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日本の戦後を方向付けたあの日から、60年~『東京裁判の教訓』
保阪正康著(評:山岡淳一郎)

朝日新書、740円(税別)

  • 山岡 淳一郎

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2008年8月27日(水)

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東京裁判の教訓

東京裁判の教訓』保阪正康著、朝日新書、740円(税別)

 「東京裁判(極東国際軍事裁判)」の判決言い渡しから、今年で60年目を迎える。戦後史に疎いわたしにとって、東京裁判は深い森のような存在だ。入口はあちこちにあるのだが、下手に踏み込むと方向を見失いそうになる。うかつに近寄れない。そのアウトラインをじぶんなりに整理すると、こうなる。

 東京裁判は、ポツダム宣言に基づき、連合国軍最高司令官、ダグラス・マッカーサーの強い影響下で開廷している。連合国11カ国によって戦前、戦中の軍国主義体制を主導したとされる28人が起訴され、2年余りの審理を経て、判決時の被告25名(裁判中に2名死亡、1名免訴)全員の有罪が確定。このうち元首相の東條英機や元陸軍大臣の板垣征四郎ら7人のA級戦犯は「デス・バイ・ハンギング(絞首刑)」に処せられた。

 その犯罪は、

  • 「平和に対する罪」(侵略戦争または国際条約などに違反する戦争の明確、準備、開始、遂行、あるいはこれらを達成するための共同謀議への参加)
  • 「戦争犯罪」(戦争の法規または慣例の違反。占領地内の一般住民の殺害、虐待、強制移送、捕虜や海上にある者の殺害、軍事的必要によって正当化されない破壊など)
  • 「人道に対する罪」(戦前、戦中すべての一般住民に対して行われた殺人、殲滅、奴隷化、強制移送及びその他の非人道的行為)

 のいずれかに当たるとされた。A級戦犯とはこの「平和に対する罪」を犯した者の意である。証拠として採用された書証が3915ある一方で、敗戦直後、軍や行政の機関では厖大な機密書類が焼かれてしまっている。当然、証言に重きが置かれたが、証人すべてに偽証罪を問うてはいない。

 この東京裁判をどうとらえるか。長い間、肯定論と否定論が真っ向からぶつかってきた。現在でも、日本の侵略行為の責任を「文明」的な裁判で追及した点を肯定する「文明の裁き」論と、原爆投下など連合国側の行為が対象とされないのは「勝者」の政治的報復だとして否定する「勝者の裁き」論が、正面衝突している。

 自信をもって肯定も否定もできない人間には、東京裁判は戦後史の「樹海」のようだ。厖大な史料から全容をつかむのは至難の業、中途半端に手を出すと右か左か迷い続ける……。

 そんな難所を、スーッと高みから描いてみせてくれたのが本書である。

 この本は、東京裁判という森を俯瞰している。複雑で入り組んだ森も、高い場所から「鳥の目」で見れば構造が明らかになってくる。

「自らを裁けなかった我ら」という事実

 「戦後民主主義教育を受けた世代として、昭和前期の時代様相を分析し、語り継ぐのは私の世代の役割だと考えてきた」著者は、昭和史への造詣の深さと洞察を力に飛翔し、東京裁判の教訓を引き出している。

 序章で、著者は、自己の立ち位置を示す。

〈この裁判の歴史的意味は、日本人が昭和のあの軍事主導体制を自らの手で清算できなかった点にあるのではないかと思う。東京裁判はその清算のひとつであり、それ以上でも以下でもない。これは日本人が受けいれるとか受けいれないとかの問題ではない。史実として存在している以上、それを検証してそこから教訓を学ぶことがなによりも重要である〉

 そして「裁く側の論理」「裁かれる側の責任」「判決を下した側の史実判断」から普遍的な教訓へと筆を進める。

 まず、東京裁判の「功罪」とは何か。「功」については〈昭和前期の史実について、国民はまったく知らされていなかったから、法廷で明らかになる史実により、初めて日本軍の行動やその作戦の全体図を確認できたことだ。(略)もしこのような裁判がなかったら、日本の政治、軍事指導者たちは自らの成した行為そのものには頬かぶりしたに違いないのだ〉と述べる。

 「罪」としては、〈二十八人の被告の大半が、昭和の戦争のそれぞれの局面に関与していたのは事実であったが、しかしそこに共通の意思があったとはとうてい思われない〉と「共同謀議」への疑問を呈する。

 加えて、軍政の責任者ばかりが裁判にかけられ、統帥権を自在に操り実際に軍令を下した参謀や高級軍人が被告に挙げられていないことを、著者は「罪」と指摘する。軍令に係わる軍人が被告にならなかったのは、マッカーサーが天皇の免訴を前提にしたためのようだ。もし彼らを法廷に出せば天皇の責任が問われる恐れがあった。

 それでも〈参謀たちは被告席において、その戦略がいかに合理性を欠いていたか、とくに玉砕に追いやった戦術や特別攻撃隊などの作戦などは白日のもとにさらしておくべきだった〉と著者は悔しさをにじませる。

 いよいよ裁判が始まり、証人が次々と出廷する。

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