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量子物理学者が語る『ダイアローグ』の深奥
~それはディスカッションとは似て非なるもの

2008年8月20日(水)

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ダイアローグ――対立から共生へ、議論から対話へ

ダイアローグ――対立から共生へ、議論から対話へ』デヴィッド・ボーム著、金井真弓訳、英治出版、1600円(税抜き)

 アネクドート(小噺)のような詩を多くものしたポーランドの詩人はこういった。

「誰がテーゼとアンチテーゼに、きみらはジンテーゼになりたいかと きくだろうか」

 彼が具体的にどういう状況を指して言ったかわからないにしても、つい吹き出してしまう詩だ。おまけに一般的に応用の効く文句であると感心もする。

 確かにテーゼもアンチテーゼも各々の正しさがいずれ止揚されるべきものだとは考えもしまい。自分の意見が自分にとって正しいと思われるほど、いよいよ相手の掲げる正しさが疑わしく見えてくるものだ。

 正しさを巡る綱引きの最中、目はしの利く人はこういうだろう。

「正しいかどうかは脇において、互いの利益になる調整をしましょう」

 たとえばパレスチナをめぐる紛争で、アラブ人とユダヤ人の利害調整を行うことは仮に可能だとしても、その調整は公正さとは関係なく、武力に応じた配分になることは避けられないだろう。まして、互いの角逐は脇に置いても、我こそ正義という信念が燠火のようにくすぶり続けることは想像に難くない。

 なぜ人は自己の意見にこだわってしまうのか。意見の対立をもたらすものは何かという発想が看過されがちなのは、現実を前にしたとき、そのような問いかけがあまりに迂遠に感じられるからだろう。

 けれど、真実に関心のあるものは、倦まず撓まずその問いを放さない。本書の著者、量子物理学者のデヴィッド・ボームもそうしたひとりだ。マンハッタン計画に寄与しただけに、そのことを終生考え続けた。

 真実を追求する科学がなぜ大量殺戮兵器を生み、人間の生活を向上させるはずの技術が環境を破壊するにいたったのか。

 ボームは「かつて宗教が担っていた役割を科学が演じている」と述べ、科学的見解が真実を占有すると僭称する危険性を十分に理解していたようだ。そうした独善を避けるには、あらゆる想定や予見を排して語ること、つまり「ダイアローグ」が必要であるとボームはいう。

 では、本書が主題としている「ダイアローグ」とはどのようなものか。ダイアローグを説明するにあたり、ボームはダイアローグならざるものを挙げていく。

 ダイアローグは対話と訳される。昨今、対話が大事だというかけ声を政治、ビジネスの分野で多く聞くが、よくて議論を通じた相互理解のための折り合いのつけ方、せいぜいがスムースな交渉のための有用なコミュニケーション法に留まっている。

「勝ち負け」のための対話は対立を深めるだけ

 世の中で行われている対話の多くは、ディスカッションでしかないとボームもいう。

〈ディスカッションは分析という考え方を重視する。ディスカッションはピンポンのようなもので、人々は考えをあちこちに打っている状態だ。そしてこのゲームの目的は、勝つか、自分のために点を得ることである〉

 つまり、ある限定されたルールの中で優劣を争うゲームであり、どれだけ真剣に取り組もうとゲームに変わりない。

 対話のつもりで始めたものの、勝敗を争う点数稼ぎにそれが堕するのはいつか? それは人が信じた価値を守ろうとするときだろう。何かに対し、目的的になればなるほど他人との争いのほうに関心を奪われ、対立の溝は深まる。

 「人生の意味について、あるいは自己の利益や国家の利益、宗教上の関心についてなど、人が本当に重要だと考えるものに関する想定」を揺さぶられるとき、我知らず守りの姿勢に入ろうとする。自分の想定を正当化しようとするあまり、他人を排除することも厭わない。

〈人は自分自身と、自分の意見とを同一視する。人の意見は、自己の利益への投資に縛られている〉

 こうなってしまっては、対話にはコミュニケーションの相手を敵対者と見なす排撃に向けた歩みしか許されていない。

 ボームはそうした偽りの対話に手厳しい。「話し合いに参加している人々が、自分たちの根本的な想定を問題にすることなど実際にはない」からだ。

 翻って、本当の対話はそういうものではなく、「人々は互いに戦うのではなく、『ともに』戦っている」ものだという。では何に向けて「ともに戦っている」のか?

コメント1件コメント/レビュー

手ごわそうな書ですが、「読んでみたい」と思わされました。また、協力して出口を探そうと話し合うたびに、言葉の衝突ばかりで疲れるだけ…という状況の問題点が理解できたように思います。こちらは「対話」を望んでいるのに、相手が自分の価値観(プライド)を崩されたくないために、必死で「ディスカッション」しているというスレ違いが起きているのだということだろうと思います。(2008/08/20)

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手ごわそうな書ですが、「読んでみたい」と思わされました。また、協力して出口を探そうと話し合うたびに、言葉の衝突ばかりで疲れるだけ…という状況の問題点が理解できたように思います。こちらは「対話」を望んでいるのに、相手が自分の価値観(プライド)を崩されたくないために、必死で「ディスカッション」しているというスレ違いが起きているのだということだろうと思います。(2008/08/20)

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