「茂木健一郎の「超一流の仕事脳」」

自分の仕事に身を捧げ尽くす

宮崎駿のすべて 〜「ポニョ」密着300日〜

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2008年8月5日(火)

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 映画監督・宮崎駿さんの基本的な考え方は、「子供」が最高の存在で、大人になるに従ってつまらない存在になっていくというものだ。老荘思想でも5歳くらいの子供がもっとも完成されているといった考えがある。子供には「いま、ここ」しかない。余計な知識や理屈ではなく、「いま、ここ」の何かをつかむ。それが宮崎さんの創作の原動力になっているのだと、つくづく感じた。

 こんなエピソードがある。知人の子供が遊びに来たとき、いろいろ案内してあげて、帰りに駅まで車で送ってあげた。そのとき「そうだ、こういう子供はサンルーフを開けてあげると喜ぶだろう」と思ったとき、ちょうど雨が降ってきた。

 そのとき開けてあげなかったことを宮崎さんは、とても後悔していた。大人のように、サンルーフを開けると、シートが雨で濡れてしまうといったことは、子供にはないからだ。子供には「いま、ここ」しかなく、次に会ったときにはその子は今とは違う子になっている。

 宮崎さんは子供のころ、自分が生まれてきたことに対する罪の意識、自分は存在していいのだろうかという気持ちを持っていたと言う。今でも自分は人を喜ばせることによって、ようやく存在してもよいのだと認められる、そういう気持ちを持っていらっしゃる。

 亡きお母さんに対する思いと、自分自身の存在論的不安のようなものが、宮崎さんを突き動かしている。今回、それが少し垣間見えて、クリエーター魂の凄さを感じさせた。

 宮崎さん自身もおっしゃっていたが、創作に取り組んでいる間は、まさに「映画の奴隷」になっている。名誉やお金といったものではなく、映画という芸術に対する献身である。何か大きなものに対して宮崎駿という人間が身を捧げている。そう強く感じた。

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ハンマー一代、新幹線を作る
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NHK総合テレビ
8月5日(火)午後10:00〜11:28(放送時間を拡大します)
 映画監督・宮崎駿(67)の4年ぶりの新作「崖の上のポニョ」が7月に公開される。
 宮崎自身が「最後の長編」と語る、宮崎アニメの集大成ともいえる作品だ。

 「プロフェッショナル仕事の流儀」では、去年3月、映画の構想準備段階の密着ドキュメントを放送した。
 番組はその後も密着取材を続行、2年間、のべ300日にわたって宮崎駿の創作の現場を記録し続けてきた。

 番組では宮崎がヒロイン「ポニョ」などキャラクターに思いを寄せ、徐々に成長させてゆく独特の手法をはじめ、密着カメラだけが知りえた宮崎アニメの秘密を徹底的に解明する。映画作りが大詰めを迎えるなか、宮崎が見せた涙。これをきっかけに映画は予期せぬエンディングへと向かってゆく。カメラは映画誕生のドラマを克明にとらえた。

 また、これまでほとんど語られることのなかった宮崎駿の半生を取材。原点とも言える幼少期の体験から、 過去の苦悩や挫折まで、知られざる人間・宮崎駿の歩みにも焦点を当てる。

 宮崎アニメの名場面を多数おりこみながら、映画監督・宮崎駿の秘密に徹底的に迫る88分の夏休みスペシャル!


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著者プロフィール

茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)

茂木 健一郎

1962年、東京都生まれ。東京大学大学院卒業。「クオリア(感覚質)」を手がかりに、脳と心の謎に挑む新進気鋭の脳科学者。現在、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。



このコラムについて

茂木健一郎の「超一流の仕事脳」

毎回、1つの分野で超一流の仕事をしている人物を追うNHKのテレビ番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」。キャスターを務める脳科学者の茂木健一郎氏が、番組を通じてその人物から受けた刺激をさらに深く考察して語るコラム。

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