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遺伝子は生物の設計図である──○か×か?~『遺伝子がわかる!』
池田清彦著(評:山本貴光)

ちくま新書、760円(税別)

  • 山本 貴光

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2008年8月6日(水)

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評者の読了時間3時間10分

遺伝子がわかる!

遺伝子がわかる!』池田清彦著、ちくま新書、760円(税別)

 昨今、遺伝子やDNAという言葉をあちこちで耳にするようになった。生物の遺伝に関係していることはわかるけど、ではどこまで正しく理解しているだろう。ちょっとクイズに挑戦してみてほしい。

  • DNAを発見したのはワトソンとクリックである
  • DNAは遺伝子の別名である(両者は同じものである)
  • 遺伝子は生物の設計図である
  • 人が浮気をするのは浮気遺伝子のせいである

 このなかで正しいのはどれか。

 本書は、俗説も多く誤解の罠があちこちにある遺伝子について、生物学の専門家が案内してくれるものだ。現時点でわかっていることやまだ不明の点、科学者たちのあいだで議論がなされていることを踏まえて、遺伝のメカニズムはもちろんのこと、病気や性といった身近な事柄と遺伝子の関係や、生物の死や進化といった大きなトピックまで幅広く取り上げている。

 ちくまプリマー新書というと、中高生を主なターゲットにした新書だと思われるかもしれない。だが、油断しているとわけがわからなくなるページも少なくない。といっても、文章や説明が下手だからではない。著者ならではのざっくばらんな文体は本書でも健在で、込み入った話をひょいひょいとさばく手並みは相変わらず鮮やかだ。

 難しいことがあるとすれば、そもそも遺伝子やそれを内蔵している生物のしくみそのものが相当複雑であることに原因があるだろう。著者はその複雑なものの精妙さを損ねてしまうことなく説明しているのだから、読み手にもそれ相応に丁寧な読解が要求されるというわけだ。

遺伝子はDNAだけど、DNAは遺伝子とは限らない

 さて、遺伝子である。遺伝とは、生物において親から子へ、個体の形や性質が伝わることだ。親と子では似ている点もあるが、かといってまったく同じというわけでもない。いったいぜんたいどういうしくみで形質が伝わるのか。遺伝子とは、この遺伝をつかさどっているなにものかのことだ。

 という話を聞くと、生物の教科書に登場したメンデルの話を思い出すかもしれない。19世紀にエンドウを使って粘り強く遺伝のしくみを考察したオーストリアの修道士だ。彼は、エンドウが親から子へ形質を伝えるなにかを「エレメント」と呼んだ。つまり、エンドウが丸い種子になるかしわの寄った種子になるかは、親からどんなエレメントを受け継いだかで決まると考えたのだった。エレメント(後に「遺伝子」と名付けられる)と形質は対応しているという発想である。

 ところで、DNAを発見したのはワトソンとクリックではない。彼らの功績はDNAの「構造」を解明したことにある。DNAという物質自体は19世紀にスイスのミーシャーという人によって発見されている。というわけで設問aの答えは×。

 では、DNAは遺伝子の別名か。これも答えは×。遺伝子はDNAだが、DNAは遺伝子とは限らない。ヒトのDNAは約30億塩基対あり、そのうち遺伝子は2パーセントほど。残りは遺伝子ではない。

 遺伝子は生物の体を作る設計図だろうか。「それは全くの誤解である」と著者は言う。設問cも×だ。もしも、遺伝子だけから生物の体が作られるのだとすれば、遺伝子は生物の設計図だと言えそうだ。しかし実際はそうではない。

 例えば、生物の眼を形成するためには、「パックス6」と呼ばれる遺伝子の働きが必要となる。しかし、眼が作られるためにはこの遺伝子だけでなく、他の遺伝子や、細胞の働きが欠かせない。

 なんだか一見ヘリクツのように見えるかもしれない。しかし、ここに著者の生物観の真骨頂が示されている。ヤヤコシイことだが、本書のなかで最も重要な一節なので引いておこう。

コメント3件コメント/レビュー

私も実際に本を読んだわけではないのですが、この書評に書かれている本の内容に異議があるので一言言わせてください。”著者にはかねてより「ネオダーウィニスト」という論敵がいる。このネオダーウィニストもまた、生物の形質は遺伝子だけに左右されると考えている。”とありますが、100年前はともかく現在のネオダーヴィニストが生物の形質は遺伝子だけに左右されているという事実はありません。その最右翼と言えるR.ドーキンスは生物とケーキの比喩を用い、ケーキを作る材料は遺伝子、作り方は環境とたとえています。遺伝子が同じでも混ぜ方や焼き加減など環境が違えば出来上がりも違う、またケーキの材料からはビーフシチューは作れない、と。こうした了見を池田先生がご存じないわけないので、いったい誰と戦っているのか不明であり、ネオダーヴィニストに汚名を着せる行為に良識を疑います。(2008/08/10)

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私も実際に本を読んだわけではないのですが、この書評に書かれている本の内容に異議があるので一言言わせてください。”著者にはかねてより「ネオダーウィニスト」という論敵がいる。このネオダーウィニストもまた、生物の形質は遺伝子だけに左右されると考えている。”とありますが、100年前はともかく現在のネオダーヴィニストが生物の形質は遺伝子だけに左右されているという事実はありません。その最右翼と言えるR.ドーキンスは生物とケーキの比喩を用い、ケーキを作る材料は遺伝子、作り方は環境とたとえています。遺伝子が同じでも混ぜ方や焼き加減など環境が違えば出来上がりも違う、またケーキの材料からはビーフシチューは作れない、と。こうした了見を池田先生がご存じないわけないので、いったい誰と戦っているのか不明であり、ネオダーヴィニストに汚名を着せる行為に良識を疑います。(2008/08/10)

途中までは同意しつつ読んでいましたが、最後の「獲得形質」の話で落とされました。もちろん外部環境によって生物の発生・成長過程などが影響を受けるのは、所謂「環境ホルモン」でも明らかです。しかしながら、じゃあ「バイリンガル」になった人の生殖細胞がその影響を受けて、子孫を残すときにバイリンガルとなるように発生プログラムを組むのでしょうか?(教育は別ですよ。)「獲得形質は遺伝しない」ことを100%否定することはできませんが、「獲得形質は遺伝する」ことを証明できたことはありません。(2008/08/06)

元・生命科学専攻の者です。書籍を読んだ上での批判ではないので、申し訳ありませんが本書では「獲得形質が遺伝する可能性がある」と主張しているのでしょうか。だとすればとてもショックです。獲得形質の遺伝と、外部環境による遺伝子発現の変化はレベルの異なる話であるからです。結果として後天的性質が親と子で似ることはあっても(ヒトの例でいえば【日焼けで親子ともども色が黒い】など)、それを指して「獲得形質が遺伝した」とは言わないはずです。本書での議論にもし論理の飛躍、誤謬がなければ大変失礼致しました。しかし、誤った誘導によって本書の注目を引こうとするならば、信頼のある著者だけに残念です。(2008/08/06)

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三品 和広 神戸大学教授