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ボッタクリ経済に物申す『貧乏人の逆襲!』
~でも、勝手に生きるには知恵がいる

2008年7月23日(水)

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貧乏人の逆襲! タダで生きる方法

貧乏人の逆襲! タダで生きる方法』松本哉著、筑摩書房、1200円(税抜き)

 最近のJRをはじめとした駅の構内および周辺施設のデパ地下化というか、「オサレ」具合の拍車の掛かり方、必死さは目に余るものがある。

 とはいっても、ツルピカな外装に思わず怯んでしまう自分がいるのだが、何のことはない、幽霊の正体見たり枯尾花だ。身も蓋もなく、すべてのメッセージは「つべこべいわず金を落とせ」に収斂されるわけだから、表向きが華やかな分、下品に思えて仕方ない。

 そういえば、故青島幸男氏が東京都知事だった95年、都は新宿西口の地下道に「歩く歩道」と奇妙なトゲトゲのオブジェをこしらえたけれど、あれがまだ人間的だったなと思えるのは、明確に「これはスラムクリアランスである」という意志がうかがえ、「ホームレスはここに居着くな」という威嚇が露骨に見えたからだ。まだ抗議する人がいたし、抗議の余地はあった。

 がしかし、人いきれと雑踏と酸い臭いに満たされていたかつての場末やガード下ですら、こぎれいなカフェだのブティックだのがのさばり徘徊している。

 このオサレ帝国主義をなんと言うべきか。松本哉はこう喝破する。「ボッタクリ経済」と。

 松本は高円寺を根城にした「素人の乱」というリサイクルショップやカフェ、インターネットラジオを包括した「貧乏人がのさばって生きていく」ムーブメントの立役者だ。

 「ボッタクリ経済」は狡猾にあの手この手でいろんな物を買わせるために人々をせき立てる。企業に接続した労働こそが正しいと囁く。

 なんのことはない。そのサイクルは〈仕事に追われて生活が乱れて健康器具を買い、職場に向かう満員電車で快適に音楽を聴くためにiPodを買う〉といったように、際限のない消費を目的とするために生きさせようとする。

 こうした経済のカラクリは生活の隅々まで及び、人の身体まで律している。

〈公園のベンチでは横になれないように変な手すりができてて昼寝もできないし、駅の待合室はなくなって、いつの間にかスターバックスになっている。(中略)千葉か埼玉あたりのシケた住宅地に30年ローンでマイホームを買って、最後の退職金を費やして、てめえの墓を買ってそこに入るという、死ぬ頃にはキレイさっぱり金がなくなっているような生活〉

 こうした物言いに思い当たる節はあっても、むしろそれだけにムッと感じる人もいるかもしれない。

社会を変えるなんて、さらさら思ってませんね

 だが、正社員とて安穏とは暮らせない世の中だ。がんばって働いているのに、交通事故死は減っても、経済苦だ鬱だ過労だと年間の自殺者が3万人。この死者数は、ちょっとした内戦規模ではないか!

 こんなただならぬ事態に気付くと、松本が語るように、金がなければ暮らしていけないサイクルの片棒を担ぐことと、そこにのっかれない貧乏人との違いは、「優秀な模範囚か問題児の囚人」程度の差でしかないことに考えが及ぶはずだ。

〈本当の「勝ち組」はちょっと仕事を休もうと、何年もなんにもしなくても、自然と金が舞い込んでくるシステムを作っている奴らのことだ〉

 しかしながら、このような松本の指摘は何も目新しいものではなく、労働運動に勤しんでいた人やラブ&ピースを唱えるヒッピー世代から聞いたことがあるはずだ。清貧に暮らす本だって売れたことがある。

 そういった従来のメッセージとの決定的な差は、松本は「貧乏人が勝手にのさばって生きていく」ことに終始することで、そこから一歩も踏み外さないことだ。それが偉いわけでもなく、また誰もが目指すべきものでもないことは松本も承知の上。

 だから、地域ぐるみ、貧乏人ぐるみの自給自足空間を提唱しても、あくまでそれは「マヌケエリア」であり、コミューンなどと呼ぼうものなら〈そんなに立派なものではない。もっと適当な江戸時代の町人級のマヌケな社会だ!〉と特別な価値をつけようとしない。

 松本は高円寺で物を安く回し、自前のメディアをつくり、自前の遊び場をこしらえ、自活の場を広げている。

 その一方、駅前の駐輪場のスペースを商業施設にしておきながら、止めた自転車を軒並み放置自転車として撤去し、撤去料をボッタクる行政に怒り、「高円寺ニート組合」という思いつきの脱力を誘う団体名で「俺のチャリを返せデモ」を起こし、アジる。

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