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等価交換を突き抜けてこその「ホスピタリティ」~『旅館再生』
桐山秀樹著(評:澁川祐子)

角川oneテーマ21、686円(税別)

  • 澁川 祐子

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2008年7月30日(水)

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評者の読了時間2時間15分

旅館再生──老舗復活にかける人々の物語

旅館再生──老舗復活にかける人々の物語』桐山秀樹著、角川oneテーマ21、686円(税別)

 「ホスピタリティ」という言葉はやっかいだ。“おもてなしの心”とでも訳せばいいだろうか。接客業の心得を説く本には、必ずといっていいくらい「ホスピタリティ」が登場する。だが言うは易し、行なうは難しである。なぜなら「ホスピタリティ」はマニュアル化されてしまった途端、その効力を失うからだ。

 人によって「心地いい」と感じる接客は、千差万別。あれこれ話しかけられるのが好きな人もいれば、放っておいてくれるほうがありがたいという人もいる。相手のかゆいところをさりげなく察知して、気配りする。昨今の美容院じゃないが、「かゆいところはないですか?」なんてやたらに聞いてはいけないのだ。そこで求められているのは、並々ならぬ洞察力である。

 本書は、当の「ホスピタリティ」が頻出する本である。

 ここ数年、老舗旅館の倒産や外資による買収などのニュースが後を絶たない。本書によると、「現在、日本で営業している旅館の9割以上が慢性的赤字、もしくは経営不振に陥っている」らしい。なぜ多くの老舗旅館が苦境に立たされているのか。本書は、その経営上の問題点を指摘すると同時に、日本旅館のこれからのありかたを問う。

 著者は、『ホテル戦争──「外資VS老舗」業界再編の勢力地図』(角川oneテーマ21)をはじめ、旅やホテルに関する著作が多いノンフィクションライター。日本の旅館のみならず、海外のホテル事情にも通じている。

 そんな著者いわく、現在の日本旅館が衰退したのは、経営者側が、「顧客重視」ではなく「生産者重視」に走ったからだという。昔ながらの旅館では、仲居さんによるきめこまやかな配慮が行き届いていたのに対し、質より量を求めたがためにサービスが固定化され、お客の満足度が下がってしまったというのだ。

施設だけでは再生できない

 一方、海外の有名ホテルチェーンの数々は、昔ながらの日本旅館の居心地のよさを高く評価し、そのホスピタリティに学ぼうとしているという。旅館が海外のリゾートホテルの華美な施設を追い求め、海外のホテルが日本の老舗旅館のもてなしを実現させようと努力している。このあべこべな状況を前に、著者はいまこそ日本の旅館も「原点」に帰るべきではないかと主張する。

 本書には、経営難を機に方向転換し、息を吹き返した旅館の例がいくつも紹介されている。それらの立地条件や生い立ちはさまざまである。にも関わらず、苦境に陥った経緯は驚くほど似通っている。簡単に言ってしまえば「温泉ブームに乗って施設を拡大→過剰な設備投資を繰り返す→バブル崩壊で団体客の激減→新規顧客を開拓できぬまま負債だけが残る」といった塩梅だ。

 家業の老舗旅館の建て直しに成功し、現在では経営破綻したリゾート施設の再生ビジネスに乗り出している株式会社星野リゾートの社長・星野佳路氏は、

〈不良債権の多くは、経営者が過去の成功経験と専門的直感に頼り、過大投資を繰り返す『感覚的経営』が原因であることを知った。つまり、ハードを作れば客が来るだろうというなりゆきで採算を立てる『なりゆき主義』だ。それを改めねばと思った〉

 と語る。星野氏が追求したのが「どうやったら寛げるか」というソフト面の充実だった。

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