• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

ネット悪玉説にモノ申す~『ネットいじめ』
荻上チキ著(評:後藤次美)

PHP新書、740円(税別)

  • 後藤 次美

バックナンバー

2008年7月29日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

評者の読了時間4時間25分

ネットいじめ──ウェブ社会と終わりなきキャラ戦争

ネットいじめ──ウェブ社会と終わりなきキャラ戦争』荻上チキ著、PHP新書、740円(税別)

 梅田望夫氏の『ウェブ進化論』がベストセラーとなり、「web2.0」なる言葉が華々しく乱舞した2006年とは対照的に、2007年はウェブ社会の負の側面に注目が集まった1年だった。なかでも「学校裏サイト」は、具体的ないじめ事件とも重なって、マスコミがこぞって取り上げたことは記憶に新しい。

 しかし、その語り口は、あたかも示し合わせたかのような画一ぶりを呈していた。要するに、ケータイやインターネットのせいで、子供がおかしなことになっている、という論調だ。例として、本書に紹介されている新聞記事を一つ挙げてみよう。

〈「顔」の見えないネット社会は暴走が止まらない。文科省の調査で「学校裏サイト」は三万八〇〇〇件もあり、抽出した半数に他人を中傷する表現があった。現代の子どもたちの荒廃した「裏の顔」が透けて見える〉(毎日新聞二〇〇八年四月十六日夕刊)

 こんな記事を読んだら、「ウチの息子/娘は大丈夫かしら」と親は焦るだろうなぁ。でも、学校裏サイトに向けられる、上記のような不安言説は事態を正確に射抜いているのか。

 気鋭の若手ネット論客として知られる著者の答えはノーだ。

 実際にサイトを利用している学生たちへの取材やさまざまな統計データから、学校裏サイトの実態について、著者は次のようにまとめている。

〈学校勝手サイトの継続利用率は全体的に低いこと、学校勝手サイトの主目的は情報交換や交流などであり、「悪口」を目的として掲げている者は相対的に少ないこと、学校勝手サイトのすべてが「裏化」しているわけではないこと(中略)学校や保護者らは現状を把握できず、具体的な「指導方法」が浮かばずに手をこまねいていることなどが確認できる〉

※著者は、「学校裏サイト」というネーミングがもたらすネガティブ・イメージを避けるために、「学校勝手サイト」と呼んでいる

ネットはいままでもあった「いじめ」を可視化する

 誤った現状認識のもとでは、有効な解決手段も見出せない。著者が繰り返して指摘しているのは、「ネットいじめ」をネットだけの問題として語ることの危うさである。

〈特にここで注目したいのは、これまでも多くのいじめが生じていたはずなのに、あたかもいじめがインターネットという技術によって生じているかのような語りが目立つことだ〉

 そう、多くの学校裏サイト論者は、ネットが「関与」していることと、ネットが「原因」であることとを混同し、「ネットいじめ」をネットの問題に狭小化してしまっている。つまり、しかめっ面でケータイの弊害を憂うヒョーロンカのおじさん達は、ネットの弊害ありきで問題を見るあまり、現実のコミュニケーションの手当てという発想に至らないのだ。

 そんなネット悪玉説を垂れ流すだけの学校裏サイト関連本のなかで、本書が出色なのは、「ネットいじめ」を現実の学校空間や人間関係に立ち戻って分析している点だろう。つまり、ネット論としてではなく、いじめ研究から「ネットいじめ」を捉えようというわけだ。

 著者は、ネットいじめの多くは、現実に生じている人間関係やいじめの構造がウェブを通じて可視化されたものだと看破する。

〈「裏化」している学校勝手サイトでは、個人を特定したうえでの誹謗中傷や煽りなどを多数観察することができる。教師、クラスメイト、先輩、親、部活仲間。攻撃の対象は多くの場合、学校空間で「切れない」相手に対するストレスから発せられたもののようだ〉

 とどのつまり、ケータイを使用禁止にしたって、いじめは起きる。したがって「ネットを使わせなければよい」という処方箋は、いじめそのものを防ぐための有効な解決策にはなりえない。

 学校勝手サイトには、学校での人間関係やコミュニケーションを可視化する機能があるとすれば、それをふまえた処方箋が提出されなければならない。

 では、最近盛んに議論されている、フィルタリングによる閲覧制限という処方箋はどうか?

コメント1

「NBO新書レビュー」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック