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ネットが加速するセックス・アンド・ザ・シティ~『ドット・コム・ラヴァーズ』
吉原真里著(評:尹雄大)

中公新書、780円(税別)

2008年8月26日(火)

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ドット・コム・ラヴァーズ──ネットで出会うアメリカの女と男

ドット・コム・ラヴァーズ──ネットで出会うアメリカの女と男』吉原真里著、中公新書、780円(税別)

 アメリカでは、インターネットでデート相手を探す「オンライン・デーティング」が盛んだという。2006年度の業界の売り上げが6億4900万ドルと、有料サイトの中でもきわめて高い収益をあげる産業として成長著しい。

 オンライン・デーティングは、結婚をゴールに掲げ、それに向けてまっしぐらに突き進む性格はなく、かといって売買春の温床と後ろ指をさされるような出会い系サイトでもない。

 年齢・人種・職業を問わず、「今どきみんなやっている」ものであり、カジュアルにデートを楽しむ相手を探すシステムとして、アメリカの主流文化の一部になっているという。

 ユダヤ系やアフロアメリカン、モルモン教徒といった特定の民族、人種、信仰を対象にしたサイトもあるというから、いかにも多文化、多民族国家アメリカらしい。

 この手の「出会い」に抵抗を感じる人もいるだろうが、ネットでご当地名物を取り寄せ、チケットを予約しと、当然のようにオンラインサービスを享受している時代だ。「デートの相手を探すのにインターネットを使って悪いわけがなかろう」というのも一理ある。

 本書は、様々な志向を持つアメリカ人男性とのデートを通じ見えてきた「人間臭いアメリカの一端」をレポートしたものだ。

 著者の吉原真里はニューヨークに生まれ、東京で育ち、東洋と西洋の文化関係やジェンダーを専門にした人文系の大学教授としてアメリカでキャリアを積んできた。

 そんな彼女が業界最大手の「マッチドットコム」に登録したのは、元彼がオンライン・デーティングで大恋愛をしたという話を聞いたからだった。ならば私もと、そこに記載したプロフィールといえばこういうものだ。

〈二つの言語と文化をまたいで生きているということは、私のアイデンティティの重要な一部で、デートの相手としては、他の文化に積極的な興味をもっている男性を好みます。文学、音楽、芸術を楽しむことも重要です(私はかつて、付き合っていた相手がトニ・モリソンが誰かを知らなかったという理由で別れたことがあります)〉

 トニ・モリソンとはノーベル賞を受賞したアフロアメリカンの作家で、彼女を知らないとは「大江健三郎を知らないこと」に値するという。

 そう牽制しつつ、お高くとまっていると見られてはたまらないと、〈楽しいことが好きで、気取らなくて、だいたいは情緒の安定した人間です〉と付け加えることも忘れない。一定水準の知識と教養を求めながらも、たんなるスノッブはお断りといった、ようは一筋縄ではいかないユニークな男性を求めることに積極的な調子が窺える。

 リアルの出会いでは生活環境、文化背景を探るにも手間暇がかかる。だが条件を入力すれば一括検索できるのがネットの世界だ。

ショートヘアの写真でいざ勝負

〈ニューヨーク市内から100マイル以内で、三三歳から四五歳の、大学卒で「リベラル」で、子供のいない男性という条件でサーチをしてみると、出てくる出てくる〉

 表層的な関心の向け方であるほど、大量のデート相手が現れる。ならば、彼女程度のコアなこだわりがあったほうが、ディープな出会いも期待できるというものだろう。

 それにしても、彼女のプロフィールは知的関心の有無に厳しいように見える。個人のアイデンティティ、価値観を明確にすることがアメリカ社会で求められているというのもあるが、理由はそれだけではない。

 案外アメリカ人男性には、東洋人の女性に知的さよりも従順さ、自己主張よりも男性を立てる優しさを求め、それでいてエロティックであることを期待するオリエンタリストが多く、その対策という側面もあるからだ。

 〈長髪で女性的な魅力をかもしだすのは誰にでもできるが、ショートヘアーでセクシーに見せることのほうがずっと難しい〉と考えている吉原は、ショートヘアーに眼鏡の「なめんなよ」的効果を与える写真をサイトにアップ。満を持して、オンライン・デーティングの海原に漕ぎ出す。

 さて、蓋を開ければ順風満帆といかず、デートのすっぽかしを繰り返す編集者や吉原の住むプエルトリコ系移民の多い地域に偏見を持つ経営コンサルタントなどと、しっくりこないデートを重ねることになる。だが、そこは知的欲求が高い彼女だけに、違和感を募らせるだけに終わらず、分析し、デート相手の言動から某かを拾得しようとする。

 たとえば、「教育程度も高く、充実したキャリアをもち経済的にも安定した男性」のほうが、意外にも、結婚して家庭を持ちたがる傾向にあるという。そこに、離婚率が高くステップファミリーも珍しくないにもかかわらず、相変わらず「家族」に対する期待を持つアメリカ人の姿を見て取る。

 またコスモポリタン的な都市を誇りに思うニューヨーク市民が多い一方、貧しいニューヨークの一画を犯罪率の高さと短絡的に結び付け、意識から追いやってしまう「驚くほどのたこつぼ的意識」を見る。

 やがて、幾度めかの出会いで、そんな分析も必要ないような「初めてのデートで盛り上がって一夜を共に過ごすときにありがちなホットな時間」を経験する。

コメント4件コメント/レビュー

そうか情報+ケミストリーか、と、とても納得させられる書評でした。パソコン通信の時代にさかんにオフラインミーティングが催され、みんな熱心に参加していましたっけ。単なる友達づきあいでも、同じ話題を持つことと、相性とを追求していたわけですね。(2008/08/27)

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そうか情報+ケミストリーか、と、とても納得させられる書評でした。パソコン通信の時代にさかんにオフラインミーティングが催され、みんな熱心に参加していましたっけ。単なる友達づきあいでも、同じ話題を持つことと、相性とを追求していたわけですね。(2008/08/27)

この本、すごく面白くてあっという間に読み終えた。初めは他人のプライベートを覗くようなドキドキ感から読み進めていたが、次第に普遍的とも言えるような男女のケミストリーに惹かれるようになった。男の言い訳や不安に共感したりと。著者本人の人間臭さも大いに魅力的だった。(2008/08/26)

>「デートの相手を探すのにインターネットを使って悪いわけがなかろう」というのも一理ある。 寛容というよりも無定見という感じがします。 私は、0.0001理もないと思いますね。 失礼ながら、味噌も何とかも一緒にするような粗雑な論理の賜がこの「批評」であって、当然ながら、対象となった書物に対して食指が動くことはあり得ません。(2008/08/26)

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三品 和広 神戸大学教授