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うますぎるキャッチコピーにご用心~『霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」』
高橋洋一著※(評:倉都康行)

文春新書、700円(税別)

2008年8月25日(月)

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※高橋氏の高は正しくは「はしご高」です。ウェブ上で表記できない可能性があるため、高にて代用しています

評者の読了時間1時間30分

霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」

霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」』高橋洋一著、文春新書、700円(税別)

 スポーツ新聞や週刊誌で何に目を引かれるかといったら、その見出し、キャッチコピーだ。うまい言葉の組み合わせは読む者のイメージを喚起して、問題点が「分かった」ように錯覚させ、「それで、その先はどうなるんだ?」と思わせる。

 政治の世界でも同じ方法が使われることがある。たとえばちょっと前に「三位一体の改革」というのがあった。地方交付税・補助金・地方税という三つの要素を同時に「えいやっ」と改革の俎板に乗せようとした。

 そもそも三位一体とは、「神と子と聖霊は同義である」とするキリスト教の重要な教義。「三つまとめていっぺんにやってしまえ」ということではない。しかし、誰もが耳にはしたことがある、しかも宗教用語の厳かな言葉の力が、「三つまとめていっぺんに(実行するのが正しい)」というイメージを打ち出していたように筆者には思える。げに言葉の威力とは恐ろしい。

 本書のタイトルにも取られた「霞ヶ関の埋蔵金」もヒット作であることは間違いないだろう。埋蔵金という言葉には、隠された膨大な宝、という、えもいわれぬ怪しく魅力的な雰囲気が満ちている。「財政難で増税は必至だ」という論調が強まる中で、「いや実はね、霞ヶ関には何十兆円も埋蔵金があるのですよ」などと囁かれたら、誰でも聞き耳をそばだてたくなる。まして、それが元財務官僚の口から出るのだから、世間の注目が高まるのは無理もない。

女子アナが「埋蔵金ってどこですか?」と霞が関に押しかける

 「埋蔵金」とは、厚生労働省など個別の省庁が持っている予算である「特別会計(公共事業、年金など)」上の、資産から負債を差し引いた数字、内部留保の金額のことだ。

 本書の著者、高橋洋一氏は2005年の経済財政諮問会議で「埋蔵金」の存在を世に知らしめた人であり、「小泉・竹中時代」を支えた異色の元財務官僚だ。もっとも、この言葉は高橋氏の発案ではない。本書の中で紹介されているが、氏が初めて耳にしたのは、与謝野馨氏が主催する研究会でだったそうだ。

 与謝野氏は財政再建の方法論では高橋氏の対極に立ち、自著『堂々たる政治』(新潮新書)の中では、埋蔵金の存在を主張する人々に反論している。この時も「特別会計には内部留保が貯まっているのではないか」と聞いた若手議員に「そんな埋蔵金みたいな怪しげなことを言うものではない」という一喝があった。それがまずかった。

〈与謝野研究会としては大失敗でしょう。「埋蔵金」なんてうまいことを言わなければよかったのに。政治家としての政策アピール力がすごいから、そのネーミング一つでみんなに関心を持たしちゃったでしょう(笑)。フジテレビ、見ませんでした? 夜にヘルメットをかぶって、サーチライトで、ツルハシか何か持った女子アナが、財務省から出てくる人に、「埋蔵金どこにあるんですか」って聞いたりしてるの。ほとんど笑い話(笑)〉

 このようなエピソードや(笑)マークがふんだんに盛り込まれたこの本は、高橋氏の著作としてはちょっと信じられないくらい肩が凝らず、読みやすい。語りおろしをまとめた今どきの新書らしいスタイルで、日本経済の低迷は財務省と日銀の勉強不足に原因があるとの視点から

「まあ、財務省ももうちょっと金融の本当の専門家を雇ったほうがいいよ」

 と、財政、金融問題をばっさりと斬り、さらに公務員制度改革から道州制まで話は広がる。「原油高への対応策はインフレ対策よりも金融緩和で」「株安の原因は日銀の引き締め策にあり」と、一般に思われている考え方を軽々とひっくり返していく。評者は必ずしも同氏の説を支持するものではないが、歯切れよく分かりやすい言葉やたとえ話で、非常に呑み込みやすい。

 と、楽に読めて分かりやすい本なのだ。だが、それだけに「分かりやすさのリスク」を念頭に置かれて読む方がいい、とも思う。

 例えば、高橋氏が指摘する「埋蔵金」は、本当に存在するのだろうか。

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「うますぎるキャッチコピーにご用心~『霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」』
高橋洋一著※(評:倉都康行)」の著者

倉都 康行

倉都 康行(くらつ・やすゆき)

RPテック代表

1979年東京大学経済学部卒業後、東京銀行入行。東京、香港、ロンドンに勤務。バンカース・トラスト、チェース・マンハッタン銀行のマネージングディレクターを経て2001年RPテック株式会社を設立、代表取締役。立教大学経済学部兼任講師。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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