「NBO新書レビュー」

「クール・ジャパン」もあながち嘘じゃない〜『ニッポンの評判』
今井佐緒里著(評:三浦天紗子)

新潮新書、700円(税別)

  • 三浦 天紗子

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2008年9月10日(水)

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評者の読了時間2時間45分

ニッポンの評判──世界17カ国最新レポート

ニッポンの評判──世界17カ国最新レポート』 今井佐緒里著、新潮新書、700円(税別)

 近ごろ、「クール・ジャパン」という言葉をよく耳にするようになった。

 ジャパン・メイドのアニメやマンガ、アキバ文化が世界的な人気を博し、一おもちゃメーカーの“ニンテンドー”がグローバルに通用する。いまや日本発のファッションや料理、アート、文学、建築などさまざまな伝統文化やポップカルチャー、あるいは「Mottainai(もったいない)」といった日本的精神までが、カッコイイものとしてあちこちの国で受け入れられていると聞く。

 では、実際のところどうなのか。クール・ジャパンなんて持ち上げられているけれど、所詮、日本びいきのごく一部の人々に、オタク文化の総本山として偏愛されているだけではないのか。そんな思いを抱きつつ、本書を手に取った。

 本書の執筆者は、イギリスやフランス、ブラジル、マレーシアなど、世界17の国々に在住、もしくは長期滞在していた経験を持つ日本人18人。それぞれの国での日本の評判を、本書の編著者でもある今井佐緒里氏がまとめた形だ。評判が届きやすいアメリカ東海岸、中国や韓国はあえて除外し、ニュースなどで頻繁に登場しない国々を多く取り上げたという。

 ちなみに今井氏は、出版社退職後の2001年に渡仏。長らく南仏に住み、日本向けにフランスやEUの情報を執筆しているフリーの編集者&ジャーナリストで、これが初めての著作になる。

 さて、本書をひもとくと、クール・ジャパンの触れ込みはあながち嘘でもないようだ。

 ロサンジェルスでは若い世代の会話で、ピチカート・ファイヴやケツメイシ、奈良美智や村上隆の名前がさらっと出てくるし、マレーシアでは1981年から現在までずっとルック・イースト政策が掲げられ、近代化のモデルケース国家として日本は憧れの眼差しで見られている。これまで、国際的にモテないと言われてきた日本男性だが、オーストラリア女性たちからは最近、「日本人男性はファッショナブルで洗練されている」と一目置かれてさえいるらしい。

イタリアでは建築家が高評価

 中でもイタリアからのレポートは、なかなか日本人のプライドをくすぐるもの。歴史的建築物の宝庫であり、伝統を重んじる彼の国で、イタリア人建築家たちを差し置いて、多くの日本人建築家が活躍していると本書にはある。

 たとえば70年代初期に故・丹下健三が携わった、シチリアの大都市カタローニアの郊外リブリーノ地区開発計画(現在までに未完成)。安藤忠雄が手がけた、ヴェネツィア運河沿いの宮殿「パラッツォ・グラッシ」の改装。トリノ冬季五輪アイスホッケー場も日本人建築家によるものらしい。

 もっとも、丹下や安藤らがイタリアの新しい街並み作りに貢献できる理由は、単に“日本人建築家が高い美意識を持っていると認められている”からではないようだ。

 機能性やデザインにおいて、新しいアイディアや技術を取り込みながら、〈大地震や大火事に備えるための新しい素材や、環境にやさしい資材の開発〉をしてきた実績。〈日本人が得意とする細かい手作業や正確さ、仕事に対するプロフェッショナルな姿勢〉といった日本人的な「職人気質」。それらにイタリア人が好意的な目を向け、評価していることが大きい。

 イタリアと同様に、いまや世界最高水準のビジネス・ハブとなったシンガポールでも、日本は評判がいい。

 1970年代から80年代まで、シンガポールにとって日本は経済発展のお手本だった。しかしバブル崩壊後の90年代は、注目を集めていた終身雇用、年功序列の日本式経営そのものはもてはやされなくなり、むしろ下火になる。

 とはいうものの、たとえば解雇を言い渡した従業員の再就職の世話や、その家族の生活のことまで心配するような家族的な温かさが古い日本にはある。その“日本式経営の精神”が、シンガポールのビジネス界にじわじわと浸透していったという。

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