「アニメから見る時代の欲望」

アニメから見る時代の欲望

2008年9月5日(金)

「快感原則」を忘れるなかれ

谷口悟朗監督「コードギアス 反逆のルルーシュR2」(3)

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―― 直截な言い方になってしまいますが、「コードギアス」はなぜこれほどヒットしたのだと思いますか。人々の欲望を捉える、“ヒットを生み出す秘訣”みたいなものがあれば、ぜひおうかがいしたいのですが。

谷口: 正直、ここまでいくというのは、私も読み切れなかったです。

谷口悟朗氏

谷口悟朗(たにぐち ごろう)
1966年生まれ、愛知県出身。フリーのアニメーション監督、演出、プロデューサー。代表作は「無限のリヴァイアス」(1999年)、「プラネテス」(2003年。この作品で星雲賞を受賞)、「ガン×ソード」(2005年)などがある。深夜枠の番組ながら大人気となった「コードギアス 反逆のルルーシュ」(2006年)で注目を集め、続編の「コードギアス 反逆のルルーシュR2」が日曜夕方5時からMBS、TBS系列で放映中(2008年8月現在) (写真:鈴木 愛子 以下同)

 今の時代の感覚にたまたま合致したという面はあるとは思いますがね。もしもヒットの秘訣というものがあるとすれば、作品を通じて――もしくは商品を通じてと言ってもいいかもしれません――「商品を通じてお客さんと会話をする」という気持ちが持てるかどうかだと思うんですよ。

 私の中で「アニメーションで成功した」と思えるポイントは、3つ存在しているんです。あくまで「監督としてのポイント」ですが。

―― 3つの成功ポイントとは?

 1つ目はDVDや玩具の売り上げも含めて、10円でもいいから黒字にして赤字を作らないこと。

 2つ目は、TVアニメの場合には視聴率が良いこと。

 3つ目が、3年後、5年後でも覚えてくれているお客さんがいるということ。例えばカラオケで主題歌を歌ってくれたりするような、時代的な継続ですね。

 全部達成するのは難しいので、どれかが達成されていればその作品は成功だろうと。
 要するに、「お客さんから何らかの支持を得た」ということですね。

 アニメーション制作で何が大事かと問われれば、いろいろあって難しいのですが、まず第一に、売れることは大事でしょうというのが私の考え方です。アニメの絶対正義は、売れることだと思っています。

 中でも「赤字を作らない」というのは、真っ先にやらなければいけないことですね。

―― 「赤字を作らない」。それは商売の基本のようでもあるのですが、アニメーションの場合は違うのですか?

 残念ながら、他の産業とは違うでしょうね。アニメーションに関しては、作品タイトルが10本あるとして、たぶん3本ぐらいですよ、全く赤字を作っていないのは。

赤字を出さないことこそが正義である

―― え、そうなんですか!?

 そんなものですよ。赤字になってしまう作品のほうが多いんです。

―― それでは、どうやって「商売」として回しているんですか。

 一握りの作品が、赤字になった作品の損失分を補填して回しているという状態なんですよ。

 私が言う、売れる、当たるというのは、アニメの商売でボロ儲けしてプロデューサーと一緒にフグを食べに行くとか、そういう意味じゃないですよ(笑)。定められた予算を回収して、その上で、最後に金庫に10円玉が1個残りましたと。それでいいんです。10円玉1個が残れば。

―― 10円玉1個でも?

 そうです。10円でも黒字になれば、「次の作品」が作れるんです。アニメのスタッフ全員にギャランティを払い終えてもなお黒字になれば、みんながこの仕事で生活していけるじゃないですか。こういった業界にいる人たちは、永久就職したわけではありませんから、誰かが認めてお金を出してくれないと、制作者たり得ないんですよ。

―― 黒字になれば、どのスタッフも生活していけて、次の仕事につながると。

 そうです。黒字にしないと、お客さんにも、「次の作品」を楽しんでもらうことができないですしね。作るには場所も必要だし、スタッフの生活もある。そこまで含めた予算を全部回収できて、初めて「黒字」なんですね。

 ただ、裏を返すと、これはやっぱりアニメ業界のいいところだと思うんですけれども、10円でもいいから黒字をつくるということは、一昔前の「勝ち組、負け組」という言い方をすれば、すべてが「勝ち組」になることができるんですよ。

―― そうなんですか?

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著者プロフィール

渡辺由美子(わたなべ ゆみこ)

1967年、愛知県生まれ。椙山女学園大学を卒業後、映画会社勤務を経てフリーライターに。アニメ・コミックをフィールドにするカルチャー系ライターで、作品と受け手の関係に焦点を当てた記事を書く。男性と女性の意識の差を取材した記事も多い。著書に「結婚ってどうよ!?」(岡田斗司夫氏との共著)ほか。


このコラムについて

アニメから見る時代の欲望

アニメーションは、頭の中で望んだことを描き動かすもの。作り手の嗜好を忠実に映像化することができる。そして作り手は、視聴者の欲望をいかに捉えるかに常に腐心している。アニメにこそ、時代の欲望が見えるのではないか? そんな仮説を手に、日々アニメ制作に臨む監督たちにインタビューを申し込んでみた。

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