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オリンピックは早すぎた~『変わる中国 変わるメディア』
渡辺浩平著(評:中村正人)

講談社現代新書、720円(税別)

  • 中村 正人

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2008年8月22日(金)

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評者の読了時間4時間00分

変わる中国 変わるメディア

変わる中国 変わるメディア』渡辺浩平著、講談社現代新書、720円(税別)

 アトラクションだけで約3時間。長大な開会式の映像を見ながら、「こういうことじゃないよな」。この国にはオリンピックはちょっと早すぎたのかなと思ってしまった。

 口パクや「偽装」の話ではない。中国5000年の歴史の話は国内向けのイベントでやればいいことだ。

 自分たちの望むとおりに中国の存在を受けとめてほしいという押し付け。主催者が祭典を盛り上げようと気張れば気張るほど、観る者に与えてしまう「怖いくらいに国威を発揚している」といった違和感。世界に自らをどう開いていくか見せてくれることを期待した海外の人たちに後味の悪い効果を与えてしまったことを、自信満々の演出者たちはどこまで気づいただろうか。

 今年、中国メディアは海外の視聴者に同様の違和感と失望を繰り返し与えてきた。そこには同じ構造があるように思う。

 チベット騒乱に端を発した中国国内の異常なナショナリズムの高まり、聖火リレーで中国人留学生が見せた現代版「紅衛兵」ともいうべき狂おしい光景。どうしてああまでムキになるのか。共通するのは彼らの側の世界に対する違和の表明だ。中国人に「公民意識」を芽生えさせたとされる四川大地震の報道や義捐金をめぐる論争についても、被災地での党首要人の陣頭指揮ぶりを強調したり、義捐金額の少ない企業を批判したり、なぜそこにフォーカスを当てるのか、論ずべきは別の話ではないか。こちらの違和感も募るばかりだった。

 中国メディアとその受け手である中国の人たちはいったい何を考えているのか? なぜあんな大仰なふるまいを見せるのか? こうした疑問を解くうえでいくつもの手がかりを与えてくれるのが本書である。

 中国メディア論が専門で、長く中国のメディア産業の動向をリサーチしてきた著者は言う。

〈外から見ると、中国の「異質さ」ばかりに目を引かれる。しかし実は、中国社会には現在、劇的な変化が生じている。特にメディアに注目すると、その変化がよく見えてくるのである〉

「ネットユーザー数世界一」は革命に繋がるか?

 劇的な変化とは何か。本書によれば、1990年代半ば以降、中国のメディア業界では広告に依存する商業化した経営体制とそれに伴う視聴率、購買部数競争が激化している。それが段ボール肉まん事件などの背景でもある。その一方で、共産党の宣伝の道具としてのメディア統制は強化されている。統制しやすいようにメディアの集団化が進み、政権に近い一部メディアのみが特権を独占し、肥大化するといういびつな構造を呈している。

 メディアの商業化と統制強化の同時進行という、いかにも中国的な状況の中で、著者は急増するネットユーザー(2008年2月末、2億2100万人とアメリカを抜いて世界一になった)の存在に注目する。

 2005年、携帯電話のショートメールによるファン投票でスターを選ぶ湖南省衛星テレビ局の「超級女声(スーパー歌姫)」が中国全土を席巻。この素人参加番組が社会現象になったことは、日本のメディアでも報道されたから、ご存知の方も多いかもしれない。携帯電話による投票行為が民主選挙のさきがけになるとさえ論じられた「超女」現象である。

〈超女をめぐる社会現象は、メディアが仕掛けて視聴者(消費者)をまきこみ、視聴者は制作者の意図を超えた形で反応するという、まさにメディアと大衆の「互動」のプロセスであった〉

 著者はそれを「静かな革命」と呼ぶ。いま中国社会に起こっている一大変容、その分水嶺が2005年の「超女」現象だったというのである。

 本当に中国では「静かな革命」が進行しているのだろうか。

 その後、当局の規制により終幕を迎える「超女」現象の顛末は本書に詳しい。これが中国社会のいまを垣間見せる興味深い一面だというのは同意する。

 ただぼくはこの種の中国におけるネットの可能性を過大視するもの言いには疑問を持つ。確かに文革の時代と比べれば、今日の変わりゆく中国の姿に目を見張るのは理解できるし、若いネット世代が個人レベルで情報や意見を発信し始めていることも注目に値する。

コメント3件コメント/レビュー

エリート層が変われるかどうかがカギとのことですが、エリート女性の実情を書いたこちらの記事→「私が会った<A女>たち(3)民主主義の根幹を拒否した改革開放が“悲劇”を呼ぶ」とあわせて読み、興味深いものがありました。ナショナリズムも民主主義も共産主義も資本主義も、すべてごった煮になっている中国社会が、今後どのように変わり、どのように軟着陸できるのか、いろいろ考えされられます。日本も戦後民主主義から民主主義へどう脱皮できるのか、エリート層はどう変われるのか?(2008/08/23)

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エリート層が変われるかどうかがカギとのことですが、エリート女性の実情を書いたこちらの記事→「私が会った<A女>たち(3)民主主義の根幹を拒否した改革開放が“悲劇”を呼ぶ」とあわせて読み、興味深いものがありました。ナショナリズムも民主主義も共産主義も資本主義も、すべてごった煮になっている中国社会が、今後どのように変わり、どのように軟着陸できるのか、いろいろ考えされられます。日本も戦後民主主義から民主主義へどう脱皮できるのか、エリート層はどう変われるのか?(2008/08/23)

 率直に言って、評者は中国に期待しすぎだと思います。 なんといっても、「中華思想」の国ですから、オリンピック開会式も嗤えるほど予想通りだったのでは。 米国で教育を受けたエリート層が党幹部にも増えているそうですから、良くも悪しくも、そこら辺に変化の原動力がありそうですが、今しばらく時間は必要でしょう。(2008/08/22)

中国に対し厳しい記事多いが、この国の発展は止まらない。強くなる中国と今後どのように付き合っていくか日本人として、考えるべきである。(2008/08/22)

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