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ラオス採集記 パート2 その2 ジャール平原のベニシジミ

2008年8月6日(水)

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 六月三日は、ルアンプラヴァン周辺を調べようというので、まずさらに北に向かう。採集に向いたところがない。ほとんどチークの植林だけ。チークの植林は、日本の杉林みたいなもので、虫がいない。去年タイで懲りたから、よくわかっている。

 やや遠くに石灰岩の山があって、それは自然林だが、そこまでは行けない。車が通る道が見つからない。やっと小さい焼畑があって、そこで最初の停止。カミキリが多い。ゾウムシはほとんど採れない。

 次の停止は南三十キロ。向こうが畑で、マンゴーの枯れ木がある。ヒゲナガゴマフカミキリがたくさんいた。本日はクチブトゾウムシは不作。要するにルアンプラヴァン周辺は虫採りにあまり向かない。自然林がほとんどない。人口圧力であろう。

 翌六月四日はシェンクアンに向かう。それには分岐点のサラプクンに再度戻る必要がある。分岐点からシェンクアン側に入ると、それなりに景色がいい。山はかなり焼かれているとはいえ、村が少なく、人口圧力が小さい感がある。虫を採るなら、こちら側か。

 最後の峠を越えると、ジャール平原に入る。このあたり全体を地図ではシェンクアン・プラトーつまりシェンクアン高原と書いている。中心地のポンサヴァン自体が、標高千メートルを越える。そのためヴィエンチャンやルアンプラヴァンよりもずっと涼しい。

ジャール平原 松が生えた尾根道 なんだか日本みたいです

ジャール平原 松が生えた尾根道 なんだか日本みたいです

 ジャール平原は、ヴェトナム戦争を知る世代でないと、あまり聞いた覚えがない地名かもしれない。平原のあちこち、いたるところに爆弾の跡がある。戦後四十年、まだ大きな穴が開いている。その穴の周囲で虫を採るんだから、イヤでも穴に気がつく。よくもこれだけ、爆弾を落としたものである。

ポンサヴァンの街が今回の基地

ポンサヴァンの街が今回の基地

 前に飛行機からたくさん穴が見えると書いたが、木に覆われた森のなかにも、畑の近くにも、注意してみると、いたるところに大穴がある。

 四日から七日まで、ポンサヴァンに滞在して、周囲で採集した。この省の中心は本来はシェンクアンという町だった。それがヴェトナム戦争時の米軍の爆撃で破壊されたので、中心がポンサヴァンに移った。

 ピカソのゲルニカは有名だが、あれをやったのは、結局はナチス・ドイツである。だから有名なのであろう。米英軍がやったことは、それほど有名ではない。広島・長崎はともかく、ドレスデン爆撃や東京大空襲を、世界のどれだけの人が知っているか。上手なものだなあと思う。宣伝をヒットラーに学んだのかもしれない。

 いったん敵に叩かせ、次にイヤというほど叩き返し、グーの音も出ないようにする。これをしっぺ返し戦略という。動物の行動としては、これがいちばん有効である。アメリカの動物行動学はそういう。真珠湾攻撃をやって負けた日本が典型である。この戦略こそがアメリカ流で、それに乗せられないように注意しなければならない。九・一一もおそらくそれではないか。あれが仕組まれたことだとしたら、もはや相手に逃げ場はない。

 イラクの歴史がいずれ書かれるであろう。いかに徹底的にやられたか。米英がイラクを叩く必要があったのは、単にフセインを除く必要があったからである。「狡兎死して、走狗煮らる」。現代史なのに、その間のいきさつを詳しく知っている日本人は少ないはずである。メディアはほとんど報道しなかったからである。見聞きするほうも、自分には関係がないと思っているから、健忘症になる。

 いまではグローバリゼイションなどといって、世界に一つになるのをいいことだと思うらしい。むしろ私は、人々が同じことしか見聞きしなくなることが怖い。

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「ラオス採集記 パート2 その2 ジャール平原のベニシジミ」の著者

養老 孟司

養老 孟司(ようろう・たけし)

東京大学名誉教授

解剖学者/作家/昆虫研究家。1937年生まれ。62年東京大学医学部卒業後、解剖学教室へ。95年東京大学医学部教授を退官し、その後北里大学教授に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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