• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

国民食にまで育てたのは誰?~『カレーライスの謎』
水野仁輔著(評:清田隆之)

角川SSC新書、760円(税別)

  • 清田 隆之

バックナンバー

2008年8月5日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

評者の読了時間3時間00分

カレーライスの謎──なぜ日本中の食卓が虜になったのか

カレーライスの謎──なぜ日本中の食卓が虜になったのか』水野仁輔著、角川SSC新書、760円(税別)

 大学生のとき、留学生のインド人にカレーを作ってもらったことがある。数名の友人とともに彼の家を訪れ、調理するところから見せてもらった。トウガラシやニンニクを油で炒め、そこに鶏肉や豆、野菜などを刻んで入れる。キッチンにはたくさんのスパイスがあり、それを順次パラパラ加えていくと、ある瞬間、突如カレーの香りが漂ってきた。

「あっ、カレーになった!」

 カレーといえば、ニンジンやジャガイモなどの具を炒めたり煮込んだりした後、市販のカレールウを入れて完成──そんなシンプルな料理をイメージしていた僕にとって、これは新鮮な体験だった。

 本書の著者は、男性7人組の出張調理ユニット「東京カリ~番長」の調理主任。年に100種類以上のカレーを作るという専門家だ。元来インド料理の一部であった「カレー」が、どのようにして日本に渡り、現在のような「国民食」と呼べるまで成長したのか? 著者は、カレーの歴史をひもときながら “謎”に迫ろうとする。

 日本人とカレーの出会いは1860年代にまでさかのぼる。幕末の世に、フランスへ渡った遣欧使節団のひとりが船のなかでインド人の食事を目撃し、「芋のドロドロのような物を飯にかけ、手づかみで食べている。至って汚いものだ」というような観察記録を残している。

 カレーの伝来に関しては、かのクラーク博士が伝えたという説など諸説あるが、さしあたっては、横浜港周辺に住む欧米人から広まったという説が有力だという。1886年には一般的な婦人向け雑誌にカレーのレシピが紹介されており、そのころまでに徐々に浸透していったという見方が正しいようだ。

 だが、ここで重要なのは、カレーは誰から、あるいはどこの国から伝わったかということよりも、「何料理」として日本に入ってきたか、である。

〈考えてみてほしい。「カレー=CURRY」はアルファベット表記なのである。そもそもヒンズー語を公用語とするインドに、アルファベット表記のCURRYが初めから存在していたわけではないことは明白だ〉

カレーはイギリスの“発明品”

 14~15世紀、西欧諸国はシルクロード経由でアジアとのスパイス貿易を行っていたが、いわゆる「大航海時代」を経て、それはインド支配をめぐる争いへと発展する。1600年にイギリスが「東インド会社」を設立し、それにオランダとフランスが続いた。この西欧諸国によるアジアでの覇権争いは、最終的にイギリスによるインドの植民地化という形で決着がつく。

 この過程において、インドのあちこちで食べられていたスパイス料理に「CURRY」という総称がつけられたようだ。ちなみに、その語源には、ヒンズー語の「香り高くおいしいもの」を意味する「ターリー(turri)」説や、タミール語の「ソース」を意味する「カリ(kari)」説などがあり、はっきりしたことはわかっていない。

 インド利権を勝ち取り、様々なスパイスを自国に持ち帰ったイギリス人は、そこで独自のカレーを発明する。C&Bという食品会社が、その都度スパイスを混ぜ合わせる手間を省き、簡単にカレーを作るためのアイテム、すなわち「カレー粉」を商品化したのだ。

 こうしてカレーはイギリスから徐々に国際化していき、その流れで日本にも伝わってきたようだ。

 日本で初めてカレーが登場するのは、1872年に発行された『西洋料理指南』というレシピ本だ。ここで紹介されているカレーは、具材に「アカガエル」などとあり、現在の一般的な日本のカレーとは少々姿は異なるが、注目すべきは「カレー粉」を用いている点だ。

「インド式カレーはスパイスを調合するものである。イギリスでカレー粉は作られた。だから、カレー粉を使ったカレーというだけでインドではなく、イギリスから入ってきた調理法だろうと思われる。国産品など当然のことながらまったくない時代、カレー粉というとイギリスのC&Bのそれを指した」

 本書と同じようなテーマを追求した『カレーライスと日本人』(講談社現代新書)において、著者の森枝卓士はこう述べている。カレー伝来に関するはっきりした定説はないものの、イギリス経由の「西洋料理」として入ってきたことは確かなようだ。

 そしてここから、カレーは食品メーカーの「プロジェクトX」的な努力によって“大衆化”の道を歩むことになる。

コメント0

「NBO新書レビュー」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

機械を売るんじゃなくて、電気が欲しい方に電気が起きる装置をソフトも含めて売るビジネスをしていこうと。

田中 孝雄 三井造船社長