今回お話を伺った国村次郎さんは、50年にわたって新幹線の顔の部分を作り続けてきた板金職人だ。微妙な曲面をハンマー1本で打ち出して作り上げていく技を見せていただいた。その打ち出しの原理を初めて理解して、ある種の戦慄を覚えた。
仮にコンピューターを使って制御したとしても、きわめて複雑な計算が必要になる作業を、国村さんは瞬時に、いとも簡単にやってのける。うまくいっているときは無心の状態で、余計なことを考えるとかえってうまくいかないと国村さんはおっしゃっていた。
意識では追いつかない自動化された高度な能力。ハイデガーもそういうことを言っている。ハンマーを振るっていてうまくいっているときは無意識で、打ちそこなうと初めてそこで意識が立ち上がるといったことだ。
だから職人は無口なのだと思った。これだけ複雑な計算をしているとしゃべっている暇はない。この複雑な計算を意識的にやろうとするとすごく大変なことだが、熟練すると無意識のうちにほとんど自動的に脳がやってくれる状態になる。それは無我の境地で、変に意識するとかえって作業の邪魔になる。
僕は、どんな職業にも職人的な要素があると思う。非常に高度な計算を無意識のうちにやっている領域だ。例えば、人間関係においても阿吽の呼吸や暗黙の了解といったことが、できないやつはダメだ。
国村さんは、若い職人を指導するときに、たとえ失敗して製品にならないとしても、とにかく最後までやらせる。脳科学的に言うと、最後まで完結して初めて強化学習が成立する。最後まで仕上げないと学べないことがある、というのが非常に大事なことだ。
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NHK総合テレビ
7月22日(火)午後10:00〜10:45
・再放送
総合 毎翌週火曜 午前1:00〜1:44 (月曜深夜)
BS2 毎翌週水曜 午後5:15〜5:59
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日本が世界に誇る超特急、新幹線。その新幹線の「顔」を半世紀にわたり、作り続けてきた職人がいる。
瀬戸内海を望む山口県下松(くだまつ)市にある従業員わずか13人の小さな町工場、そこで日々、ハンマーをふるう板金職人・国村次郎(64)だ。
初代0系新幹線から700系新幹線に至るまで、新幹線の先頭車両の製造に関わってきた。
17歳からこの世界に飛び込み、小さな町工場で腕を磨き続けてきた板金職人、国村の流儀は、「出来ないとは言わない」。
列車の高速化に伴い、その先頭車両には、空気抵抗を減らすために、複雑で難しい曲線加工が求められる。
しかし国村はメーカーからのどんな高度な要求にも、知恵を絞り方策を編み出す。
国村は、今年64歳、日々、職人として現場にたち続ける一方で、後に続く職人の育成に力を注いでいる。
去年、この工場に入社した10年ぶりの新人に、「打ち出し板金」を一から教え込むという。入社半年の新人に
「打ち出し板金」をさせるのは異例のことだ。果たして技と心は伝わるか。
60歳を超えた今も、現場にこだわり続ける板金職人・国村の日常に密着、その揺るぎない職人魂に迫る。
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茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)
1962年、東京都生まれ。東京大学大学院卒業。「クオリア(感覚質)」を手がかりに、脳と心の謎に挑む新進気鋭の脳科学者。現在、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。
毎回、1つの分野で超一流の仕事をしている人物を追うNHKのテレビ番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」。キャスターを務める脳科学者の茂木健一郎氏が、番組を通じてその人物から受けた刺激をさらに深く考察して語るコラム。
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