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議論や会話はあっても『ニッポンには対話がない』
~共通点がない相手と話すコツ

2008年8月27日(水)

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ニッポンには対話がない――学びとコミュニケーションの再生

ニッポンには対話がない――学びとコミュニケーションの再生』北川達夫・平田オリザ著、三省堂、1500円(税抜き)

 本書は、元外交官で、いまはフィンランド教育の紹介者として知られる北川達夫氏と、学校や企業を対象にワークショップの授業をしている演劇人の平田オリザ氏という異なる歩みをしている二人が対談した本だ。

 「正解」へ誘導しようとする日本と、「考える力」を養うことではモデルケースにされることの多いフィンランド。国語の授業を例にあげながら、自分探しから、リスクマネジメント、日本が移民社会となっていくことの対応まで、主題は話し合ううちに広がっていく。教育がテーマだが、コミュニケーションに関心がある人が読めばヒントになる話が詰まっている。

 たとえば、「社交性」について。平田さんは、このように語っている。

 社交性といえば「表面上の交際」という受け止め方がある一方で、学校教育の場などでは「心からわかり合える人間関係をつくりなさい」と教えられる。そのことが若い世代の人たちにはプレッシャーになっているのではないか。

わかり合うよりも大事なこと

 これを受けて、北川さんは、フィンランドの大使館時代に先輩や上司の助言を引き合いにだす。

「わかり合おうなんて思っちゃいけない」

〈これはベテランの外交官ほど言うんですけど、極端な人になってくると、「人間であるということ以外に共通点はないと思うくらいのつもりでしゃべらないといけない」と〉

 誤解されそうだが、狙いは「共通点はない」と思ってしゃべれば、話し合えばわかる部分もでてくる、という心構えにある。

 外交官の仕事は、毎晩のように開かれるレセプションやパーティに出席するのが仕事だ。「これが楽ではないんですね」と北川さんはもらす。

 出席者は、同業者ばかりではない。財界、政界から学者や作家、歌手に俳優、スポーツ選手と誰に会うかわからない。オールマイティの知識があればそれに越したことはないだろうが、それでは超人だ。しかし話は盛り上げねばならない。

〈こういう状況に置かれてみると、コミュニケーションというのが、まったくわけのわからないところから、なんとかして共通部分を見つけていくものだということがよくわかります〉

 ワタシなどはパーティ会場で、立ち往生している自分の姿が思い浮かぶだけでもう居心地がわるい。けれども、北川さんは接点のない人と話をするにはコツがあるという。

〈自分の興味や関心にばかりとらわれたり、「ほんとうの自分」を表現することによって相手と心からわかり合おうとしていたりしたら、たぶん永遠にできないでしょう〉

 話すよりも、耳を傾ける。言わんとするポイントは、相手に話をふり、自分ジブンになってしまわないこと。こちらが自然体であれば、相手の地位や職業に関係なく会話は成立する。ことさら意味のある会話にしようとか「わかり合おう」としないくらいのほうが、肩に力が入らずにふつうにしゃべれる、ということらしい。

 理屈はうなずける。とはいえ「コツ」を掴むには、相応の訓練が必要だろう。

 北川氏の外交官時代の話で面白いのが、フィンランド語を死ぬ気で勉強し、国の様子も掴んだと自信が出たときのことだ。上司が彼に割り当てた仕事は、「前向きに善処する」。日本独特のニュアンスを、フィンランド語で説明する。もちろん日本の美徳として。

〈こういうことでも、ちゃんと説明すると、「自分たちはそうは考えないけど、そういうのって日本の奥ゆかしさなんだろうねぇ」って最終的にはわかってくれるんです。自分たちはそういう言い方はしないけれどもって〉

 前向きに善処するのが「奥ゆかしさ」というのは皮肉な思いがするが、それはともかく。かけ離れた立場の相手に、理解を促す対話のコツは、自分が拠って立つものを見失わないことだという。外交官なら、片足は相手の土俵に乗せつつも、軸足は自国にある。

〈グローバルスタンダードのコミュニケーションというと、なんだか日本人であることをやめなくてはいけないようなことを言う人がいるけれど、そうではなくて、日本人であろうが何人であろうが、自分の立ち位置を明確して、それをしっかり言えるようにするのが大事なことなんです〉

対話ベタを克服するには

 さて、本書のタイトルにもなっている「対話」ではあるが、似たものに「議論」と「会話」がある。

 「会話」は親しい仲間でのおしゃべり、「議論」は相手を言い負かすことを目的とするのに対して、「対話」は、異なる価値観をもつものが妥協点を見つけるためにするものというのが、二人の共通見解。

 日本人はその「対話」が下手であると二人はいう。では、それを克服するには、どうしたらいいのか。

 平田さんは最近、大学生に教えていて「正解がない問題」が苦手だと感じることが多いという。

 例にあげたのが、「電車のなかの三人の会話」。

 登場人物は三人。学生たちは、相互の関係について説明のない台本をもとに、想像しながら三人を演じることになる。

 解釈は自由、「いちばん妄想の膨らんだ人が勝ち」というふうにいうと、立ち往生するばかり。

 「正答」に近づく技術は早期に身につけてきたものの、「はずれる」ということはしてこなかったからだろうというのが平田さんの見解だ。

〈ストライクゾーンのそのまんなかのいちばん狭いところを見つけるのはすごく得意ですけれども、人とどれだけ違えば勝ちかということにはすごく弱いんですね。けれども、これを競わせないとだめなんですよ、子どものときから〉

 平田さんには、演劇の稽古のときに、決めていることがある。

 個人を褒めない。

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