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ゴリラだって食べ物を分け合う。我々の『暴力はどこからきたか』
~実は狩猟よりも農耕から、らしい

2008年9月3日(水)

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暴力はどこからきたか――人間性の起源を探る

暴力はどこからきたか――人間性の起源を探る』山極寿一著、NHKブックス、970円(税抜き)

 第二次世界大戦後、南アフリカでアウストラロピテクスの化石が発見され、周辺からはへこみのあるヒヒの頭蓋骨も見つかった。アウストラロピテクスの頭蓋骨にも打撃の跡が残っていた。

 調査を行った人類学者は、植物食と思われるアウストラロピテクスが動物の骨を用いて狩猟を行っていたばかりでなく、頭蓋骨に残る打撃の跡をアウストラロピテクス同士による殺し合いの証とする説を発表した。

 「動物が本能としてもっている攻撃性を人間は武器を用いることによって拡大し、殺戮者としての歴史を歩んで現代にいたっている」といった、人間の暗部を暴露するショッキングな説であったが、アカデミズムの範囲をこえ、人々の間で話題となった。

 当時、ホロコーストを経験したヨーロッパは、その合理的な説明に飢えていた。

 極めて理性的に行われたナチによるユダヤ人の大量殺戮を目の当たりにして、暴力は人類の進化に伴い培われてきたもので、捨てることのできない能力だといった説は、人々の溜飲を下げる効果も持ち合わせたはずだ。

 現在では、ピグミーや「ブッシュマン」といった狩猟民に対するフィールドワークから、狩猟は攻撃性を高めるものではないこと、また狩猟民の社会は、同士間の争いを抑止する機能を高度に発達させていることも明らかになった。狩猟と攻撃性を本能に結び付けて説明する説は支持されなくなっている。

食と性をめぐる争いと、解決方法

 ライオンは獲物をめぐって仲間と争うことはあるが、獲物を狩るように仲間を殺さない。だが、人間だけが狩りをするように仲間に銃やナイフを向けることがある。いったいなぜなのか。

 本書はゴリラをはじめとした霊長類の闘争が何によってもたらされ、彼らはそれをどう回避してきたかを明らかにすることで、人間の振るう暴力の出自を探ろうとする。

 著者、山極寿一は動物の争いについてこう述べる。

〈同種の動物どうしの争いは、相手を抹殺することではなく、限りある資源をめぐっていかに相手と共存するかを模索することにある〉

 山極はゴリラをはじめとした霊長類の研究家で、ときにはゴリラの突進を身体で受けるなどして生態調査を行ってきた。そうした現場での研究を通じ、動物の争いの原点となる「限りある資源」を「食物と交尾をする相手」と定義した上で、こういう仮説を立てる。

〈人間の社会に見られる争いごとも、もともとそういった食と性をめぐる葛藤から生じたはずである〉

 ここでいう葛藤とは、心的な状況でもあるが、食と性という他人に譲渡できない資源を挟んで対峙する局面を指す。ニホンザルであれば序列化が徹底しているため、葛藤は序列化の確認で済む。上位のサルは自分より劣位のサルに獲物に手を出されたら攻撃するが、殺しはしない。

 だが人間はいつの頃からか資源を占有するために同種を殺すようになった。資源をめぐる争いの処理にあたっての、他の動物とは異なる対応の変化が人間特有の暴力を生んだのではないか。それを探るために、山極は霊長類の食と性をめぐる葛藤とその解決方法について述べる。

 「キングコング」が象徴的だが、かつてゴリラは人間を襲う凶暴な動物と思われていた。だが、近年の研究でゴリラはきわめて繊細であり、社会性に富んだ暮らしを営んでいることが明らかになった。

 山極の報告によれば、ゴリラは「食べ物をいっしょに食べる」文化を持っているという。ニホンザルの場合、複数のサルが対面しながら食べることはない。サルにとって視線を交わすことは敵意ありの証になる。

 しかし「ゴリラたちは、顔を向け合い、視線を交わしながら」食事をする。むろんゴリラにとっても食は争いの火種にもなり、葛藤を呼ぶものだ。

〈優位なゴリラが魅力的な食物資源を占有することはしょっちゅう起こる。食事中の劣位なゴリラをどかせて、優位なゴリラがその食物を独占するといったことも起こる〉

 その一方で優位のゴリラが近づいても、体の小さいゴリラがなかなか場所を譲らない光景も目の当たりにする。

〈相手がどかないと大きなゴリラはさらに近づいて顔をのぞき込む。すると、「グフーム」とうなってしぶしぶ場所を空ける〉

 さらには体の小さい劣位のゴリラが優位なゴリラに場所をどくよう要求することもあるという。

 葛藤を抑えることなく欲望のままに行動することが動物的だと、人間は考えがちだ。だが、ゴリラの社会においては、葛藤と排撃は必ずしも結びつかない。

 なぜゴリラは独占できるはずの食料を他者に譲り渡すのか。

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