関根勤がタモリやさんまなどに重宝されるのも、視聴者の目を察し、番組の中での自分の役割が掴めているからでもある。言うまでもないことだが、人に「好かれる」には、なにも愛想だけよければいいというわけではない。
たとえば「自意識過剰」について、関根さんはこんなエピソードをあげている。
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