• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

もしもあなたに臓器移植が必要になったら

~大阪大学医学部付属病院移植医療部 福嶌教偉さん【前編】

2008年8月8日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 「臓器移植」のことについて、友人や家族と話しあったことはありますか?

 「闇の子供たち」という映画を観ることがなかったら、ワタシは、まだしばらくは考えることもなく日々を過ごしていたと思います。子供に心臓移植を受けるために募金を集める両親の姿をニュースで目にしても、はっきりいえば、無関心でした。

 考えはじめたのは、映画の中に描かれている臓器売買の話がショッキングだったのと、映画に関わっている福嶌教偉(ふくしま・のりひで)さんというお医者さんに出会ったからです。

 1997年に臓器移植に関する法律が施行されて、10年余りが経過しました。その間、「脳死移植」が行われたのは70例です。一年平均7例という数字が多いのか少ないのか、考えはじめた当初は、実感のないものでした。

 国内で心臓の移植手術をした場合、数百万円で可能なものが、どうして海外で手術を受けるとなると、何十倍ものお金を必要とするのか。手術が成功した後も、募金に頼ることが家族にどんな精神的な負担を強いることになるか。

 日本は、高度の医療技術を有しながらも、小さな子供が移植手術を受けるには、海外に出て行かざるをえない。この矛盾はなぜ生まれるのか。

 そもそも、「臓器移植」とは何なのか。

 法によって「脳死」を人の死とすることに反対する人たちの主張に耳を傾けてみると、そこには相応の理があり、いっぽうで移植によってしか救えない命と向き合っている医師や家族のナマの声にふれると、その必要性に同調する。無関心であったぶん、ワタシは絶対的な結論がでないまま、それでも、臓器移植法の改正に奔走している医師の存在を知ってもらいたいと思いました。

 福嶌教偉さんは、ほぼ週に一度、伊丹空港から羽田まで飛行機を使って、上京している。いつも二つの鞄にはパソコンと資料として配るために準備した、何十人分かのコピーの束がぎっしりと詰まっている。

大阪大学医学部付属病院移植医療部 福嶌教偉氏

大阪大学医学部付属病院移植医療部 福嶌教偉氏

 試しに一つを持ってみると、がくんと肩が下がり、バランスを崩しかけた。

「20キロはあるんじゃないですか。でも、帰りはコピーの分がなくなりますから、楽なんですよ」

 福嶌さんは、二つの鞄を片手に平然としている。外科医は体力があっての仕事というのは本当らしい。

「いまは患者団体からすこしは出してもらっていますけど。はじめた頃は年間100万から200万は持ち出しでしたよね」

 度々の上京となると、往復の交通費だけでもバカにならないという。

 福嶌さんが勤務するのは、大阪大学医学部付属病院の移植医療部。専門は、小児の心臓外科で、臓器移植コーディネーターの育成にも関わっている。

 早朝に大阪を出発し、夕方にはトンボ帰り。病院でのやり残した仕事を終えてからの帰宅が慣わしになっている。東京での活動は、ある意味、業務外。勤務システム上、たとえ土曜に患者さんを診ても、超過勤務の手当ては付かない。

「真夜中に緊急の手術をしても、かわりませんから」

 24時間、患者さんに対応し、東京に出てきたときにも、携帯で指示を欠かさない。どこまでが仕事の範囲なのかと問うと、福嶌さんはしばらく黙りこんだ。返事は、「深くは考えたことがないですね」。

 1997年に臓器移植法が制定されたものの、ドナー不足の問題は変わらぬまま。脳死を「死」と認めるか否か、個人の死生観の違いもあり、施行時には「3年後に見直す」とされたものの、見直しのないままにすでに10年が経過した。

臓器移植は政治イシューになりにくい

 臓器移植は、人の死を前提にした医療だ。それだけに、論議は繊細にならざるをえない。くわえて、移植を必要とする人がまわりにいなければ、関心を持たれにくい。この原稿を書き進めているワタシ自身が無関心なひとりだった。

「日本で移植を必要とする人たちは年間1万人くらい。政治家にとっては、選挙の票に結びつかないんですよね」

 福嶌さんは、臓器移植法を改正しようと、国会への働きかけを行ってきた。上京はそのためだ。

 現行法の規定では、15歳未満は脳死下の臓器の提供者になることはできない。移植を待つ幼い子供たちを国内で助ける道が事実上閉ざされた現状では、結果的に残されているのは海外での移植しかない。

 海外移植には1億円ちかいお金を必要とする。医療的にも、患者にとっての身体的な負担が大きく、渡航そのものに危険が伴う。

 またドナー不足は海外でも深刻で、これまで人道的な見地から日本の移植患者を受け入れてきた米国などでも、より厳しい受け入れ制限が考えられているという。

 ドナーの制限緩和をめぐっての臓器移植法の改正案は、先の国会でようやく審議が本格化し、秋の臨時国会での可決が焦点となっている。

「関心のある人たちから、話が聞きたいといわれたら、行かないわけにはいかない」

 福嶌さんは、政党を問わず議員を訪ねては話を重ねてきた。地道な活動のいま、正念場を迎えている。

技術はあるのに制約が多すぎる

「もう4年になりますかね」

 福嶌さんが臓器移植法の法改正の運動に関与するようになったのは、2004年の4月にさかのぼる。

 衆議院議員の河野太郎氏が中心となり、法律を変えなければいけないと動きだした。関係者に対するヒアリングの場に、移植学会の理事長と出かけていったのがきっかけだ。

「輸血の問題も、いまの臓器移植の問題に似ているところがあるんですよ」

コメント6

「我ら、文化系暴走派」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本全体として若い世代にもっと所得の分配をしていくべきだと思う。

川野 幸夫 ヤオコー 会長