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機械は「疲労」を拡大生産する、工学発想の影

「テクノストレス」という現代病を科学する--岩永光一氏(前編)

2008年8月7日(木)

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 技術の発展により、私たちは快適、安全な暮らしを手に入れることができた。だが、技術に囲まれた生活を維持するためには効率よく働かなくてはならず、時間に追い回され疲労困憊している人が多いのもまた確かだ。

 日進月歩の技術の躍進に付いていけず疲弊し、あるいは過剰に反応し過ぎて、心身に不調を抱える人も珍しくない。

 この科学技術社会でストレスの質も多種多様となった。その典型の1つに「テクノストレス」がある。一般的な解釈は、コンピューターの使用によって引き起こされるストレスのことだ。機械なしに成立しない世の中で、私たちはテクノストレスとどう向き合えばいいのだろう。

--岩永先生が研究されている「テクノストレス」について、まずお聞きします。「テクノストレス」という言葉は、コンピューターの使用によって起きる心身の失調として語られることが多いように思うのですが、一体、いつごろから使われるようになったのでしょうか?

岩永光一(いわなが・こういち) 千葉大学大学院工学研究科教授。製薬会社勤務を経て、現在にいたる。心血管系・自律神経系・中枢神経系などの生理計測を行い、テクノストレスに対する人間の適応能について研究している。また、人工物や人工環境などの人間適合性・快適性に関する応用研究も行っている。共著に『最新生理人類学』(朝倉書店)、『ライブラリー生活の科学7 生活と技術』(コロナ社)、『人間工学の百科事典』(丸善)など。

岩永光一(いわなが・こういち) 千葉大学大学院工学研究科教授。製薬会社勤務を経て、現在にいたる。心血管系・自律神経系・中枢神経系などの生理計測を行い、テクノストレスに対する人間の適応能について研究している。また、人工物や人工環境などの人間適合性・快適性に関する応用研究も行っている。共著に『最新生理人類学』(朝倉書店)、『ライブラリー生活の科学7 生活と技術』(コロナ社)、『人間工学の百科事典』(丸善)など。

岩永:テクノストレスは1980年代の欧米で誕生した概念です。オフィスにコンピューターが導入されるにつれ、オペレーターが目の疲れや腰痛などの全身的な症状に悩まされるようになり、極端な例では、妊婦や胎児に悪影響をおよぼすという話もありました。そうした健康を損なう事態を指して使われるようになったのがテクノストレスです。

 ただし、私の考えているテクノストレスは、もう少し広い意味のものです。コンピューターと人間をつなぐインターフェースの不適合から起こるだけではなく、科学技術そのものの抱える問題として見ています。 

 科学技術が日常生活に広まり、便利になりました。しかし、長所ばかりでなく短所もあるわけで、有用性があるからこそ生まれるストレスを現代人は被っている。反作用によるそれらストレスすべてをテクノストレスと呼ぶのが私の考えです。

--確かに科学技術の発達の恩恵は多大にありますが、その一方、人は時間に追われ、余裕のない生活を送るようになっています。素朴な疑問ですが、生活を向上させるための技術が我が身を痛めつける不適合な結果を生むのはなぜなんでしょう?

岩永:結局、それは技術やシステムづくりに関わる問題になってくると思います。亡くなった河合隼雄さんがあるシンポジウムで「悪しき工学発想」という言い方をされていました。

 工学的なものづくりのすべてがそうではないにしても、ある問題が起きるとそれに“蓋”をし、次に問題があるとまた蓋をする発想をしがちです。最近、水泳の水着の性能が話題に上っていますが、あれもある意味で技術のいたちごっこのように思えてきます。比べるのはいつもその時点での技術レベルであって、相対的なものなのですよね。あれでは、人間が泳ぐのではなくて、水着が泳ぐような錯覚を感じてしまいます。

 問題の本質であるとか、「それが人間にとってどういう意味があるのか」を探求せずに悪いところに蓋をし続け、今日にいたっている部分があると思います。そういう考えがいまの社会のさまざまな現象や問題をつくっているというのが河合さんのご意見だったと理解していますが、私もまったく同感です。

 本質を問うこともなく“蓋”をすることに追われ、ともかく現代人は、「何時までにあそこに行かなくてはならない」とか「これが終わったら次の仕事は何時までにしなければ」といった日常を送っているわけです。

 おまけに昼夜問わず明るく温度も一定だし、家で休んでいてもメールはひっきりなしに来るし、時間と場所を問わず仕事に追われる環境ができてしまった。

 日常生活の中に科学技術が浸透し、「しなくてはならない」ルールの縛りが増え、さらに技術が先鋭化していく。このように人間が受けるストレス全般を私はテクノストレスと呼んでいます。

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